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二つの決意

12.二つの決意



 恭子を送ってきた拓は、恭子の両親に一緒にそばを食べていかないかと引き止められた。

拓はそういう事態を予測していたので、素直に従った。

恭子は拓を居間へ案内すると、ソファを指して座るように告げた。

ソファには先客がいて、テレビゲームをしていた。

「やあ、こんにちは。優子ちゃんに浩人くん。」

声がした方を振り向いた優子は、拓を見て驚き、ゲームのコントローラーを手放した。

浩人はすかさず、優子が動かしていたキャラクターをやっつけた。

「ちょっと、浩人!」

「よそ見するほうが悪いんだ。拓さんこんにちは。」

そう言って拓に手を振り、ゲームの電源切った。

テレビの画面が紅白歌合戦に変わった。


 恭子は台所で孝幸が年越しそばを作るのを見ていた。

「お父さんって、こういうの、すごく凝るよね。普通につゆのもととか使えばいいのに。」

「お父さんだって、楽はしたいけど、このそばだけは特別なんだ・・・」

孝幸はそばの具に使うかまぼこを切ながら話し始めた。



 孝幸は今の会社に就職したばかりの頃、工事現場で人夫に混じって土方まがいの力仕事をさせられることも少なくなかった。

そんな頃、現場の先輩に連れて行ってもらった新宿のパブで偶然、前の席に座っていたショートカットの女の子を見て一目惚れしてしまった。

彼女は大学の友達と二人で来ていた。

一緒に来たお調子者の先輩は抜け目なく彼女たちに話し掛けた。

先輩の目当ては彼女の隣にいた髪の長い女の子だったらしく、しつこく電話番号を聞き出そうとしていた。

しかし、その子は孝幸のことが気になるようで、二人の電話番号を教えてくれるならOKだと申し出た。

孝幸が住んでいたアパートには電話がなかったので、孝幸はアパートの住所を教えた。


 先輩は積極的に彼女にアプローチして何度かデートを重ね、付き合うようになった。

孝幸は、もう一人の女の子の電話番号を教えてもらうべきだったと後悔していた。


 しばらくたってから孝幸宛に1通の手紙が届いた。

差出人は“沢村早紀”。

部屋に戻った孝幸は聞き覚えのない名前になにかのセールスかと疑いながらも、女性からの手紙は気になったので、すぐに封をきって手紙を読み始めた。

それはセールスでも不幸の手紙でもなく、純粋なラブレターだった。

〜三浦孝幸様、私のことを覚えていらっしゃるでしょうか・・先日友達と二人で新宿のパブでお会いしました。今、そのとき一緒だったあなたの先輩と私の友達がお付き合いをしています。私はあのとき以来あなたのことが気になって仕方なかったのですが、友達もあなたのことが気に入っていたようなので言い出せなかったし、連絡をする術も知りませんでした。ところが幸運なことに、私の友達はあなたの先輩とお付き合いをするようになってあなたへの関心がなくなったようです。あっ、すいません。もしかして、あなたが彼女のことを想っていたとしたら申し訳ありません。でも勘違いしないでください。私は決してあなたを中傷しようと思ってこの手紙を書いたわけではありません。実は、あの時初めてお会いしたときからあなたのことが気になって仕方ありませんでした。勇気を出して友達にあなたの住所を教えてもらい、この手紙を書きました。もし、よろしければ一度会っていただけないでしょうか・・・〜

