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TS悪墜ち魔法少女俺、不労の世界を願う  作者: 戦闘員ハタラカーン
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最終話『TS悪墜ち魔法少女俺、不労の世界を願う』

 「なんだ……!?」


 世界を襲う、白の人形プリナーハーケン軍団。

 人形共に襲われた街を、俺様達は分散し防衛していた。


 ムショック様に忠誠を誓う悪の三幹部、ムノー……俺様は、その異変に戸惑う。


 「引いていく?」


 俺様に組み付いていた四体のハーケンが、突然飛び立っていく。

 周囲を囲んでいた人形共も同じく群れを成して、どこかへ。


 別の街で戦っていたサボリーナと、怪人を指揮するチコークも同様の状況のようだ。

 プリナーハーケンは全ての戦線を放棄して、一点に集結している。


 「……ふん」


 それらを追って馳せ参じたいが、現状では足手まといになるだけだろう。文字通り俺様の片腕片足は、千切れかけている。


 後は、彼女がやってくれる。

 確信して。

 俺様は怠惰を是する悪の組織、その幹部らしく帰還する。


 「任せたぞ」



 黒。


 黒髪のロングポニーテール。

 黒と黒の衣装……飾られたフリルとリボンも黒。

 元のカタチが影響しているらしく、黒い猫耳と黒い尻尾まで備えている。


 「――頑張るみんなに安寧を! プリナーブラック!!」


 世界中に轟かせるように、俺は名乗る。


 プリナーズ、四人目の魔法少女。

 ……面前の白の軍団は数に数えない。


 「ふざけるな! 僕はお前のような魔法少女なんて認めない!!」


 珍しく、クソ犬が声を荒げる。

 それでこそ悪事を働く甲斐があるってもんだ……!


