スカート覗きの見るセカイ
時間停止。
自分以外の物の動きが全て止まり、自分だけが動くことのできる現象、能力。
それはきっと能力系バトル漫画やライトノベルを読んだことがある人ならば容易に想像が出来るだろう。またちょっとアダルティーな映像を見た人でも簡単に想像ができるはずだ。
しかし想像することは簡単だが、将来技術が発展してもほぼ確実に実現することはない。現実はディスク操作されているものではないし、そもそも生き物が止まってしまったら死んでしまう。
そう、時間停止なんて人間の想像力が生み出した逃避であり、余興であり、空想なのだ。
だから実際に起こることなんてない。
そのはずだったんだが。
こうして、また時が止まっている。
比喩表現じゃない。右隣の茶川は一歩踏み出すような状態で静止しているし、左を通る国道の自動車はどれも動いていないし、夕暮れ時で集まりつつあったカラス達は電柱から飛び立とうとした状態のまま身動き一つしない。
俺は一息ついてから、わあーーー!と大声を出してみた。音はまるで山彦のように奥に奥にと伝わって消えた。
物が動いていないと、ビルが多いこの街はこうやって音がよく伝わる。やはり今は時が止まっているのだと再確認した。
リュックを背負い直す。
さっきの声出しは言わば合図のようなものだ。
止まったと分かればやることは一つ。
俺は前5メートルぐらい先を歩いていた制服の女の子を標的と定めて近づく。体が少し重いので走らずに歩いて、通り過ぎざまにその女の子の前で一瞬立ち止まる。
ふむ顔は悪くない。清楚な感じのポニテ。
スタイルはまあ平均の女子高生らしい成長性のある膨らみと締まりだ。
制服から考えると近くの県立高だろう。エナメルバッグと一緒にフルートが入るような楽器ケースを持っていることから吹奏楽部だと思われる。
俺は回り込むように女の子の後ろに移動する。そしてゆっくりとしゃがみ込み、
スカートの中を覗き込んだ。
黒だ!黒パン!しかも結構可愛い!フリルの付いたやつだ!
しばし眺めた後、心臓がバクバク言う音を感じながら、スカートから顔を離し立ち上がる。再度女の子の顔を見てから足早に茶川の隣に戻る。
期待通り大人しそうな見た目してなかなかに可愛いパンツを履いていた。しかも黒だ。彼氏でもいたのか、はたまた彼女の趣味なのかは分からない。ギャップというものは本当にそそる。今回はかなりの当たりだ。大概は見た目通りのパンツをしれっと履いていることが多い。
正直このままこの衝動を解き放ってもいいかもしれない。ここらへんトイレは…。
「何急に胸抑えてどうしたん?鹿岡?」
振り返った茶川の姿を見てはっと我に帰る。国道の車は勢いよく通り過ぎ、電柱にいたカラスももう姿はない。黒パンフルートの女子高生もさらに先を歩いていた。
「いや時折きゅっとなんない?たまにあるぞ」
「運動不足じゃねえの」
茶川は溜息をついて先に行く。動き始めの直後は毎回自分が止まる形になるので、俺は小走りに追いついてからまた隣に並んだ。
本当にタイミングが分からないのが何よりきつい。でも今日もほどよくネタは得られた。今日帰ったら使うこととしよう。
理屈も理論も飛び越えて空想や妄想だった時間停止が起こる。それはやはり有り得ないことだ。俺の常識の中では。
だからきっと何かがおかしくなっていて、俺はそのおかしさに気づいている。
もしかしたら何かを為せということなのかもしれないし、原因を知れという啓示なのかもしれない。
でももうどうでもいい。正直探れるところは探ったしあとは止まる時間のタイミングをもう少し掴みたいだけ。
俺は自分が気持ち良くなれればそれだけでいいんだ。
俺は鹿岡進。
時間が止まれば今日も元気にスカートを覗く健全な大学生男子だ。