孝幸は、天にも昇る気分になった。

手紙を握り締めて、近くの電話ボックスに走ると、手紙に書かれていた番号をダイヤルした。

受話器の向こうから聞こえてきたのは聞き覚えのある澄んだ声だった。


 こうして二人が付き合うようになって初めての大晦日を迎えた。

二人とも地方出身で、早紀は親戚の家に下宿していたが孝幸は一人暮らしだったため、いつも自炊をしていた。

その日、早紀は孝之のアパートで過ごすことになっていたのだが、貧乏暮らしの孝幸の部屋には早紀を喜ばせるようなものは何一つなかった。

しかし、早紀はそんなことをまったく気にしていなかった。

朝から二人で部屋の大掃除をし、昼はありあわせの材料で早紀が作った料理を二人で食べた。

大掃除が終わった後、孝幸は年越しそばのだしを取り始めた。

「へ〜!いつも、そうやってだしを取るの?」

「ああ、年越しそばだけは、いつもお袋がこうやって作ってくれたんだ。自分でやるのは初めてだからうまく出来るか分からないけど、付き合ってみる勇気ある?」

「ええ、もちろん!楽しみだわ。」

夕食になると近くの居酒屋で軽く食べながら酒を飲んだ。

九時前になると二人は部屋に戻って紅白歌合戦を見た。

孝幸は白組を、早紀は赤組を応援しながら、他愛のない、しかし、二人にとってはかけがえのない時間を過ごした。

孝幸は赤組の歌手が歌っている合間に年越しそばの支度をした。

歌合戦は赤組の勝利で幕を閉じ、孝幸は心から悔しがった。

そんな孝幸が可笑しくて先はクスッと笑った。

「さて、君の勇気が本物かどうか試す時が来たよ。」

そう言って、孝幸は立ち上がり、台所でそばを用意してきた。

かまぼこと天カスだけが入ったそばは、シンプルではあったが、羅臼昆布のいい香りがしていた。

早紀は両手でどんぶりを抱えると、つゆを一口すすった。

「おいしい!こんなに美味しいおつゆ初めて!」

「本当?」

二人は一言も喋らずにそばを食べた。

テレビの画面には芝増上寺の除夜の鐘が鳴らされている映像が流れていた。

その夜、孝幸は、初めて“この人とあったかい家庭を築きたい”そう想った。



 恭子は、孝幸の話を聞いてなぜか感動した。

そういえば、両親が付き合うようになったきっかけなど、聞いた事がなかったし、聞きたいとも思っていなかったから意外な事実に心を打たれた。

「へ〜!そんなことがあったんだ。だから年越しそばだけはお父さんが作るのね。」

孝幸は、ウインクして恭子に微笑んだ。

「さあ、できたぞ!みんなのところへ運んでくれよ。」


 恭子が年越しそばを運んでくると、優子と浩人はゲーム機を片付け、テーブルを開けた。

普段の食事は食堂で取るのだが、この年越しそばだけはテレビのある居間で紅白歌合戦を見ながら食べるのが三浦家の慣わしなのだ。

「へ〜!美味そうだなあ。」

拓は、初めてみる三浦家の年越しそばを手に取ると、立ち上る湯気を顔で受けながらつゆの香りを嗅いだ。

そんな拓に向かって浩人が叫んだ。

「拓さん、お父さんのおそばは長寿庵のそばより美味しいんだからね!」

「うん、この香りはすごく食欲をそそるね。」

最後に自分のそばを持ってきてソファに座った孝幸は、全員にそばが行き届いているのを確認して、箸を持って手を合わせ感謝の言葉を唱えた。

「それでは、今年も家族全員無事に過ごすことが出来た幸せに感謝し、来年も一年間無事に暮らしていけるように祈っていただきましょう。では、いただきます。」

そして、孝幸に続いて家族も全員一斉に「いただきます。」そう唱えてそばを食べ始めた。

 拓の父親は出張で家を空けることが多かったので、家族揃って食事をすることがあまりなかったので、三浦家のこんな風景がなんだかとても暖かく感じた。

そんなことを思っていると、浩人が早速問い掛けてきた。

「ねっ!美味しいでしょう?」

拓はどんぶりを抱えると、つゆを一口すすった。

「うん!これは美味い。この関西風の味付けはこの辺ではあまりお目にかかれませんよね。」

それを聞いた孝幸は嬉しそうに微笑んで早紀の方を見た。

