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74.最終回

本日、最終話です。

そのうち、おかしな所を見直したいなと思っていますが、今はとりあえず完結にしようと思います。

最後まで、お付き合いして下さった方、本当にありがとうございました。

 冥界で祝福される二人を見て、シルヴァスは複雑だった。



まだ子供だったハルを見守り続け、そんな子供が成長して、分相応の相手と結ばれる…しかも、その相手は自分の親友だったのだ。



普通だったら、本当に嬉しい筈なのに…。



シルヴァスの瞳から熱い何かが滲む。



最初から、アスターとハルの相性が良いと感じたから、二人を引き合わせたのだ。



自分の勘は良く当たる…。



あわよくば、この可哀想な少女が我が友の心に留まり、二人が結ばれたらいい…そんな風に思っていた時もあったのは事実だ。



 だが、アスターの態度と言動で、自分は期待してしまったのだ…。



もしかしたら、自分の勘が珍しく(はず)れ、二人は恋仲には発展しないかもしれない…。

だとしたら、自分にもチャンスはあるのではないか…と。


シルヴァスは、すっかりハルを気に入っていたのだ。


二人にその気持ちが無いのなら、学校を卒業した後、自分が人間界で彼女の面倒を見て、後々にはプロポーズだってしたいと思っていた…。


だが、こうなってしまっては、全てが水の泡である。



今更、しつこいと(はた)からは思われそうだが…。

急にお互いを好きだと言い始めた、無自覚な自分勝手の両者に振り回されたことで腹が立ち、つい、邪魔をしてやろうという黒い気持ちが湧いていた。


…しかし自分の中では、そんなことをしても、どうせ彼女の心はつかめないと、どこかでわかっていたように思う。

それでも自分は、この押さえきれない気持ちを…苛立ちを…ぶつけたいと思ってしまったのだ。


それだけ、叶わぬと知りながら…ハルに本気で恋をしていたのかもしれない。



「残念だ…完全に敗北だ…。」



でも、仕方ないよね?



「僕には、絶対できないもん…。」



アステリオスのように、自分の職務を放り出して、全てを捨てて人間界に行こう!…などと。

彼女のことを愛していても…。



「僕は今の仕事を辞めて、冥界に行くことは出来ない…きっと、ハルの父上ならそうしたかもしれないけれど…。」



自分の仕事は孤児達の保護なのだ。

シルヴァスは特別に、その仕事に誇りを持っていた。

こうしている間にも、発見されずにマッド・チルドレンに利用されたり、お腹を空かせて一人泣いている現人神の子供がいるかもしれない。

ハルのように身内がいない子供は、発見されないと完全な人間として生きるには、少々、生きづらい事もある…。

発見が遅れれば、子供達の心にそれだけ傷が増えてしまうのだ。


カヤノのように…。


自分の担当する仕事は、なり手が多いわけではないので、簡単に自分が辞めれば、その穴を埋めるのは大変だろう。



「僕は、アスターほど、必ずしもハルを一番に行動することが出来ない…。」



だから、ハルはやはり、アスターの(そば)にいる方が幸せだろう。

冥界神は、実に愛情が深いのだと聞く。

相手の為なら、全てを投げやるほどに…。


実際に公衆の面前で…しかも冥王の前で親友が公然とそれをやってのけたことに、シルヴァスは恐れと驚き…そして『自分には無理だ』という気持ちを隠せないでいた。


ハルは両親を失くしてから、とても寂しい思いをしていた。

もしかしたら、それは、両親がいる時からもそうだったのかもしれないが、彼女はいつも肩ひじを張るように生きていたのだ。

彼女には常に人に頼らないように頑張るという意識が染みついていたように思う。


自分はそれを、『そんなに頑張らないでもいいんだよ』と、甘えさせてやりたかった。

だが、これからのアスターなら、きっとハルを、そんな風に甘やかしてやれるだろう。



やはり二人は、お似合いだったのだ…。



彼女には幸せになってもらいたい。



今すぐには無理でも、いつかは心から二人を祝福できる時が来るだろう。



だって僕は、孤児の幸せを願うセンターの保護担当者で、アスターの親友なんだから!




