一時の休息
「しかし、ブエルスを経由出来ないとなると各エリアの移動は極めて困難だぜ。俺でもその位は想像出来る。何しろ各大陸の港は悉く魔神族に制圧されてるし、勿論空から行こうなんてすれば一発でばれちまう」
モイスが若干の自虐と共に現状の問題を語る。だがそれに笑う事はコンスタリオ、シレット共にしなかった。それが事実であり、笑って流せる話ではないからだ。その会話は笑うどころか三人を更なる険しい顔にしていく。
「恐らく今の上層部は直接の接触手段を持たず、通信で繋がるのが精一杯の状態でしょう。その状況で港の奪還が重要だと言っても誰も聞く耳は持たないでしょうね。
ましてや前回の作戦の失敗で内通者の存在も仄めかされてる。疑心暗鬼に陥るのも時間の・・・いえ、もう既に陥っているかもしれないわね」
コンスタリオが真顔で懸念を話す。この光景にモイスとシレットは不安をよぎらせる。コンスタリオがこうした不安を口にする時、その不安は大体的中するからだ。そしてこの時もそれは例外ではなかった・・・
「兎に角、私も考えてみます。今は上層部の出方を伺いましょう」
「・・・そうだな、今ここでこうしていても何にもならない。それよりは・・・」
シレットの発言に同意するモイス、それを合図に二人はコンスタリオの部屋から出てそれぞれの部屋に戻っていく。コンスタリオはそれを見届けた後、一言も発する事無く床へと身を潜らせる。その日の就寝時の部屋は特別暗く見える。まるでコンスタリオの内心を具現化した様に。
翌日、コンスタリオが目を覚まし、朝食を摂り食堂に行くと前方にキャベル総司令が立っていた。
「既に承知していると思うが、昨日東大陸の作戦失敗により人族部隊内部に内通者がいる可能性が浮上している。だが現状、その内通者がどこにいるのかは検討もつかない。もしかするとかなり上層なのかもしれない。この件についてはかなり慎重な対応を要求されると思う」
総司令がそう語るとその場に居た兵士は全員が頷く。それを確認した総司令は続けて
「直ぐに返答が出ない以上、諸君には一時の休息を与えたいと思う。本日は休息としてしっかり体を休める様に」
と告げ、本日は休息の日とする事を告げる。
「いきなりの休息ですね・・・折角ですからキャベルの市街地を回ってみません?」
「おいおい、そんな呑気な・・・」
コンスタリオの近くに座っていたシレットの提案にモイスは突っ込もうとするが
「まあ、それも偶にはいいわね」
とコンスタリオも賛同する。その発言にモイスは驚いた顔をしてコンスタリオを見つめるがそれに気づきつつもコンスタリオはあえてスルーする。そのままコンスタリオ小隊はキャベルの市街地へと繰り出す。