早紀も満足そうに笑みを浮かべて頷いている。

そんな中、優子がボソッと拓に話しかけた。

「ねえ、拓さん?拓さんはお姉ちゃんと結婚するの?」

突然の優子の質問に、拓より先に恭子が反応し、危うくそばを喉につかえそうになった。

「優子、いきなり何てこと聞くの?」

恭子は慌てて、話題を変えようとして優子を戒めるように見た。

そんな二人をよそに拓は、にっこり笑いながら、こう答えた。

「そうだね、こんな綺麗なお嬢さんがお嫁さんに来てくれたらどんな男の人だって嬉しいだろうね。」

拓の予想外の答えに、周りの全員が一瞬動きを止めて拓のほうを見た。

当の拓は、まるで、何もなかったかのようにそばをすすり始めた。

そして、みんなの視線に気がつくと、他人事のように言った。

「あれっ?どうしたんですか?まだ食べちゃいけなかったですか?」

すると、孝幸は目に涙を潤ませて、拓に向かってこう言った。

「西崎君、よく言ってくれた!これで俺も安心して成仏できるよ。いや、その前にちゃんと恭子の花嫁姿を見ないとな・・・」

孝幸のその言葉を聞いて、拓は孝幸が勘違いしているのだと思って言葉を付け加えようとしたが、もはや後の祭りだった。

優子が、自分の花嫁姿は見てくれないのかと孝幸にくってかかったのだ。

孝幸は慌ててそんなことはないと弁解したが、優子の機嫌は直りそうになかった。

見かねた早紀は、孝幸を睨みつけ、優子の肩をやさしく抱いて慰めた。

「大丈夫。お父さんはあなた達みんなが幸せになってくれることを何よりもいちばんに願っているのよ。だから、ちゃんと優子の花嫁姿だって見てくれるわ。」

孝幸はバツの悪そうな顔をしながらも、頷いて優子に謝った。

恭子は、自分の話題が思わぬ方向へ変わってしまったことにホッとした。


 そばを食べ終わると、恭子は両親に拓と初詣に行きたいと話してみた。

「ねえ?お父さん、お母さん、今年は拓さんと初詣に行ってもいい?」

「ああ、いいとも。紅白が終わったらみんなで出かけよう。」

孝幸は即答した。

しかし、恭子は拓と二人だけで出かけたいと言いたかったのだが、孝幸には伝わらなかった。

「えっと・・・そうじゃなくて・・・」

早紀は恭子の気持ちが分かっていた。

「お父さん、二人で先に行かせたあげたらどうかしら?紅白が終わるころだと神社も混んでくるわ。」

早紀にそう言われると孝幸は驚いて早紀と恭子を見た。

恭子は、恥ずかしそうにモジモジしていたが、早紀は微笑んでさらに言葉を続けた。

「恭子も、もう子供じゃないんだし、西崎さんが一緒なら安心だわ。」

孝幸は怪訝な表情を浮かべながらも、渋々承諾した。

「西崎君、それじゃあ頼んだよ。」

「分りました。お任せ下さい。参拝が終わったら向こうでお待ちしてますから向こうで一緒に甘酒でも飲みましょう。」

そう言って、コートを手に取ると立ち上がり、孝幸に頭を下げると、既に恭子はスタジアムジャンパーを羽織り、マフラーを首に巻きつけ、タイガースの野球帽を手にしていた。

「拓さん、早く。」

そう言って、拓を手招きした。

部屋を出る時、拓はもう一度孝幸に頭を下げた。

孝幸はテレビの画面に目を向けたまま片手をあげて応えた。

恭子は見送りに玄関まで出てきた早紀にウインクして両手を合わせた。

「お母さん、ありがとう。恩に着るわ。」

早紀は恭子のほっぺたに手を当てて「寒いからね。」と一言だけ言った。

そして、改めて拓に恭子のことをお願いした。



 外に出ると、さっきより気温が下がっているように感じた。

日当たりのよくない路地には、クリスマスイブの日に降った雪がまだ残っている。


 恭子は手を合わせてこすりながら拓の方を見た。

「手袋忘れちゃった。拓さんのポケット借りてもいい?」

すると、拓は自分の左手がつっ込まれたコートのポケットにすき間をつくってくれた。

恭子はそのわずかなすき間に自分の右手を滑り込ませた。

「あったかい!」

恭子はポケットの中で拓の手を握り締めた。

拓はもう片方のポケットから手袋を取り出すと、片方を恭子にわたした。

「そっちの手に付けるといい。」

