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序章2.稀代の才能

「おおおおおおっ! これが僕の真の力だ! 雷神の咆哮(エリュトロン・ブロンテ)


 剣の先から光が射出され、魔物たちの大群の一団を消し飛ばす。


 戦闘経験がない一年生たちでも、このように簡単に魔物の大群を消し飛ばしているのだ。


「おお、今年の一年はやるねえ」

 感心したようにリサは言う。


 そういうわけで才たち一年生はリサの指導の下、ダンジョンの中に入っているのである。


 いわくこの世界には魔物が絶えず沸いてくるダンジョンと呼ばれるスポットが存在しているのだそうだ。


 というわけで、洞窟の中にうじゃうじゃとゴブリンやらジェル状の牛やら、口から炎を吐くこうもりなど、なんかそんなのがたくさんいるのだ。


 ダンジョンにもレベルが設定してあり、このダンジョンはだいたい10~30レベル前後の冒険者たちが入るものだそうだ。そういうわけで第二生徒会でははじめてのダンジョン攻略のチュートリアルとして使われているという。


 探索二時間ほどたてば、大分この世界の戦い方についても慣れてきた。


「危ない! うしろだっ!」

 パーティの後ろ、メガネ少女に向かって飛び掛ってくる角の生えたこうもりに対して、かばうように才は剣を振り下ろす。


 と、まあ才も同じく戦おうと試みるわけだが……。


「く、くそ。この、とおっ!」

 なれないてつきで必死に剣を振るうが空を舞う角の生えたこうもりにはなかなかあたらない。


 しかもこうもりは才の剣戟を交わすと背後に回りこみ、いきなり角で突進してきたのだ。


「うぁああああああっ!」

 そうすると視界がちかちかと光る。ダメージを受けて生命ポイントが減少したのだ。


「もう、才。なにやってんの」

 と、ため息混じりに言いながら、菜乃花は剣をふるい、こうもりは真っ二つになって消滅した。


「角こうもりは最弱モンスターでしょ」


 持ち前の運動神経も手伝ってか、菜乃花の基礎ステータスは驚くほど高く、並みのモンスターでは相手にならないほど攻撃が早いのだ。


 そう言ってまた魔物の群れの中に向かっていく。さすが元バスケットボール部エース。


「大丈夫ですか? ヒーリング!」 

 とメガネ少女はすぐに持っていた杖を才に向かった掲げる。すると体が淡く光り、視界が回復する。


 彼女は光魔法の才能が一年生一で、その才能は3年の浅間にも匹敵するという。


「あ、ありがとう。えっと……」


「あ、八雲なずなです」

 わずかに視線をそらしながら、なずなはそう言った。


「こちらこそ助けてくれてありがとう。あ、天城くん」


「いや、結局なにもできてないわけだけど……」

「そんなことないです。あのときも」


「あのとき?」

 才が聞くとなずなはフルフルと首を振ってわずかに頬を赤らめてうつむく。


「……そういえば、入試の時……」


 と才が言いかけたときである。風が洞窟内を駆け巡り、思わず才はなずなをかばいながら伏せる。


「全員消え去れ、風神の裁き(シュテルン・ヴィント)」


 洞窟内を駆け巡る風の刃が、周囲にいた魔物たちを切りきざみ蹂躙していく。

 鈴谷雄一である。


「へえ。さすが、会長が驚くほどの才能だね」

 リサが感心したようにそう言う。


「な、んだよ。もう少し手加減してくれねえと、こっちまで……」


「それに比べて、えっと、才くんだっけ」

 と、リサはため息をつく。


 ちなみに敷島は相手のステータスを読み取る力があるらしく、雄一のステータスを見たときは歓喜していた。

 才については、「な、これは……。まあ、うん」と、それ以上何も言ってくれなかったのだ。


 ちなみに自身のステータスを把握できるようになるのはレベル50を超えてからだという。


 この世界の一般人は平均してレベル30~40。つまりほとんどの人間は必死に鍛えても、自分の才能すら把握できないまま生涯を終えるのだという。

 戦士として必死に鍛錬してレベル50を超えた熟練冒険者が、実は光魔法の使い手だったなどはこの世界のよくある冗談なのだそうだ。


 まあ生徒会メンバーにはステータス鑑定スキルを持つ敷島がいる。間接的ながらステータスは教えてもらっている。そのため、全員秀でた部分を生かしながらたたかっていくことができるのだ。


