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10.現人神用・任務体験実習を終えて…。

保護された少女達について語っています。

 現人神統括センターから回された任務を体験し、『生徒達だけでの解決』とはいかなかったが、不測の事態にもそれぞれの機転で乗り切った。



何とか無事に実習が終わったのだ!



実地試験の成績も、誰一人としてミスや無駄な動きが無かった為、恐らく全員悪い成績がつくことは無いだろう…。


いくらR組が文武両道型の現人神で構成されていると言っても、人間に気付かれることなく、本格的に職業訓練を受けてもいない女生徒達が男性3名+女性1名を取り締まったのだ。



おまけに死霊まで出てきたし…。



正直、よくやったと思う。




 あの後、登場したシルヴァスとペアの職員が、隠れ現人神の少女4名を保護し、簡易移動装置を使って、センターの一時入居施設へ彼女達を移した。



彼女達はとりあえず、そこで部屋を与えられ落ち着いてから、色々取り調べを受ける。


『名前・年齢・家族・境遇・なぜマッド・チルドレン達に捕らえられていたのか?』…など、隠れ現人神であった理由を担当者が分析し、把握するためだ。


 隠れ現人神の少女達を助け出した後に迎えに来たシルヴァスと、もう一人、別の職員がペアなのも、実は担当が違うからだ。


シルヴァスはご存じの通り、現人神の孤児の保護を専門に担当しているが、もう一人の職員は先祖返りで家族が人間だったりする場合の、隠れ現人神やハグレ現人神を()()()()()()を専門にしているのだ。




 シルヴァスは、センターに少女達を送って落ち着かせてから、一連の作業を終えると、仕事帰りにフォルテナ伯爵邸に顔を出した。



「いやぁ~、驚いたよぅ!!まっさか仕事で隠れ現人神の収容に行ったらさぁ、人間界にハルとアスターがいるんだもん!」



「彼女達の中で僕が担当になるのは、どうやら一人だけだなぁ。後は相棒の方の管轄だし…まあ、中々隠れ現人神を見つけるのって大変でさぁ~、いきなり4人も見つかってあいつテンション上がってたわ。」


「それで、お前が担当になる娘はどういう理由であの中にいたんだ?」

ソファでお茶を飲みながら、アスターが聞き返す。


「あー、彼女おとなしくてねェ…まだあんまり聞き出せてないんだけどさ。何だか色々酷い境遇だったのかな…すごくこちらを警戒してるみたいで、怯えてる。」


「ほう。」


「でも、他の3人の話を担当の奴伝えで聞いた所…。」



 一人は、自分が現人神であるということは知らなかったものの、普通の人間でないのは感じていたとのこと。


親には、その事を黙っていたようだ。



 そして、その子は小学校低学年頃、学校帰りの道にあった剣道道場を覗いたのだそうだ。


すると、少し年上の少年が気付いて、『お前もやってみるか?』と話しかけてきた。


頷いて、少年について行くと道場の裏山に神社があり、その奥にある広大な敷地の屋敷に案内されたのだという。


彼は道場の息子でそこの屋敷は彼の自宅だった。


そこで少年は、防具と竹刀を貸し出してくれて、庭で剣道を指南してくれたそうだ。


それから毎日、道場を見に行った彼女は同じように少年に剣道を教わった。

そのうち、道場の師範である屋敷の主人や奥方にも色々、教えてもらえるようになる…。

月謝を要求されることは無かったそうだ。


それゆえに彼女の両親は、この事を知らないまま、少年とは幼馴染になり、16歳になったある日。


師範とその妻から息子の嫁にならないかと誘われた。


少女は彼が好きだったが、彼には憧れの女性がいた。


それ以来、師範と奥様に申し訳なくて、彼女は自分の身元を知られていないのをいいことに、彼らの前から姿を消したのだ。


しかし、しばらくしてからその剣道場に出入りしていた男に見つかり、車に乗せられてあの部屋に閉じ込められたのだという。



「どうも、剣道道場の師範は有名な現人神の一族みたいでね…保護された子は知らなかったけど。師範達には、彼女が現人神だってすぐわかったそうだよ。」



シルヴァスは、そう言って説明を添えた。



「それで、彼女を気に入って息子の嫁候補として色々教えていたみたい。現人神のだってコト以外はね…『嫁入り』の約束を本人から取り付けて、センターには知らせる予定だったんだ。」


「なぜ、すぐにセンターに届けなかったのかな…。」



ハルが解せない顔で呟いた。

ハルの顔を見るとシルヴァスは、それに関して詳しく教えてくれた。


『それは、センターに登録するとね…

場合によっては教育のため彼女が人間の家族と

離れなければならないこともあるし…。


何より他の現人神や神様から求婚されちゃうこともあるでしょ?


