登場人物まとめ
ネタバレを含むので、本編読了後に閲覧するのをお勧めします。
〜パチル侯爵家〜
◆オリヴィア
赤髪に碧眼を持っており、どちらも色鮮やか。代々、赤みがかった髪色が生まれる家系だが、オリヴィアほど鮮やかな緋色は珍しい。周りが美形すぎて霞んでしまうがオリヴィアも充分美人である。努力しても直らなかった性格については諦めているものの、努力すれば結果がついてくる分野に関しては人知れず頑張っていた。結果、お嬢様として申し分ない素養が身に付いている。そしてよく食べ、よく眠り、よく怒鳴る健康優良児。食べた栄養分は胸と尻にいったらしく発育は良好である。きつい口調で八割損をしているが、根は素直で正直者。使用人達からは当主よりも親しまれている。世間の風当たりは強いが、それに反して身内の親愛は厚い。
リーンハルトの顔面は好みと違い、嫌味なくらい整ってるな程度に感じている。レティと同類になるつもりは断じてないが彼に「馬鹿」と笑われるのは嫌じゃない。オリヴィアのことで顔が緩むのはちょっと嬉しいから悔しい。時々、子供じみた態度をとってくるのは可愛い奴めと思っている。でも夫と違い、馬鹿にすることは決してない。フレッドに片想いしていた頃よりは「可愛い女の子」に拘っていないものの、可愛いと褒められる事には弱い。
好物はかぼちゃだが何でも食べるし、嫌いな物はない。そんな彼女が不味いと感じたお茶は相当な味だったという事。現在、庶民の大衆食堂に興味がある。(パチル家ではお嬢様が行きたいと言い出さないよう情報規制されていた)コース料理じゃないってどういう事?好きなものを好きなだけ頼んでいいなんて最高では?と胸を高鳴らせている。できれば夫と一緒に行ってみたいけれど大衆食堂なんて迷惑かなと遠慮気味。
◆メルヴィン
地声の大きさが娘に遺伝した、愛妻家その一。妻のいる別荘地へ頻繁に通っており、留守中は息子に一任している。娘の言動に頭を抱えつつ、内心では目に入れても痛くないと思っている。お嫁に行ってしまってものすごく寂しい。ちょっと耐えられそうにない。理由なんて無くていいから頻繁に帰ってきてほしいし、あわよくば住まいをこっちに移してくれないか。
昔、自分の父親(=オリヴィアの祖父)に「あまり物を与えるな」と苦言を呈したが、きっと自分に孫ができたら同じことをするようになり、娘から苦言を呈されるだろう。だが本望である。
◆サンディ
オリヴィアの兄で、普段はぽやぽやしており妹に世話を焼かれることもあった。しかし本性はけっこう腹黒く、また隠れシスコンである。兄を抜けてる男と思い込み、自分がしっかりしなきゃと思っている妹が可愛い。妹の幸せが一番大事だが義弟のことは未だ気に食わず、何かと理由をつけて妹を帰省させようと目論んでいる。使用人総出で妹を引き留め、その隙に義弟は閉め出すつもり。
実は婚約者がいる。しかし婚約者が「結婚したら妻という立場に縛られるから、その前にやりたい事をやる」と言い外国に飛び出して行ったため、まだ挙式はしていない。そのことについて彼は「無事に帰って来てくれれば良い」とおおらかに構えている。
◆オリヴィアの母親
昔から病弱で、侯爵夫人としての役割が果たせない事を心苦しく感じているが、子供達を元気に産んであげられたことは何よりの自慢である。夏と冬、体調が優れない時期は屋敷を離れて、別荘地で療養している。娘が描いてくれる絵が日々の楽しみ。
◆オリヴィアの祖父
孫に甘すぎる爺。骨董品の収集と、孫に貢ぐのが趣味。放浪癖があり、当主を引退してからは滅多に戻らなくなった。孫がお嫁に行ってしまって寂しいが、年の功もあってか息子(=オリヴィアの父)ほど萎れてはいない。なお、この爺のせいでリーンハルトは妻への贈り物に毎度頭を悩ませる羽目になる。
◆レティ
オリヴィアの専属メイドで、オリヴィア限定のドMで変態。頭の中は危ないがメイドの業務はしっかりこなす。名前を与えてくれたお嬢様のことは、命を懸けるのも厭わないほど敬愛している反面、あの踵で踏まれたいと切望している。
ロス家へ行ってからは奇行を抑えるようにしているものの、たまに欲求不満が破裂する。リーンハルトが前もって周知したのが功を奏し、ロス家の使用人は生温かくスルーしてくれるどころか、ちょっと現場を見てみたいと好奇心に駆られる者がいるとかいないとか。そのうち一人くらいは同志ができそう。
◆アンヌ
レティより年上だが、メイド歴で言えば後輩にあたる。至って普通の常識人。レティほどではないが、オリヴィアのことは心から慕っている。母親が病弱という共通点ゆえ、オリヴィアがそれとなく気にかけていた。
パチル侯爵家から求人が出ることは稀で、使用人界隈では「辞めたくても辞めさせてもらえないのでは…?」と不穏な噂が立っていたので、採用された時はめちゃくちゃ不安だった。だが働き始めて「居心地が良いから誰も辞めたがらない」の間違いだったと知る。
〜ロス伯爵家〜
◆リーンハルト
