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立夏
これは、空を見上げていた時の話。
五月晴れの水色の空に、大きな白い入道雲が湧きあがった。
冬や春にも時折この雲は空の果てに見られたものの、やっとしっくりくる季節がやってきた。
こころなしか、それを見上げる僕らの心臓も、少し高鳴る思いがする。
まだ蝉の季節には早いものの、木々の緑はしっかり濃くなって、青々と葉を伸ばしている。
「夏が来たねっ!」
空を仰いだこととが、箋を取り出し、背中を張って書き付ける。
白雲がたち 夏がたち
それからこちらを向いて、ソフトクリームが食べたいと笑う。
今年はどんな夏になるだろうか。
湧きたつ雲に、未来の形を思い描いた。
終
ひとこと事項
・入道雲
春や冬にもできることがあるそうですが、やっぱり夏の入道雲が一番しっくりくる気がします。