 シルヴァスは、二人を祝福する冥界神達の人垣をかき分けながら、ハルとアスターの元に行った。



「おい、アスター!」


「シルヴァス?」



自分に気付いたアスターが、何とも申し訳なさそうな表情を浮かべる。



畜生!同情してるみたいな顔をするな!!

余計、僕が可哀想じゃないか!



僕は嫌そうな顔をして、憎まれ口を叩いた。



「いいか…冥王様に認められちゃったら、もう僕に勝ち目はない…完敗だ。けど、ハルを泣かせたら、承知しないからな!!」


「シルヴァスさん…。」



今度はハルが僕に向かって、寂しそうな申し訳なさそうな、何とも悲痛な顔をしている。


やめてくれ!

君にそんな顔をさせたいわけじゃない!


僕は自分が泣きたいのを我慢して、明るい調子で彼女に言った。



「ハル、もしこの朴念仁が君に何かしたり、泣かせたら、いつでも僕を頼ってくれていいからね!僕はいつだって、君の味方さ!それにいつでも、僕のお嫁さん候補になるのも歓迎するからね。」



ハルは涙を浮かべながら、カワイイ顔で笑ってくれた。



「シルヴァスさん、ありがとう…。本当に、シルヴァスさんのお陰で今、私は幸せなの…大好きよ。」


「それは本望だな!」



シルヴァスはそう言ったが、その表情はとても切ないものだった。



「それじゃ、二人とも、僕の上司も散々冥王様につき纏ってたみたいだし…挨拶の方はこれで十分だろうから…地上に帰るよ。ハルが冥界に残るという決定を下したことで、今まで程、会いには来れないけど、僕は()()()()()を願っている。じゃあね!」


「おい、友の幸せは願わないのかよ⁈」



と、アスターが突っ込んだが、シルヴァスはそれを無視した。


そしてシルヴァスは、ハルにウィンクするとあっという間に、その場所を離れて行った。

ハルは目に涙をいっぱいに溜めながら、彼に向かって叫んだ。



「シルヴァスさん、ありがとう!また、きっと、会いに来てね。」



少し離れた所から、シルヴァスが片手をあげたのが見える。


ハルはアスターの胸に抱かれて、しばらく泣いた。


それを見た会場の皆は、ハルが嬉し泣きをしているのだと、微笑ましく見守っていた。



 その後、シルヴァスは冥王にへばりつく美女好きの上司の襟ぐりをひっつかむと、彼をズルズルと引きずって、地上に帰って行ったのである。



「おい、シルヴァス!急にどうしたんだ⁈俺、まだ冥界にいたいんだけど?ねえ、ちょっと⁈シルヴァス君?ねえぇぇぇ!放してよぅ。」


「うるさい!この、不良上司!!さっさと帰って仕事しろ!アンタ、まだ承認印、押してないで溜めてる案件が大量にあんでしょ?事務課のライリーちゃんに聞いて、知ってるんだからな⁈ネタは上がってんだよ!!」


「ヒイィィィッ!シルヴァス君のイケずぅぅぅっ。」



半泣きの上司を引きずり、本日最大に、ご機嫌斜めだったシルヴァスは、事務課のライリーちゃんの困った顔を想像して、八つ当たりの先を彼にと決めたのであった…。




 一方、ラナンクル侯爵は、屋敷につくと、早々にハルと自分達を送ってきたフォルテナ伯爵に向けて言った。



「おめでとう、アスター君、ハル。婚約を決めたことについて、僕からいくつかの条件を提示させてもらうよ?シャンディル!」



侯爵の声に、家令のシャンディル・ビーノスがいくつかの書類を持ってくる。



「アスター君が、今夜、まさかの冥王様を巻き込んで、一大プロポーズをしてくれたからね…すぐに家に使いをやって、シャンディルに色々と必要な書類を作らせておいたのさ!」


