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4人の関係

11.4人の関係



 年の瀬独特の雰囲気は、クリスマスのそれとはまた違った面持ちがある。

恭子はどちらかというと、年の瀬のワサワサした感じが好きだった。


12月29日。

この日から、父親の孝之は年末年始休暇に入っていた。

昼食を終えると、家族揃って、近所の商店街へ買出しに出掛けた。

駅前のショッピングモールには、なんでも揃う、大きなスーパーもあるのだが、お正月の買出しは、やっぱり地元の商店街と決めている。

 恭子たちの住むマンションから“ばれいしょ”の前を通って路地を右へ曲がると、商店街のほぼ真ん中あたりに出てくる。

ここで、二手に分かれて買い物をする。

恭子と母親の早紀は生鮮食品などを取り扱う商店が集まっている右手に、父親の孝之と弟の浩人は雑貨屋や乾物屋等がある左手の方へ買い出しに行く。

「じゃあ、後でね。」

恭子は孝之と浩人にそう言って手を振った。

「お姉ちゃん達、今日は早く戻ってきてね。」

浩人が恭子たちに釘をさした。

毎年、買い物が終わると、この路地の向かい側にあるフルーツパーラーで待ち合わせをすることになっている。

浩人と孝之は、いつも先に買い物を追えて、かなり待つことになる。

今年は夕方から、浩人が大好きなアニメの特番があるので、早く帰りたい…出来れば、今年は留守番をしていた方が良かった…それが浩人の本音だった。

「分かった、分かった。分かったから早く行きな。」


 孝幸と浩人が担当するのは、大掃除に使い道具や洗剤と年越しそばや雑煮の材料だ。

最初に米屋によって、伸し餅を切っておいてくれるように頼んでから、乾物屋に入った。

そこで、だしを取るための昆布や鰹節、煮干しなどを買った。

それから雑貨屋で洗剤や化学雑巾、ゴミ袋、軍手、そして、しめ飾りなどを買う。

浩人は進んで、買い物袋を持った。

米屋の戻る前に、おもちゃ屋に寄る。

お年玉用のぽち袋を選ぶ。

「お父さん、これがいい!」

浩人が選んだぽち袋は、今日、帰ってから見る予定のアニメのキャラクターのものだった。

「OK! 恭子はどれがいいだろうか…」

悩んだあげく、キャラクターものではなく、お札を折らずに入れられる梅の花をデザインしたものに決めた。

「ねえ、お父さん、今何時?」

孝幸は腕時計に目をやった。

「2時40分だ。」

浩人が見たいアニメの特番は4時からだ。

まだ充分時間がある。

孝幸と浩人の買い物は、米屋でお飾り用の餅と切って貰った餅を受け取って、フルーツパーラーの隣のそば屋に年越し用のそばを予約するだけだった。


 恭子と先は、商店街の一番奥まで歩きながら、野菜や肉などの値段をチェックしていった。

八百屋や肉屋、魚屋はこの商店街の中だけでも何件かある。

品物によっては、店を変えて買った方が安い場合があるので、いつもそうしている。

まず、商店街の奥の八百屋で、青菜系の野菜を買った。

それから肉屋で、鶏肉を買い、二件目の八百屋では漬物用の白菜や煮物に使う材料を調達した。

魚屋では刺身を数種類購入し、酢蛸や切り身は、また違う魚屋で買った。

そんな感じで、恭子と早紀は商店街を3往復位してから予定の買い物を終えた。


二人で両手にいっぱいの買い物袋をぶら下げて、待ち合わせ場所のフルーツパーラーに到着すると、浩人がにっこりと二人を迎えてくれた。

「今日は早かったね。」

店の壁に掛けられている時計を見ると3時25分だった。

孝幸と浩人は既に、パフェを食べ終わっていた。

「浩人が早く帰りたいみたいだから、荷物持って先に帰るよ。お前たちはゆっくりしてくるといい。」