そう言って、拓は残った方を口にくわえて、右手を差し込んだ。

恭子も同じように手袋を口にくわえると、余った左手を手袋に突っ込んだ。

拓の手袋は言うまでもなく大きかった。

恭子は余った指先の部分をぷらぷらさせながら笑った。

「大きな手袋・・・でもあったかい。」

「そりゃそうさ!ずっとポケットの中であっためていたんだから。」



 神社の近くまで来ると、松明の火やちょうちんに照らされた灯りがほんのりと見えてきた。

初詣に来た人の列が既に鳥居の外から神社の廻りを1周していた。

恭子と拓は鳥居の前を通り過ぎると、列の最後尾へ向かって歩いた。

途中で二人を知る町会の面々に合うと、「よっ!未来のオリンピック選手」とか「お似合いだよ!」などとからかわれた。

本来ならうざったいはずの言葉が、なぜかこの時は心地よかった。


 列の最後尾が近付いてきたとき、悠斗と仁美が手を振っているのが見えた。

「恭子遅いわよ。」

悠斗と仁美は二人で1本のマフラーを首に巻きつけていた。

仁美は背が高いので悠斗とのバランスもちょうどいい。

「こうして見てると、二人は恋人同士みたいだわ。」

「あら、あなた達こそお似合いよ。」

恭子は今まで散々からかわれてきたが、仁美にこんな風に改めて言われると、急に恥ずかしくなってきた。

「よう!大将。三浦家の年越しそばはどうだった?」

「抜群だった。」

「そうか、じゃあ、来年は俺も食いに行きたいもんだなあ。」

「先輩、ダメですよ。そばならウチで食べて下さい。」

そう言って仁美が悠斗の腕をつねった。

「痛いなあ!分かったからもうやめてくれよ。」


そうこうしているうちに、境内の方からカウントダウンの声が聞こえてきた。

4人も、時計を見ながらカウントダウンを始めた。

「10・9・8・・・・3・2・1!」

「明けましておめでとうございます。」

4人をはじめ、そこらじゅうでおめでとうの声が聞こえてきた。

それと同時に、列も少しずつ動き始めた。

恭子達の後には、もう最後尾がどこら辺にあるのか分からないくらいの列が続いていた。


 列が進み始めて20分ほどしてから、孝幸達がやってきた。

“ばれいしょ”のマスターと女将、高橋も一緒だ。

優子と浩人が4人の方へ走り寄ってきて列に加わろうとした。

すると、孝幸が「ちゃんと並ばないとだめだぞ。」と怒鳴った。

しかし、後ろに並んでいる人たちは、「いいから入れてやれ。」と気を使ってくれた。

「すみません、どうもありがとうございます。」

孝幸も一緒に加わろうとすると、「大人はダメだよ。後ろに並びな。」と言われ、すごすごと早紀や高橋達と一緒に列の後ろへ歩いていった。

「あなたったら本当に大人げないんだから・・・」

「まったくだ!何のために二人を先に行かせたのか分かってないようだな。」

恭子が振り返ると、孝幸が早紀や高橋にたしなめられている声が聞こえた来た。


 列が動き始めて40分。

ようやく恭子達に参拝の順番が回ってきた。

参拝は4人まで並んで出来る。

恭子達は優子と浩人を自分達ん前においてその後ろに4ん並んで参拝した。

浩人はさい銭を投げ入れると、パッと手を合わせて、すぐに鈴のひもをつかんだ。

ガラガラ、ガラガラ・・・4回鐘を鳴らすと、先に一人で小走りに階段を降りていった。

恭子は手を合わせて、全国大会への出場を誓った。

参拝を終えて拓の方を見ると、拓はまだ目を閉じて手を合わせたままだた。

しばらく見ていたが、後が詰まっていたので仁美たちと一緒に先に降りた。

階段を降りると、既に社務所の前では、破魔矢を手にした浩人が手招きしている。

「今年は、ボクが選ぶ番だからね。」

浩人はそう言って優子をけん制した。

破魔矢は矢の色が赤と白の二種類ある。

浩人は赤、優子は白がいいと言って毎年ケンカになる。

そこで何年か前からは、交代で選ぶことにしているのだ。

そして今年は浩人が選ぶ番だった。

恭子は財布を出そうとジーンズの尻ポケットに手を突っ込んだ瞬間、冷や汗が出てきた。

財布がない!