「相変わらず、お早い対応で家令の(ワタクシ)も改めまして、侯爵デュラント様の健在ぷりを感じ、大変うれしく思っております!ハルリンド様、アスター様、ご婚約おめでとうございます!」



ニコニコと終始、笑顔を浮かべるシャンディル・ビーノスは手に持っている書類をアスターと侯爵に配る。



「ハルは僕と一緒に見ればいいね。おいで。」



アスターの傍にいるハルをもぎ取るように、侯爵は彼女を自分のわきに置いた。

無言で目を細めるアスターの視線には気付かぬふりで侯爵デュラントがハルに向けて書類を見せながら、笑顔で言う。



「ハル、君は侯爵家の後を継がないと言ったけど、アスター君に嫁ぐのなら、うちの娘であった方がいいと思う。気は早いけど、冥界貴族の子供を授かることになるなら爵位は子供のために多い方がいいよ?」



キョトンとするハルに侯爵は続けて、自然な流れを装い、眉を下げながらも説明をする。



「神様の世界では花嫁が不足しているから、息子が生まれた場合、爵位持ちとそうでないのでは、結婚の可能性が変わって来るんだ。」



『当然、爵位はあった方が、縁談にも恵まれるし、女性にだってアプローチされやすくなる。』だから、ラナンクル侯爵家の正式な養女となって、侯爵の娘として籍にいれよう!と、祖父はハルに向かって人間界の教育番組のお兄さんのような口調で言った。



「でも、お爺様…私なんて…。」


()()()は、無しだ!侯爵家の娘が自分を卑下してはいけない!いいかい?ハル…後継するかしないかは別として、君はもう冥王様の前で皆に認められているんだ。そういうことは言わないでくれ。それは僕やラナンクル侯爵家、そしてラズベルを貶めることになる。」



侯爵のキツイ言い方にハルは一瞬、おののいた。

聞いていたアスターも侯爵と同意見だったのだろう…ハルに対して援護するような言葉は出さない。


しかし、侯爵はすぐに優しい笑顔に戻り、話を続けた。



「認められたという事は、君が僕の跡継ぎに相応しいということだ。生きていれば、ラズベルも喜んだ筈さ。僕の後継者になって、ラナンクル侯爵家から嫁ぐことにすれば、アスター君との里親契約は無効になるし、18歳になっても君は彼と距離を置く必要もないんだよ?」


「え?そうなんですか⁈」


「勿論だ…シャンディル・ビーノス、説明をしてやれ!」



そこで初めて、ハルは家令から法律的なことを説明され、自分がラナンクル侯爵家に正式に入ることが一番丸く収まるのだと知らされる。



「だからこのままハルは、安心してうちの子になればいいよ。養女にしても僕のことは、お父様でもお爺様でも、好きは方で呼んでくれて構わないし。もっと僕達は、身内としてわかり合うべきなんだから…遠慮せずに、うちからアスター君の家に嫁げばいい!!」



嬉しそうに侯爵デュラントは目尻を下げた。


ハルは慣れないように恐る恐ると言った様子で侯爵の言葉にようやく同意を示す。



「ハ、ハイ…では、お爺様…宜しくお願い致します。至らぬ私ではございますが、私で良ければラナンクル侯爵家の一員に入れて下さい。」



ハルの言葉に侯爵とビーノスは目を輝かさんばかりに喜んだ!!



