先史遺産
天之御の魔法により、上空から人族部隊が動き出した事を確認した星峰達。その光景を見て早速行動を予測していた。
「あれが涙名が言っていた新型移動車だね・・・確かに従来車よりもかなり早いスピードで動いてきている。でもその移動先は・・・」
「この移動角度から推測すると恐らくスリーリバーマウンテンではないでしょうか?」
天之御の予測に自身の考えを続ける空弧、だがその結論を星峰は聞き逃す事が出来なかった。
「一寸待って!?スリーリバーマウンテンの奪回作戦は私も一度参加したけど、その時は・・・」
「戦力が足りずに後退した・・・だよね。ま、それは僕が事前に天之御に情報を送っておいたから。そして、そうなるように戦力分配を仕向けたっていうのもあるけどね」
思わず空弧に食いつこうとした星峰だったが、その直後に軽く出てきた涙名の発言に呆気に取られ、その後の言葉が行方不明になってしまう。
「それはそうと、スリーリバーマウンテンに再び仕掛けてきたという事は、やはりブントもあれの存在に気付いている、あるいは気付き始めている。その可能性は想定しておくべきでしょうね」
星峰の言葉が途切れたのを確認すると八咫が真剣な口調と顔でそう口にし、
「ええ、あれが万が一ブントの手に落ちたらこの上なく厄介な事になりますね。人族に魔神族側のブントの施設を陥落させてもらったのはスリーリバーマウンテン周辺からブントを一掃する目的もありました。それを承知で仕掛けてきたのだとしたら」
と岬も続ける。二人の口調からスリーリバーマウンテンに何か秘密があるのは明らかだった。星峰もそれを察し
「つまり、あの時私達は気付かない内にスリーリバーマウンテンを守っていた?あそこに一体何があるんですか?」
と聞く。何か重要なものであると確信はしていたが、確認せずにはいられなかった。星峰に問いかけられた天之御は
「まだ確証がある訳じゃないんだけど・・・スリーリバーマウンテンには太古の瞬間移動技術が眠っている可能性があるんだ」
と告げる。
「瞬間移動技術?それって私達魔神族が使っている魔法と同じような物?」
星峰が更に問いかけると天之御は
「そうだよ。これに限らずブントは世界中で発掘された先史遺産を手中に収め、解析して兵器を作り出している。君がスリーリバーマウンテン付近の施設で交戦した兵器も人族の移動車も先日の新兵器もその産物だよ」
と返答する。その口調にはどこか怒りが感じられた。
「あの兵器が・・・じゃ、もしそれが実在していて、ブントにそれを使われたりしたら・・・」
星峰はそう言いかけるが、その結論は誰が言うでもなく分かっていた。世界が泥沼の戦乱に陥る事になるのは。