 「おらぁッ!!」


 無数の白。プリナーハーケンの軍団が、ハロワーに従い俺に集中する。

 その空を埋め尽くす白の軍団に対して俺は。


 全力でぶん殴った。


 「――は?」


 ハロワーの呟きが、静かに響く。

 白に埋め尽くされていた空。それが、夜空の黒を取り戻す。


 白の空に巨大な黒の穴が開いた。


 「もういっちょ!!」


 連打。

 俺が拳を振るう度、白い空に黒い巨穴が空いていく。白を、黒に塗り替えていく。


 「そんな、生まれたばかりの魔法少女がこんな力を持っているはずがない!」


 自身を守るハーケン軍団の数が、見る見る内に激減する。


 「クソ、全戦力を集中して潰してやる!!」

 「おかわり上等!!」


 蹴りで薙ぐ。密度の高い白の集団が、掻き消されていく。

 一体一体が魔法少女のプロトタイプ……プリナーズを総合性能で上回るプリナーハーケン。

 その軍団は、紙屑のように破り捨てられる。


 「……そんな」


 ハロワーの参集に応じた、世界中のハーケン。

 人類に勤労を強制する為に作られた人形は、奴を守る少数を残して全滅した。


 「ふざけるな! なんなんだよ、その力は!?」

 「俺は、不労を願う魔法少女だ」


 ――プリナーブラック、怠惰の悪を願い墜ちた悪の魔法少女。

 不労を願い、頑張る皆に安寧をもたらす悪の手先だ。


 「どこぞのアホが、世界中の人間を頑張らせちまったからな」


 ハーケンにより、強制的に勤労意欲を過剰に上昇させられた人類。


 悪の組織ヒキニートーは働く人々の、働きたい気持ちを怠惰に堕とすことでエネルギーを得る。

 これまで散々、エネルギー集めに奔走した俺だ。

 そんな俺が悪を働きたいと、願って成った魔法少女は。


 プリナーブラックは、世界中にバラまかれた勤労意欲全てを怠惰に変えて力にする。


 「お前が襲った人々、全てを俺が怠惰に堕とす」


 『いやだ』

 『かえりたい』

 『今日は、娘の誕生日なんだ……一緒に夕飯を食べると約束したんだ』

 『推しの生配信が始まっちまう』


 ――働きたくない。


 強制的に働かされる人々の、心の叫びが俺に力をくれる。


 「……俺達は、働きたくないんだよ!!」

 「ふざけるなぁぁぁあああああ!!」


 最後に残った、ハロワーを守るプリナーハーケン。

 奴らに黒のペン……砲口を向ける。


 「プリナーブラック……ストラーイクッッッ!!!!」


 漆黒の閃光が、白を殲滅した。




 「はっ……」


 黒を、夜の暗闇を取り戻した丘の上。

 地に落ち、小さな柴犬の姿で俺を見上げながら嘲るように嗤うハロワーを見下ろす。

 もう奴を守るべき、プリナーハーケンは全滅させた。

 だがこのクソ犬はそれでも俺達をあざ笑う。


 「下等生物にしちゃ良くやったよ、君は」


 異世界からの来訪者、自称正義の妖精は埒外の物理法則に在る。

 プリナーブラックがいくら最強の白の魔法少女、ハーケン相手に無双できる性能であろうとも。


 このクソ犬に、傷一つつけることはできない。


 「ああ、俺には無理だ」

 「その通りだよ。今度は、もっと上手くやるとしよう」


 『貴様に次はない』


 黒の、暗闇の夜空に在ってより黒いお姿。

 俺の背にハロワーをより高い所から見下ろすお方が、現出する。


 『ご苦労だったな、プリナーブラックよ』

 「は。全ては、地球を怠惰に染め上げる為に」


 跪く。

 巨山の如き、黒の首魁。

 雷光のような鋭い眼に、鮮血のように赤い裂けた口。


 「……そんな、まだまだ復活には程遠いはずだ。この地球に、現れるはずがない」

 『ああ。だが』


 天才、蒼河 氷乃がここ数日ラボに籠り準備した最後の一振り。

 それはハーケンの迎撃に向かった俺と、三幹部によって得たエネルギーで実現した。


 『たった一瞬ではあるが、我は今この場に在る』


 一時的に、我らが総帥ムショック様を復活させる。

 氷乃が対ハロワーへの切り札として用意した策だった。


 『地球人では、手が下せぬ異世界のモノ。だが』


 ムショック様は、ハロワーと同じく異世界からの来訪者。同じ、埒外にある存在だ。


 「やめ――っ」

 『不労の安寧に墜ちよ』


 不定形の掌が、ハロワーにかざされる。

 たった、それだけで。


 「……わんっ」


 自称正義の妖精、下等生物に満ちた世界に最大効率を与えて飼おうとしたクソ犬は。

 天使の羽を失って。

 ただの子犬に、墜天した。


 『犬が人を飼おうなどと、道理が合わぬ』


 この世界から元の狭間に、ゆっくりと消えるように帰還するムショック様へ頭を垂れる。


 「ムショック様、万歳」



 「おい、勝ったぞ天才」


 満身創痍の私達三人の元にやってきた、プリナーブラック。その凡人はふんぞり返ったように、告げる。

 天ッ才の私が死ぬ気で用意した、ムショック一時復活の策で詰め切ったというのに。

 やはりこいつは、悪の手先だ。


 「ようやく一勝ね」

 「ブラックちゃぁぁぁあああんっ」

 「……」


 皮肉を言う私、感極まって凡人に抱き付く円力華。複雑そうに凡人を睨む心愛。

 それぞれだが。


 「……その、ありが」

 「言うなばか」


 礼を言いかける、悪の手先を遮る。だって私は、正義の魔法少女だから。


 逃げろって、天ッ才の私が言ったよね?

 なのに何であの白い絶望に立ち向かったの。凡人の癖に何とかなると思っちゃったの?


 ――本当にばか。


 「ひのちゃん?」


 あ、やばい。

 隣の心愛の目がやばい。違うの浮気とかそういうのじゃないの、このばかがあまりにもばかだから……あっ、あっ、変身アイテム掲げないで。


 「ほら! さっさと逃げちゃいなさい」


 その様子に、苦笑したように笑う悪の魔法少女が撤退魔法に身を委ねる。

 私達は、勤労の正義を願った魔法少女。

 ハロワーがいなくなった今でも、誰かの為に働ける未来を願う女の子だ。


 「そうだな。俺は」


 魔法少女でありながら、正義を否定したプリナーブラック。

 彼は、私達に追われなければならない。

 しがみつく円力華を優しく離して、睨む心愛から目を逸らしながら。


 「不労の世界を願う、悪に墜ちた魔法少女だから」


 それきり。

 彼の姿が夜闇に消える。


 たぶん、戦いは続く。

 彼と私達は相容れないそれぞれの正義を、胸にしているから。

 けれど。


 「ぜったいに、負けない」


 正義の魔法少女は負けない。負ける訳にはいかない。

 ――悪に墜ちた仲間を取り戻すのは、魔法少女の作法だ。




 「私達が、救ってあげる」

読了ありがとうございました。

今後その後編を投稿するかもしれませんし、しないかもしれませんがまたお会いしましょう。

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