そうゆうの何も知らないうちに婚約させて

正式に現人神登録をしてほしかったんだと思うよー。

実際、彼女、現人神の社会に入っても苦労しない位、

色々できるようになってるみたいだって…

僕の相棒が言っててさ。


師範は、ちゃんと教育してたんだなーってわかるよ。』



そこまでシルヴァスが説明をすると、今度はアスターが補足を始めた。



『先祖返りといっても、家系によっては、

平安な時代は人間の中で神の遺伝子を眠らせ、

人として暮らしている場合もある。


一族の危機や土地の危機が訪れると、

神の遺伝子が目覚めて、現人神として復活するんだ。


そういうのは神の血が薄まっているわけではないから、

現人神社会に出れば嫁候補として人気が高いのだろう…

家族で気に入っているのなら簡単にセンターに渡すより、

かくまった方がいいと誰でも考える…。』



アスターが言葉を切ったのを機に、シルヴァスは次にコトの経緯に関して言葉を紡ぐ。

『「彼女が行方不明になって師範夫妻も、

現人神統括センターに事情を打ち明けて、捜索を依頼していたんだ。


そのお陰で、今回芋づる式に他の3人も助けることができた。


その子をあの部屋へ拉致した男は、

剣道道場に出入りしていた元現人神の一族で、

ただの人間になって、現人神の加護を受けていたのに、

極秘で彼女を調べ…

師範夫妻の前から行方を消したのを利用して連れ去った。』



「なぜ、その元現人神一族の人は師範夫妻を裏切ったの?」



続くハルの質問にシルヴァスが答える。



「まだ、取り調べ中だけど、マッド・チルドレンの組織は現人神を憎んでいても、表面上はそうでないフリをして、現人神一族に仕え、その内部に潜り込ませて何かの時は利用できるように配置させているようだよ。」


「他の子を含めてどうするつもりだったのかしら。」


「これも、今日捕まえたばかりではっきりした情報はまだわからないんだ。奴らの記憶をセンターの技術班が解析中。少しだけ分かったことを技術部の知人に聞いたんだけど、どうやら外国に売る予定だったのではないかと言ってた…。」


「外国に売るの⁈人を?現人神の子を?」


「そう。神国と呼ばれる大和皇国ほど現人神が諸外国には多くはないけど、魔神や悪魔…邪教の神などは存在していて…奴らも対になる女神を求めている。大和皇国は、人手不足と言っても他国に比べれば現人神の数が多いから、女神の数もそれに比例する。」


「つまり、攫った子を…お嫁さん用に売るのね…?」


「全てがそうかはわからないが、隠れ現人神ならセンターが感知する前に連れ出してしまえば、行方不明になっても問題ないし、邪神に汚されればこちらには戻ってこられないので足もつかない。」


「そんな、ひどい…。」


「マッド・チルドレン達自身は邪神や悪魔と取引して、失った神力を取り返そうとしているみたいだな。」



今度はアスターも口を開く。



「そうだねぇ。ハルのクラスにも確か腕の無い子いたよね。あの子は父親がマッド・チルドレンに落ちて娘の腕を魔神に与えたのさ。その代償で娘に魔物を使役する力を得させたんだ。彼女、母親がちゃんとした現人神の家系だったから闇には落ちなかったけど…。」



…緑ちゃん、そんな理由で両腕が無かったんだ。



「ひどい話だよね。まあ、邪神の取引はそういう事もできる。」



シルヴァスがそう付け加えたのを聞いて、ハルは胸の中に重苦しいモヤがかかっているような気持ちになった。



「他の2人は、目覚める前の現人神でね、自分たちは普通の人間だと信じている。どちらも先祖返りだよ。でも人間の親は娘がいたことを忘れている。多分マッド・チルドレンが記憶を操作したんだろう。人間社会でも娘が行方不明だと騒がれたら面倒だからさ。」


「親が娘を思い出せないならどうするんだ?孤児の施設に入る事になるのか?」


「いや、それなら僕が面倒を看るんだけど…血統がわかっているから一人は、遡って調べたら四代前の祖母が現人神として存命でね。アポを取ったら、そちらで面倒を看ると返答があった。」


「シルヴァスさん、もう一人は?」


「うん、もう一人の子もね。この子の家の父方の総本家はまだ現人神として、活躍していてさ。本人が落ち着いたら、実の親の元ではなくそちらに引き取る様に手配してほしいと要望があったんだ…。」


「ふむ、問題は本人達に親が自分たちの記憶を持っていないと、いつ話すかだな。ショックを受けるかもしれん。そして自分らが現人神であることを受け入れさせなければならんな…。」


「そうなんだよね。それ難しいんだー。しばらく時間がかかると思うけど、そっちは相棒の方の管轄だからなぁ。」


「孤児の子はシルヴァスさんが施設を手配するの?」



私の時みたいに…。



「そうなるね。ただもう少し落ち着いて、色々彼女の事を聞いてからだなぁ。どのセンターに送るかも彼女の特性を知らないといけないし…それにどうも彼女、外国から来たみたいでね…体にも傷があると報告を受けたし…訳ありの匂いがする。」



聞けば、彼女は保護する際に、私が手を引いて立ち上がらせた子だ。

数年前の自分と重なって、とても気になった。



「ねえ、シルヴァスさん。私、彼女に会いに行ってはダメかしら。その、親を亡くしている者として話し相手になれないかなと思って…。」


「うーん、まずは彼女が落ち着いてこないとなぁ。本人に君が心配して会いたがっているということを伝えてOKが出てからじゃないと…。」


「そうよね…。でももし、彼女が私に会ってくれると言ったら、会いに行かせてもらってもいい?」



シルヴァスは相好を崩すと、『勿論だよ!』と言ってくれた。



二人のやり取りを聞きながら、アスターはハルの横顔を見つめていた。

自分と同じ境遇の少女を気に掛けるハルの姿に、ただ目が離せなかった。


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