黒曜石の髪、翡翠の瞳の光り輝く美形。努力家でもあり、自身に対し付加価値をつけることに余念がない。猫を被る際は万人に対して敬語を使い、笑顔でたらし込む。その実、天邪鬼で子供っぽいところがある。幼少期に甘えられなかった反動と思われる。内心では、どんな人間だったとしても受け入れてくれるような女性を、結婚相手に望んでいた。なので顔の好みは特に無し。世間からは持て囃されていても、身内とはぎくしゃくしていて、温かな絆を無意識のうちに求めていた。今は諸々の懸念を取り払ってくれたオリヴィアが可愛くて仕方がない。愛妻家その二。妻が構ってくれないと寂しい。妻との時間を奪う人間はもれなく嫉妬している。甘えようが拗ねようが見っともなかろうが、オリヴィアは真正面から向き合ってくれるので心地良くて安心する。自分の容姿については利用価値がある程度にしか考えていなかったが、オリヴィアに「タイプじゃない」と言われるのが癪に触るようになった。
リーンハルトが言う「馬鹿」は、捻りに捻くれた褒め言葉みたいなものである。泣かれると困るのでつい不細工と言ってしまう、変なところで口下手なのが天邪鬼の所以。アルコールが入ると素直になれるが、代償として酔い覚ましの一発を食らうことになる。
妻が町の食堂に行きたがっているのは知っているが、下賤な男に目をつけられないか心配。というかコルセットのせいで強調される妻の胸を見られたくないと常々思っている。でも妻の喜ぶ可愛い顔は見たい。木皿に注がれたシチューとか、鉄板で出てくるハンバーグとかをすっごい美味しそうに食べてそう。めっちゃ見たい。ちなみに彼自身は食への拘りはない。そもそも食事そのものに興味が無かったが、強いて言うならいっぱい食べる君が好き。昔、食当たりを起こした貝は好きじゃない。
◆アルベール
リーンハルトの父であり、愛妻家その三。恰幅も良いが人も良い。妻には頭が上がらないというより、妻の意見を尊重したいがため大体妻の言いなり。息子の結婚相手はウルバノが良いのではと考えていたものの、妻がオリヴィアを推したため良い笑顔で即決した。今では「娘がいたらこんな感じなのかぁ。華やかで良いなぁ」とすっかり親バカになっている。義娘と趣味の話で盛り上がれるので楽しい。
歳も歳なので、十年以内に当主の座を譲るつもりでいる。息子夫婦との同居も今のうちだけで、引退と同時に屋敷を明け渡す予定だったが、その必要はなくなりそう。孫の顔を見ていたい。
◆ユージェニー
リーンハルトの母親。無表情がデフォルトの女性である。歳の差婚だったためか、必要以上に他人行儀になりがちだった。しかし夫のことはちゃんと愛しており、息子のこともまた然り。リーンハルトを産んだ時、もう次の子は望めないと医師から言われた。そのせいもあって一人息子を誰よりも気にかけていた。残念ながらそれはアルベールにしか伝わらず、肝心の息子には彼女なりの愛情がまったく伝わっていなかったので家庭内は冷えていた。彼女自身それがわかっていたものの、冷淡な印象しか与えられないユージェニーには改善することができなかった。だが息子の結婚を機に雰囲気が変わり、きっかけとなったオリヴィアのことは本当の娘のように可愛がっている。婚約破棄の話が出た際は、初めて息子に手をあげそうになった。
息子達のために屋敷を出て行くべきだと思っているが、義娘に引き留められたら多分予定は変更される。義娘と一緒に孫のお世話をしたい。
〜その他〜
◆ウルバノ
ダイアー公爵家の令嬢で、艶やかな金髪美女。非常に賢いが天才という訳ではなく、豊富な知識はあくまで本人の努力で得たもの。探究心が旺盛で、未知のことに興味がある。とりわけ人間の心に興味津々。絵画が好きなのも、描き手の心情を読み解くのが好きだから。オリヴィアの恋愛模様を見ているのが今一番楽しい。でも近頃、その友人が「夫に『おかえりなさい』を言いたいので」と言い、早々に帰ってしまうのが寂しい。彼女の夫に少々ジェラシーを感じている。自分の心の内は絶対に悟らせないウルバノが選んだ伴侶については秘密。
◆ステラ
バートン男爵家の令嬢。極めて可憐な容姿に反して狂った思考を持ち、主人公な自分に心底酔いしれている。自分が愛されるためなら、他人を潰すことに何の躊躇いも罪悪感もない。修道院に送られた後もまったく反省の色無し。
◆フレッド
オリヴィアの幼馴染兼、彼女の初恋である野暮ったい見た目の青年。ひたすら優しすぎて逆に優柔不断。兄同士仲が良い。ジリアン一途というか、愛妻家その四。オリヴィアのことを友人以上に思ったことは無い。「魅力的」と言ったのも、何でもはっきり言えるオリヴィアの内面の話。思ったとしても幼馴染はきつめの美人くらいで、可愛いという感想を抱いたことは一度も無かった。
リーンハルトが嫉妬して以降、オリヴィアからの呼び方が敬称に変わる。
◆ジリアン
オリヴィアが憧れた可愛らしい素朴な女性。フレッドとは長らく両片想いの関係だった。お互いに控えめなので進展が遅かったが、結婚してからは夫婦円満である。フレッドからオリヴィアの話を聞いており、彼女に好意的な珍しい人物。もし喧嘩して泣かされた場合、オリヴィアがフレッドを殴りにやって来る。
◆シャロム
今一番売れている画家。画力は卓越しているものの運が無く、大成するまでに時間がかかった。苦境が最高潮だった時期に贋作を売ろうとしたが、十五歳のオリヴィアに見抜かれてしまう。彼女との出会いから心機一転し、現在に至る。人気のきっかけとなった「赤い馬」はオリヴィアから着想を得た。
オリヴィアが買い取った贋作は、彼女が使う画室に保管されている。(過去の罪は人目に触れられたくないだろう、というオリヴィアの気遣い)是非ともオリヴィアの肖像画を描かせてほしいと頼み込んでいる最中。