孝幸がそう言うと、浩人はそわそわして、恭子たちが買ってきた買い物袋を担ぎ始めた。

先は、そんな浩人の姿を見てクスッと笑い、頷いた。

「おそばはもう頼んだの?」

「いや、まだだ。」

「じゃあ、それは私頼んでおくわ。」

早紀はそう言って、既に店の出口に向かっている浩人を見た。

「浩人、大丈夫?重かったら少し置いて行きなさい。」

「大丈夫!」

浩人は振り返らずにそう答えると、店のドアを開けて外にでていった。

「じゃあな!」

孝幸は二人に手を振って、浩人の後を追った。

「おい、お父さんがもう少し持ってやるよ。」

「いいよ。」

一瞬、店の外からそんなやり取りが聞こえてきたが、すぐに静かになった。

二人は、顔を見合わせてクスッと笑った。

ウエイターが水の入ったグラスを持って注文を取りに来たので、恭子はメニューを広げた。

「う〜ん…」


12月30日。

この日は朝から大掃除に取りかかった。

孝幸は照明器具やエアコンの上など、高い場所と窓や網戸などの危険を伴う場所を担当した。

早紀は台所を中心に水回りを担当する。

恭子と浩人は自分たちに部屋と、浩人が風呂場、恭子は玄関廻り。

それぞれの分担が終わると、居間をみんなで掃除してからお供えのお餅を飾って廻った。

最後に、玄関にしめ飾りをかけて、大掃除が終了した。


 12月31日。

朝、台所に立っているのは父親の孝幸だった。

年越しそば用のだしを取っている。

昆布、煮干し、鰹節、それぞれ別の容器でだしを取っている。

水につけて、夕方まで、じっくりだしを取るのだ。

夕方になると3種類のだしを合わせながら味付けをしていくのだ。

孝幸が買ってくる昆布は、羅臼昆布なので、昆布自体からかなりいい味がでる。

孝幸は三が日に食べる雑煮の分も見込んで、大鍋一杯のだしを創った。

ついでに、この日の食事は、朝・昼・晩と孝幸が作る。

 早紀は、昨日の疲れがでたのか、朝から微熱があり、ゆっくり過ごすことにした。

起きていられないほどではなかったが、孝幸が食事の支度をしてくれるというので、疲れを癒すことに専念することにした。


浩人は、午前中、ジュニアスターズの練習納めに参加していた。

恭子は陸上部の練習がなかったので、浩人の練習納めに一緒について行った。

朝から、いい天気で、日なたにでていると、ぽかぽか気持ちがいい陽気だった。

第三小の校庭には、クラブのメンバーのほとんどが既に来ていて、準備運動をしていた。

恭子は監督の寺西のそばに行くと、軽く会釈をして、横に立った。

「おはようございます。いいお天気で良かったですね。」

「おお、おはよう! 陸上部の練習はもう終わりなのかい?」

「はい、冬休みの間の練習は休みなんです。」

「そうか、まあ、たまにはゆっくりしないと、体が持たないからな。」

「いえ、いえ、そんなことはないんですけど、コーチが帰京しているもので。」

「へえ〜っ、野村先生の田舎ってどこなの?」

「たしか、九州の方だって言ってましたけど。」

「そうか、じゃあ、辛子明太子だなあ。」

「何が辛子明太子ですか?」

後から悠斗が急に声をかけたので、寺西は一瞬、ビクッと体をふるわせて振り向いた。

「いや、その…野村先生の田舎が九州だって言うから…」

「九州は九州だけど、辛子明太子は福岡でしょう?野村先生は鹿児島県ですから明太子はないと思いますよ。」

「そ、そうか…」

悠斗は、チラッと恭子を見てウインクした。

「拓が帰ってきてるから、練習が終わった後会うんだ。一緒に来るかい?」

「いいんですか?おじゃましても?」

「ああ、その方がきっと楽しいから。そうそう、仁美ちゃんも呼んだらどう?」