「喜んで!!ハル、ようやく、僕の正式な娘であり孫になってくれるんだね。嬉しいよ!」



主人の言葉に涙さえ浮かべるシャンディル・ビーノスも続いて言った。



「良かったですね!デュラント…良かったですね。ハル様…やっと、あなたの本当のおうちに戻って下さるのですね…私、嬉しくて…うっ。」



それらの様子を少し離れた所で見ていた老執事は、すかさず部屋の外に出ると、また号泣した。

傍で、メイドの一人によしよしと背中をさすってもらっている…。


こんなに自分がこの家に入る事を喜んでもらえるなんて…と、ハルは感激していた。


しかしアスターは、涙で言葉を詰まらせるビーノスを横目に、屋敷の者達とは裏腹の…一人、浮かない顔をしている。


それにハルが気付き、アスターへと話かけると、アスターは言った。



「どうなさったんですか?アスター様。」


「いや…この書類を見ていて思ったんだけどな…この婚約後の婚姻の時期についてなんだが…。」



ハルはアスターが手にする書類の、彼が指さす位置を確認する。


すると、婚姻の時期の取り決め部分に、ハルが20歳になってから認めると記載があった。

特に年齢を意識したことは無かったが、アスターは出来れば早くハルを娶りたいし、式を挙げる年についても自分に相談無しで、勝手にラナンクル侯爵が決めるのは、どうかと思う!


二人がその部分を確認した事を見て取ったラナンクル侯爵は涼しい顔をして口を開く。



「当然だろう?今すぐ、孫娘を嫁に行かせるわけが無いじゃないか!ハルはまだ学生だぞ?それに元来、君はハルが18歳になった後、2年以上は彼女に付きまとってはいけない筈だった。」


『話が違うじゃないか!』とアスターは侯爵に言ってやりたかったが、そこはハルの前なのでグッと押さえた。


今、そんな事を言って抗議してしまえば、前からハルに内緒で侯爵と書類上の契約を交わしてきたことがバレてしまう。


侯爵は、そんなアスターの状況を理解しながら、ニヤリと笑っている。



「僕がハルを引き取って、君の養い親の契約が無効になったって、その辺はきっちり守ってもらうよ?だって、君がうちのハルをそのことで苦しめたのは事実だからね。少しは君にも、我慢してもらわないと?」



イヤなジジイだ!



「アスター君、あと数年の我慢だよ…まあ、屋敷に遊びに来るのは構わないからいいだろう?それにハルにアプローチするのだって禁止されるわけじゃないんだ。僕のお陰だね!感謝してくれたまえよ。」



侯爵の不敵で嫌味な笑みが、ボソリと付け加えられた

『僕だって、そのくらいの間は、孫娘と水入らずで過ごしてみたいさ…。』

という一言の後に、やや寂し気な笑みに変わったように見えた。



 結局、アスターは渋々だが条件に呑むことになった…。


本来ならば、養い子を一時的に手放し、その間、彼女が他の男に言い寄られていても、自分は指を咥えて見ていなければならず、最低二年は大きな接触が許されなかったことを考えると、20歳までは結婚を許してもらえないとはいえ、侯爵はハルとの接触を禁止していない。


確かに一緒には暮らせないかもしれないが、会いに行くことも出来るし、ラナンクル侯爵邸にいれば、侯爵という高位貴族の保護者の目を盗んで、彼女に接触するバカはいないだろうから、他に悪い虫がつくこともない…。


少し我慢すれば、いずれ彼女を嫁にもらえることがわかっているし、重要な取り決めをこの(かん)にしたのだと言えば、過去にハルの知らない所で勝手にかわしていた契約の事も不自然にならずに説明することが出来る。


自分としてもラナンクル侯爵家の令嬢が婚約者だと言えば、もう誰にも縁談を勧められることもないし、悪い事ばかりではない…まあ、それでもすぐにでも、自分は彼女を妻にしたいのだが…。


アスターが眉間にシワを寄せて、うなっているとハルが側にやって来た。



「アスター様、私もアスター様の元にすぐにでも行きたいとは思いますが、その前にもう少し冥界について学びたいと思います。それから、お爺様がおっしゃったように、私も…もっと、お爺様と仲良くなりたいです。」



