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死後の世界エンジョイ勢  作者: 冥府京の住人
第1章
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第9話 戦鬼団、全員集合

「おお、久しぶりじゃのう月鬼。そして……ドロイだったかの。妾に何か用か?」


 椅子から下り、赤い和服の裾の隙間から見える白めの肌の足をチラリと見せつつこちらへ歩み寄ってくる閻魔。その美貌に少し躊躇しつつドロイは、


「えっと、実はこいつ鬼だったんです。だから閻魔様に伝えようかと……って、角が消えてる!?」


「ん? あ、ほんとだ」


 手探りで角の有無を確認し、他人事のように月鬼は言う。


「ふむ、そやつが鬼だったとな?」


「ああ、ほんとだぞ」


「ロボットのおぬしが嘘をつくとは思えぬが……とりあえず、皆を集めるとするか」


 閻魔はドロイと会話した後、左手を縦にして人差し指を軽くのばし、顔の前までもってくる。すると、1つの暖かい光の塊がその人差し指にとまり、虹色の蝶の形へと変わった。そのファンタジー的な光景に、月鬼はつい目を見張る。

 そして、閻魔はその光の蝶に声をかける。


「皆の者、集まるがよい。知らせがある」


 そう言うと、蝶は休ませていた羽を広げて宙へ飛ぶ。


「アヤメ。お主は冥府京を見張っておれ。罪人を見つけたらすぐ知らせるのじゃぞ?」


 「了解」と言ったように、一瞬輝きを眩くすると、空きっぱなしの扉を通って、冥府京へと羽ばたいて行った。


 その数分後、蒼鬼、紅鬼、吹鬼、柳鬼……顔なじみがあるメンツが集まってきた。


「あの、知らせとは何でしょうか、閻魔様」


 ウソ着物を着こなしている吹鬼が、キョトンとした顔で閻魔に問う。


「実はの、月鬼は鬼らしいのじゃ」


 突然のカミングアウトに、一同ポカーンとした顔になる。そしてリーダーの蒼鬼が聞き返す。


「月鬼が……鬼? 」


「今は角は消えているがの」


「鬼になった時の状況はどうだった?」


 柳鬼が何かを探るように月鬼に質問をする。


「えっと確か……ローブの男を追いかけて、走ってる時だな。全力で飛ばして追いつけなかったときに、急に足が速くなった」


「なるほど。僕の推測によれば、そのとき敵を倒そうとする鬼の血が騒ぎ、興奮状態になったから。かもしれないな」


 ドヤ顔気味でメガネをクイッと人差し指で上げ、推測を述べる。このうざい感じが無ければ完璧だろうに。


「興奮状態か……」


 前かがみの体勢になって、大きな胸を強調する。胸の辺りが乱れ、その卑猥な体勢に月鬼はつい谷間に目が行く。


「えっと、閻魔様……?」


「お主、よく見ると中々いい男じゃの……妾が特別なことをしてやってもよいぞ?」


 目線を紛らわせつつ質問したが、目をじっと見つめてそう言われ、月鬼はその「特別なこと」について考える。すると、頭が急に熱くなり、どこか違和感を感じる。


「やはり、そっち(・・・)の意味の興奮状態でも鬼になるのじゃのう……」


 顔がほのかに赤くなっている月鬼は、頭を手で探る。と、ツルツルとした角が生えていた。一同、月鬼の角を観察するように見つめる。自分も上目で角を無理に見ようとする。と、前髪が少しキラキラとした白い髪に変わっていたことに気がついた。