「そうですね。じゃあ、そうします。」

「うん!今日は、ずっと練習見ていくのかい?」

「ええ、そのつもりです。」

「じゃあ、練習の後、一緒に食事会にも顔を出すかい?」

「いえ、一度家に帰ります。」

「そうか、じゃあ、適当にやってて。」

「はい、ありがとうございます。」

子供たちの方へ走っていく悠斗を眺めながら、恭子は携帯電話を取り出した。

メールが1件入っていた。

〜今夜、初詣に行かないかい?〜

恭子はすぐに返信した。

〜午後、悠斗先輩と会うんでしょう?仁美とご一緒させていただくことになりましたが大丈夫ですか?〜

すると、今度は電話の着信音がなった。

拓からだった。

「恭子ちゃん?悪い。メールってどうも面倒くさくて。それより今、第三小に来てるのかい?」

「はい、弟の練習納めなんで見物に来てます。」

「そうか、じゃあ、俺も今からそっちに行くよ。」

そう言うと拓は電話を切った。


 子供たちがいなくなった三浦家では、久しぶりに夫婦水入らずでくつろいでいた。

早紀は、だいぶ具合が良くなってきたようで、自分で紅茶を入れて居間に入ってきた。

孝幸はソファをずれて早紀が座れる場所を開けてやった。

「具合はどうだ?」

そう言って孝幸は、早紀の額に手を当てて、熱が下がったかどうか確かめた。

「うん!もう、熱はなさそうだな。だけど、油断は禁物だ。今日は夕方までゆっくりしているといい。なんと言っても、君がダウンしてしまったら、おせちをこしらえる人がいなくなってしまうからな。」

「まあ、恭子がいるわ。」

「ああ、でも、まだまださ。」

三浦家では、毎年、大晦日の夜、母親の早紀がおせち料理の支度をする。

恭子も中学生になってから、早紀を手伝うようになった。

とはいえ、まだまだお手伝いレベルだ。


 “ばれいしょ”では昨日30日で年内の営業を終えているが、マスターと女将はこの日も忙しそうに料理の下拵えをしている。

板前の徳次郎は、今日から休みを取って帰京しているので、普段は調理をしない女将も一緒にやっている。

大晦日の夜は、常連客だけを集めてカウントダウンパーティーをやるのが恒例となっているからだ。

「おい、今日は悠斗と拓も来るんだよな?」

「来ると言っても、ちょっと顔を出す程度だよ。それに、まだ二人は未成年だからね。」

「分かってるよ。だから聞いたんだよ。二人が来るなら仁美もパーティーにでるだろう。そしたら、三浦ん家の嬢ちゃんも来るだろう?」

「まあ、そうだねぇ。少なくとも、仁美は顔を出すと言っていたわよ。」

「そしたら、子供たちが食えるもんも何か用意しなきゃならないだろう?」

「そんなに気にすることないよ。子供と言ったって、赤ん坊じゃないんだから、そこそこのもんは食べられるんだから!それに、もう徳さんを休ませてるんだから、手が廻らないよ。」

「そうか?それならいいんだが…」

仁美の父親でもあるマスターは、一人娘の仁美が可愛くてしかないので、俗に言う、“親ばか”に輪をかけたように仁美のことになると張り切ってしまう。

当の仁美も、どちらかといえば、父親っ子で、そのことに対してまんざらではない様子なので、さらに増長しているのだ。

母親の女将は、ある程度、放任主義なので、父親の親ばかぶりには、『やれやれ』というように、半ば諦めている。

そんな二人を後目に、仁美が調理場に顔を出した。

「あれっ?お母さん、料理してる。珍しいね。」

「何言うんだい? これでも昔はちゃんと食事の支度だってやってたんだからね!」

野々村家では、“ばれいしょ”を始めたときに、雇った住み込みの板前、吉田徳次郎が三食の食事の支度をするようになったので、女将の久仁子はそれ以来、料理をすることが少なくなったのだ。