「でもまあ、敷島が喜ぶのもわかるよ。きみたちはすごい。僕なんか簡単に追い抜かれちゃうかもね」


 そう。ここにいるメンバーは誰もが歴代の勇者の中でも秀でた才能の持ち主なのである。


 雄一は万能型。攻撃魔法、回復魔法をそつなくこなし、体術や基本身体能力もずば抜けて高い。しかも高位魔法を使い、ソードマスターの上位ジョブスキルである、魔法剣もレベル1のときから所有している。使える属性は、光、雷、炎、風と四系に至り、さらに魔法剣の技術の応用で、魔法の属性同士の融合も行えるとかなんとかかんとか。


 そして言ったようになずなは後方支援型。いわゆる僧侶とかヒーラーとか言われる職業だ。光魔法の才能レベルはダンチで、これにいたっては雄一以上の才能。レベル1の段階で、回復魔法はほぼすべてマスターしているのだ。


 そして菜乃花は、攻撃特化型。身体能力と物理攻撃力の基礎地と成長地が高く、敵の攻撃前に即効でうがち、さらに一撃で粉砕させるバトルマスターなのだ。


「才くんはなー。でも今年の新入生の中ではきみたち四人の魔力指数が一番高かったんだし。才くんもがんばってほしいけどね」

 と、こんな調子である。


「でもまあ、たくさん後輩が入ってくれてよかったよ。ようやく下っ端から脱却できるしね」


「いや、こちらこそ。リサさんみたいな優しい先輩がいてくれて助かりましたよ」

 ほかのやつらはむさくるしい男ばかりなのだ。会長はいわずもがなだし、浅間はキザでかんにさわるし、千代田はあんまりしゃべらないし、で、気さくなリサの存在はありがたかったのだ。


「な、え? や、優しいって、な、何言ってんの! ぼ、ぼくなんて。男勝りだし、がさつだし……」


「へ? いやいや男勝りって、全然そんなことないでしょ。先輩は女の子らしいですって」

 だいたい戦うことががさつだというのなら、格闘技系の部活動にいそしむ女子がぜんいんがさつってことになってしまう。


 というか背がひくいこともあいまって、なんとなくリサは先輩という感じがしないのだ。どっちかというと妹?


「お、女の子らしいってどういう意味だ!!」


「どういう意味って……」

 子ども扱いされたのが気に障ったのだろうか?


 いけないと思いすぐさま才は言葉を改める。


「その女の子っていったのは、かわいらしい女性という意味で……」


「かわっ……」

 と、そういうと怒ったのか、リサは震えだす。


「せ、先輩?」


「うるさいっ! さっさとモンスターを倒してレベル上げしろっ!」

 といきなり魔物の群れにけりだされてしまう。


「ちょ、おわ」

 そういうわけで、雄一に混じって才も魔物たちと戦うことにする。


 とはいえ、ほとんど雄一が倒してくれるし、おこぼれも基本的には取り逃がして、菜乃花が倒すというのが定型パターンになっていた。


「中々バランスのいいパーティだな」

 こくこくと才がうなずきながら言う。


 即席ながら、巨大魔法で雄一が殲滅、取りこぼした敵は菜の花が各個撃退。傷を負ってもなずなが瞬時に回復するという、これ以上にないくらいバランスのいいチームになっているのだ。


「君以外は、な」


「……まあ」

 才は自身の手に視線を落とす。


「……うーん。魔力量に比べてステータスが低すぎるなあ。なにか固有スキルがあるのかもしれないけど」


「固有スキル?」

 才にも彼らのように戦えるだけの隠された才能があるということだろうか?


「たとえば雄一くんは魔法属性を融合できてるでしょ。これは彼の固有スキルによるものだよ。でも、固有スキルがあるなら敷島先輩が見たときにわかるはずだし、何も言ってなかったってことはないのか……」

「ないのかよ!」


「まあ、気を落とさないで。スキルは後天的に発生する場合もあるし、レベルが上がったら隠された力が得られるかも。それに初期値が低くても成長値が高ければレベルが上がれば他の一年生に追いつくことも……」

 そう言って、しかし言葉を止める。


「いや、ないか。……僕でも相手のレベルは見ることができる。君のレベルは今8。少ないながら経験値が入ってレベルもあがってる。けど、成長率はスズメの涙ほどだね。うーん」

 というわけだ。


 そういうわけでダンジョンを探索していくと、開けたホールへと出る。


「一日でここまでたどり着けるなんてやっぱり君たちはすごいね」


 そう言ってリサは右手をかかげると、そこに懐中時計が現れる。

 パチンっとふたを閉じながら言う。


「2時間半か。いいね。中ボスを倒そうか」

 と、次の瞬間、奥から巨大な影が現れる。


「な、なんだよこれ」

 今までの魔物たちとは比べ物もならないような大きさだった。


 身長は5メートルを超える巨大なミノタウロスが現れたのである。


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