「あれ、前髪が銀色になってる」


「さっき見た時は、髪は全部黒髪だったのに……」


 彼が初めての鬼になった姿を見た、第一発見者のドロイが、さっきまで閉ざしていた口を開ける。が、柳鬼が持ち前の頭脳で、


「身体がだんだんと鬼になることに慣れてきたからだろうな。ほんとに鬼だったということは、さすがの僕も予想外だけど」


「はい。それに、綺麗な角です……」


「にしても、違う世界の混血なんて珍しいな。ましてや滅亡した鬼の……」


 紅鬼は話題を変えたが、すぐにそこで話を止める。他の戦鬼団全員も、少し顔が暗くなったような気がした。


「……今いる鬼は俺を含むと6人だけなのか?」


 敢えて空気を読まずに、そんな質問をする。すると、蒼鬼は眉間のシワを緩め、


「いや、7人だ」


「7人って……あと1人はどこなんだ?」


 「さぁな」という表情で返され、月鬼は 懸命に探すが、 ここには彼と蒼鬼、紅鬼、吹鬼、柳鬼、ドロイ、閻魔しかいなくて、全く見つからない。

 しかし、戦鬼団とプラスアルファは分かっているような顔をする。月鬼からしたら少しからかわれたような気分だ。が、そのとき、


「ここよ、ここ。あなたの後ろ」


 突然、背中から女の子の声が聞こえたかと思うと、タイミングを見計らっていたかのようにひょこっと済ました顔でその姿を現す。


 服装は黒いマフラーで口元を隠していて、手の甲まで覆い隠すほど長い袖の服と短めのスカート。 茶色いブーツも似合っている。

 動く時に相手に気づかれないためか、金属などの音が鳴るものは1つも着けていない。服が全体的に黒っぽいのも、夜に見つかりにくくするためだろう。

 髪は後ろでくくっており、色は紫がベースで毛先が筆の墨っぽく灰色に染まっている。そして、細長いピンクっぽい紫の角が1本生えている。顔は結構、美形だ。

 身長は、月鬼の後ろに収まるほどだったので165cmいくかいかないかぐらいだ。


「相変わらずの忍力だな」


「とか言って、みんな私のこと見つけてたんでしょ? この人以外は」


 まさか背中に隠れられていたので、思わず苦笑いで返すが、彼女は続ける。


「おっと、自己紹介をまだしてなかったわね。私の名前は菫鬼。(すみれ)の鬼って書いてきんきって読むのよ。特技はさっき見せたけど、気配を消して敵の背後にまわることよ」


 自信に満ちたドヤ顔で自己紹介する彼女──菫鬼。彼女の実力は、今さっき頭に染み付いていた。

 いつから後ろにいたのか、ふと疑問に思い、質問をしようとする。が、満面の笑みで吹鬼が先に彼女に話しかけてしまう。


「お久しぶりです、菫お姉さま!」


「吹鬼ちゃん、久しぶり! ずっと会えなくてごめんねー? いい子にしてたー?」


「はい!」


 菫鬼は口元を隠すマフラーを下げ、まるで姉妹のようにニコニコと、ほのぼのした会話をする。そのため月鬼はつい閻魔に、


「なぁ、閻魔様。あの2人って姉妹だったのか? 全く似てないけど……」


「菫鬼と吹鬼は全くの他人じゃ。じゃが、菫鬼は実の妹のように吹鬼の面倒を見ていたのじゃよ」


「なるほどな……紅鬼と蒼鬼もあんな風に仲良くしたらいいのに」


「断固拒否だ!」


 少しでも仲良くさせようと嫌味っぽく言うが、2人同時に即答し、拒否する。どういう訳か、こういう時だけなぜか意見が揃う。


愚兄(こんなやつ)と仲良くなるなんて、消えてたほうがマシだ!」


「俺の方も同意だ。毎回喧嘩ばかりふっかけてくるくせに、こいつは1度も謝ったことがない」


「それは、ほとんどがお前が喧嘩の原因なんだからに決まってるだろ! 俺がお前に謝る権利なんぞこれっぽっちもないんだよ!」


 紅鬼は怒鳴り、蒼鬼は冷淡に言葉をぶつけ合う。閻魔と月鬼、ドロイは、ヤレヤレという表情で2人を見つめる

 「仲良しの姉妹を背景に、双子が口喧嘩をしていて恥ずかしくはないのか」と、言おうもしたが、ほぼ100%の確率で喧嘩が大きくなると確信したので、月鬼は口を閉ざした。

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