「まあ、そんなことはどうでもいいや。ちょっと出掛けてくる。お昼ご飯はどうなるか分からないから、後で電話するね。」

「ああ、分かったよ。気を付けてお行きよ。」

仁美は、母親の久仁子にウインクすると、奥にいる父親の勝晴に手を振って、出ていった。


 仁美が三小に来ると、朝礼台の上に並んで座っている恭子と拓の姿があった。

「まったく、あの二人ほどお似合いのカップルは、この辺ではお目にかかれないわね!」

そう呟きながら仁美は二人に近づいた。


 電話を切ってから拓は、ウインドブレーカーを手に取ると、外へ跳びだし、走りながら羽織った。

拓の家は第五小学校の学区域になるので、第三小学校までは普通に歩いて20分ほどかかった。

しかし、拓はジョギング程度のペースで走り、10分とかからずに第三小のグランドに到着した。

グランドに着いた拓は辺りを見回すと、すぐに、朝礼台の上に座っている恭子を見つけた。

白いウインドブレーカーを羽織って、お馴染みの阪神タイガースの野球帽を被っている。

「やあ、相変わらずだね。」

拓は、朝礼台の前に回り込み、恭子が被っていた野球帽を手に取った。

「先輩!」

恭子はちょっと驚いたが、すぐに帽子を取り返し、言い返した。

「先輩こそ、相変わらずですね。電話を切ってから、まだ10分も経っていませんよ。それなのに、息も乱さずにいられるなんてさすがオリンピック代表ですね。」

拓は、朝礼台に登って、恭子の隣に座った。

「オリンピックか… まだ、代表になったわけじゃないけど、もし、行けたら一緒に来てくれるか?」

恭子はその言葉を聞いて、少しドキッとしたが、素直な気持ちを正直に伝えた。

「うん!というか、絶対に連れて行ってくださいね。出来れば、次の北京へ!」

拓は、正面を向いたまま、少し考えていたが、恭子の顔を覗き込むようにして、右手の小指を差し出した。

恭子も、同じように小指を出して拓の小指に絡ませた。

「指切げんまん嘘ついたら針千本飲〜ます。指切った。」

ちょうどそのとき、近づいてくる誰かの気配に気が付いた。

振り向くと、仁美が腕組みをして仁王立ちしていた。


 朝9時から始まったジュニアスターズの練習納めは、二時間の通常メニューを終えると、グランドの整備に取り掛かった。

悠斗は楽しそうに談笑している朝礼台の三人がずっと気になっていた。

普通なら、あっという間に終わってしまう練習が、今日はやけに長く感じられた。

グランド整備が終わって、ようやく監督の寺西が子供達に集合するように号令を掛けた。

寺西は、休みの間の注意事項を話した後、解散の挨拶を悠斗に依頼した。

「… おい!悠斗!」

早く拓たちと合流したかった悠斗は寺西の話が耳に入っていなかった。

寺西に大声を出されて我に返ると、子供たちがクスクス笑っていた。

「う・うん… えーと…」

悠斗はチラッと寺西の顔を見た。

おおかたの事情を察知していた寺西は、悠斗を睨み付けて、ポンと軽く頭を叩いた。

「最後の締めをやれ!」

「あ!はい。」


 最近は一年中休みなしで営業している店が増えてきた。

おかげで、大晦日のこの時期でも、時間をつぶすのに不自由しない。

駅前のショッピングいモールでは、今年最後の大売り出しと銘打った商戦が繰り広げられている。

明日になれば、初売りと銘打って今年最初の商戦が繰り広げられるのだ。

 恭子たちは、ショッピングモールの中にある、ファミリーレストランに来ていた。

ここで、ジュニアスターズの食事会が開催されていたからだ。

恭子も、結局、家には戻らず、ジュニアスターズの食事会に参加した。

会費は、拓が仁美の分も合わせて3人分出した。

ちょうど、昼時で込み合っていたが、ジュニアスターズは店の半分を貸し切っていた。

食事のメニューは決められていたため、好きなものを選ぶとこは出来なかったが、恭子と仁美は大好きなハンバーガーとオニオンリングフライが出たので、大喜びだった。