「浩人、ちょっと待ってて・・・」

そう言って、今歩いて来た道を引き返そうとした。

「お姉ちゃんどうしたの?早くお金ちょうだい。」

「ごめん、浩人、お姉ちゃん、お財布落としたみたい。」

「なんだって?そりゃ大変だ!」

悠斗は、とりあえず、浩人の破魔矢の代金は自分が払っておくからと言い、仁美と、優子に一緒に探すよう指示した。


 拓は例の夢のことを考えながら、自分の決意を確かめていた。

そして、近い将来起こりうることに対して最善を尽くすと固く誓った。

目を開けて、歩き出そうとしたとき、財布が落ちているのに気がついた。

見覚えのある財布だった。

「これは・・・」

財布を拾うと、辺りを見回した。

恭子達の姿はすでになかった。

急いで階段を降りようとしたとき、辺りを伺うようにキョロキョロしながら戻ってくる恭子達の姿が見えた。

「恭子ちゃ〜ん!」

拓は手を振って恭子に合図すると、財布を掲げて見せた。

そして、恭子のもとへ降りていった。



 社務所のそばにはいくつかの長椅子が並べられていて、甘酒が振る舞われている。

先に参拝を終えた恭子達は長椅子に座って甘酒を飲みながら孝幸達が来るのを待った。

優子と浩人は、さっき引いたばかりのおみくじをそばの木の枝に結んでいる。

「いいなあ、あ姉ちゃんは大吉で。」

「日ごろの行いがいいからよ。あんただって中吉なんだからいいじゃない。」

「でも、お正月のおみくじは大吉じゃなきゃ。僕、一回も大吉当たったことがないよ。」

そんな二人をよそに、恭子はじっとおみくじ見つめていた。

“凶”

「知ってるかい?」

拓が恭子のおみくじを覗きこんで言った。

「凶って箱の中にメという文字が入っているだろう?箱にはフタがないから芽が伸びて大きな木になることの暗示なんだってさ。考えようによっちゃぁ、大吉よりもずっと縁起がいいもんなんだよ。」

その話を聞いた仁美が自分のおみくじを差し出した。

「本当?それじゃあ、私って大ラッキー?」

仁美のおみくじは大凶だった。

「なんだよ、さっきまで落ち込んでいたのに現金なヤツだなあ。」

悠斗がそう言うとみんなは一斉に笑いだした。

恭子も笑って、甘酒が入った湯のみを両手で持って、冷たくなった手を温めた。


「やあ、お待たせ。」

ようやく参拝を終えた孝幸達が恭子達に合流した。

「みんな、今年最初の運だめしはどうだった?」

高橋が自慢げに自分のおみくじを差し出して見せた。

“大吉”だった。

孝幸は小吉、早紀は中吉、マスターは大凶、女将は大吉だった。

「なんだよ、“ばれいしょ”の親子は揃って大凶かよ。」

高橋が言うと、女将の久仁子もあきれたような顔をして言った。

「なにも、そんなところまで真似しなくてもいいだろうに・・・」

すると仁美は母親に反論した。

さっき、拓が言ったことをそのまま話して聞かせたのだ。

「へ〜!さすが俺の娘だ。なかなか良いことを言うじゃないか。」

脇で、恭子達はクスクス笑ってお互いの顔を見合わせた。



 恭子達は家族と一緒に帰って行った。

それを見送ってから、拓と悠斗は二人で歩いていた。

「なあ、タイショウ、ずいぶん長く拝んでたみたいだが何をお願いしてたんだい?」

悠斗は拓に尋ねた。

「内緒だ。」

「まあ、だいたい察しがつくさ。」

「ああ、そんなところだ。」

そして、二人が見上げた冬の空からは白い雪が舞い降りはじめた。






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