彼女はそう言いながら、祖父の方を見た。

侯爵はハルのその言葉を聞くや否や、眼に少しだけ涙を浮かべて震えている…。



「ハル!何て優しい孫なんだ…。お爺様も、もっと君と仲良くしたい!!」



声を上げて、孫娘に走り寄る侯爵は、完全に『じいじ』の顔だ。

侯爵がハルを抱きしめ、頭に頬ずりをすると、傍にいたシャンディル・ビーノスとフォルテナ伯爵であるアスターは完全に気色悪い物でも見るように、顔を引きつらせるのであった…。


その後、しばらくそんな調子が続き、アスターがそろそろ、自分の屋敷に戻るという事になるとハルやラナンクル侯爵家が引き留めた。



「今日は遅いから、うちに泊っていっても構わないよ?君は未来の息子のような者だからな…まあ、その為には、これから、ビシバシいびり…じゃなくて、しごかせてもらうが。」


「いや、結構です。屋敷の執事や古株の使用人達にハルとの婚約を一刻も早く自分の口から知らせたいので…ていうか、侯爵…いえ、デュラン。アナタ今、『いびり』って、言ってませんでした?」



二人は造られたような笑顔でお互い見合っている。


そんな中、ハルはアスターを見て心配そうに声を掛ける。



「そうですか…私も出来るだけ早くホルドさん達に報告に行きたいです。皆、初めて私が訪れた日からずっと、家族のように良くしてくれましたから。けれど、アスター様、夜は暗いのでくれぐれも気を付けて下さいね…心配です。」



ハルに心配されて、アスターはだらしなく笑いそうになるのを堪えて、凛々しい表情を作った。



「ああ、ありがとう。気をつけよう、ではまた。ハル、ほんのちょっとの間でも君に会えないのは寂しいが、出来るだけ()()、会いに来るから…。」



そう言ってハルの手を握るアスターを前に、侯爵は『ゲッ!まだ、毎日来るのか⁉』と嫌そうに呟いた。


そして、侯爵は思い出したようにハルに告げた。



「そう言えば、ハル…。舞踏会では最後はお爺様と踊ってくれると約束してたのに…踊ってくれなかったよね。」



アスターの公開プロポーズのせいで、その後、それどころでは無くなってしまったのだ。



「罰として、これからしばらくは、お爺様以外とは、踊らないって約束してよ…。」



正式に自分の孫娘になり、侯爵家に入るとハル本人に約束を取り付け、納得させたことで、侯爵は早速、本来の独占欲を発揮し始めた。


アスターは頭に湯気を立てて、侯爵に噛みつく。



「何言ってんですか⁉そんな事できるわけないじゃないですか!」


「そんな事ないよ?僕に任せてくれれば僕としか踊れない理由なんて、いくつだってこじつけてやるさ!アスター君、帰るならもう遅いんだから、さっさと帰ってよね?僕らも寝るんだから、いつまでもいられると、うちの使用人達にも迷惑なんだけど。」



侯爵の物言いに、傍で聞いているシャンディル・ビーノスや老執事も汗をぬぐいながら、苦笑いを浮かべた。



「全く…この人は、相変わらず仕方ない当主なんだから…。」



と、困り顔をしながらも使用人達はどこか嬉しそうである。


ハルもアスターと侯爵のやり取りを聞きながら、しばしの間、笑っていた。


そして、彼女は心の底から、今、幸せだと思っていた…。



大事な人がいて、身内がいて、主人思いの使用人に囲まれている…。


自分を必要としてくれている人達がいる。


愛してくれている人達がいる。



 こうして、夜雲ハル(こと)ハルリンド・ディアナ・ラナンクル、(のち)にハルリンド・ディアナ・フォルテナ伯爵夫人は、その生涯を祖父、これから生まれるであろう子供達や孫達、友人、侯爵邸、伯爵邸の使用人達、そして最も彼女が愛した夫に、深く愛され続け、幸せに…幸せに暮らしたましたとさ…。



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