 食事会が終了した後も、4人はそこに居残って、お茶を楽しみながら雑談に花を咲かせた。

「そう言えば、今夜は仁美ちゃん家でカウントダウンパーティーやるんだろう?」

悠斗が切り出すと、仁美が悠斗と拓に参加することを確認した。

「そう、そう!二人とも来るんでしょう?」

「ああ、ちょっと顔を出すくらいだけどね。」

拓がそう答えると、仁美は恭子も誘ってみた。

「ねえ、恭子もおいでよ。」

「う〜ん… うちはお父さんがおそばを作るから、無理かもね。」

「えっ?だって、お店のリストに恭子ん家のお父さんの名前ものってたよ。」

「じゃあ、お父さんはおそばを食べてから行くのね。」

「それなら、お父さんと一緒に来ればいいじゃない。」

「でも…遅くなっちゃうし…」

「その、おそばって何時頃食べるの?」

「10時頃だと思うけど。」

恭子は、拓に初詣へ行こうと誘われていたので、遅い時間まで父親と一緒に居たくなかったのだ。

恭子が困っているようだったので、拓が助け舟を出した。

「じゃあ、こうしたらどうだい? パーティーは7時からだろう? だったら、逆に、早い時間に来て、おそばを食べる頃に家に帰ればいいんじゃないか?」

「そうだ!それがいい!」

拓の提案に仁美と悠斗が賛成した。

「ねえ、それならいいでしょう。」

仁美が強引に誘うので、半ば、押し切られるような形で恭子は承諾した。


 家に帰ると父親の孝之が夕食の支度をしていた。

三浦家では、毎年、大晦日には夜に年越しそばを食べるので、少し早い時間に軽めの夕食を取る。

5時過ぎには、食事を終えたので、恭子は仁美との約束のことを両親に話した。

孝之も先も、拓や悠斗が一緒なら安心だと、承諾してくれた。

恭子は食事の後、風呂に入って“ばれいしょ”へ出かけた。


 店についたのは7時半過ぎだった。

既に、店内は盛り上がっていた。

1階の奥のテーブル席で仁美が手を振って合図をしている。

この席のテーブルには鉄板が備え付けられている。

マスターは、結局、仁美たちのために、もんじゃ焼きが出来るように特別メニューを用意してくれたのだ。

 パーティーは、」町会の青少年部部長で孝之の上司でもある高橋が仕切っていた。

拓と悠斗は、ちょくちょく知り合いに勺をしたり、してなかなかテーブルに落ち着けなかった。

メンバーは入れ替わり立ち代り常に店の中は満員に近かった。

拓と悠斗が一通り勺をし終えた頃を見計らって、マスターがいつもの二階の座敷を用意してくれた。

4人は速やかにそっちへ移動した。

すかさず、女将が上がってきて、冷蔵庫の鍵を置いていった。

「今日は、勝ってに好きなもの飲んでおくれ。食べたいものがあったら、とうちゃんに言いな。」

 やっと静かになった。

拓は、両手を高く上げて伸びをした。

「いや〜あ、やっぱ、地元は良いなあ!」

「さすがに地元のヒーローは違うわね。」

仁美が、感心して拓にウーロン茶を注いだ。

「まあ、陸上競技なんて、マイナーなスポーツだから、地元でもない限り、変装もせずに居られるのはあらがたいけどね。」

そんな話で盛り上がっているところで、恭子の携帯がなった。

「もしもし… うん、分かった。」

電話を切ると恭子はそろそろ帰ると告げた。

「おそばの時間?」

仁美が聞く。

「そう。」

恭子はそう言って席を立った。

すると、拓も席を立ちこう言った。

「送っていくよ。」

「でも、せっかく集まったのに、みんなに悪いわ。」

恭子が遠慮してそう言うと、仁美と悠斗が声を揃えて、こう答えた。

「私たち(俺たち)のことは気にしなくてもいいよ。」

それを聞いた恭子は、一瞬きょとんとしたが、拓がウインクしながらこう言ったのでピンときた。

「そういうことだから、二人っきりにしてやろうぜ。」

そして、拓と恭子は、裏口からそっと店を出て行った。




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