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プロローグ

「才! ついにこのときが来たね」

 白金のよろいをまとう少女が、隣に立つ少年にそう声をかける。


「菜乃花……」

 そんな彼女とは幼馴染。あの日常にあったときからずっと、同じ時間を共有している。勇者パーティの一行にして、高校のクラスメイトでもある。


「まったく。感慨深さもなにもあったもんじゃないぜ。明後日から期末試験だってのに」


 少年は眼下広がる魔王群の軍勢を前にしてため息をつく。


 ここは魔族を支配する大魔王によって人間たちが蹂躙される世界。

 剣と魔法のファンタジー世界である。


 幾人もの勇者たちがこの世界に召還されてきた。少年たちの代で、数えて27代目となる。そして27年間、前人未到の偉業成し遂げられようとしていた。


 魔王軍との全面抗争。

 それが、すでに奇跡。


 人間たちの力は魔人のそれに遠く及ばない。異世界からの勇者はこの世界の人間をはるかに超える身体能力と魔力を持つとはいえ、しかしそれでも魔人に届かない。低級の魔人こそ戦えるとはいえ、八人いるという大魔王の最上位幹部、魔帝にいたっては、この二十七年間で討伐数二人というのが実情だ。


 そう。勝負にすらなっていなかったのだ。勇者も含めて。


 児戯の範疇で人間たちは蹂躙され支配されてきた。


 だが彼が、その一方的な戦局を打開した。


 わずか、数ヶ月で!


 世界地図の8割を支配していた魔軍を、今五部のところまで押し返したのだ。そして、ついに全面抗争が始まる。

 勇者と魔王軍の全面戦争が。


「そういや今日から始まる月9……」


「ん?」


「DVDとってねえんだった。それまでに帰らないと」

 才がそういうと隣に立つ少女はため息をつく。


「まったく才はいっつもマイペースだよね」


「でもだからこそわたしたちをまとめることができたんじゃないですか?」


 そういったのはローブをまとい、身長ほどもある大きな杖を握り締める少女だった。ファンタジー世界には不釣合いな、現代的なデザインの丸めがねをくいっと直しながら笑う。


 それに呼応するように背後に集まる人々がうなずく。


 勇者の下に集まる、パーティが。人間史上最強の軍勢が。


「七時か。いくぞ。あと2時間で、終わらせる」


 大戦の火蓋がきって落とされた。


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