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踏み躙られる心

その直後、ルイナは少年が蹴破った天井裏に息を潜め、兵士が嘗ての自分の遺体を発見するのをじっと待つ。


「ル、ルイナ皇子・・・皇子!!」


発見した兵士の動揺した声を聴くとルイナは


「今です!!」


と通信機越しに何かの指示を送り、自身はそのまま天井裏を経由して城の外へと脱出する。ここまでの話を聞いて星峰は


「ルイナを狙った魔神族か・・・でも一寸待って。ならその魔神族は・・・」


と一つの疑念を思い浮かべ、そして口にする。


「うん、ブントの暗殺部隊だったよ。まだ経緯は分からないけどブントは僕が魔神族の・・・いや、天之御の協力者だって知っていて、それを疎ましく思って暗殺者を差し向けてきたんだ」

「暗殺者!?その少年が暗殺者だっていうの?」


疑問に対するルイナの回答は星峰の予想通りではあった。だがそれは最も当たってほしくない予想だった。それが当たってしまった星峰は相応に困惑する。


「うん。この子は人族と魔神族の混血児、これは本当。生まれたのは大体僕と同じ位。だけど両親は生まれて直ぐに戦乱で・・・そして彼はブントが引き取ったんだ。混血児であることにコンプレックスを植え付け、人族への憎悪を抱いた暗殺者にするために」


その語るルイナの言葉はまるでその子本人が乗り移ったかのような怒りが感じられた。それを察した星峰はただ黙って頷く。


「その目的のためにその子は度々混血児である事を責められた。その結果人族への憎しみは膨れ上がり、それと同時に暗殺者としての能力も引き出された」

「幼い子供の心まで踏み躙るのか・・・ブントは!!」


ルイナの怒りが伝線したのか、星峰の口調もきつい物になる。その表情も明らかに険しい物になっていた。


「うん。でもスター兄、いや星峰。踏み躙られたのはこの子だけじゃないんだ・・・」


そう語るルイナの声は何処かこじんまりとしていく。何か言い出しにくい事情があるのだろう。そう思った星峰は


「・・・もしかして、私の事なの?」


と聞き、ルイナは黙って首を縦に振る。


「でも、私は・・・」


故郷の一件を言っているのだと思い言葉を続けようとする星峰、だがルイナの口から続いた言葉は


「星峰の故郷を襲撃した奴等だけじゃないよ。あの戦いで星峰を保護した人族もブントだったんだ」


という衝撃的なものであった。その言葉に


「!!あの時、私を保護してくれた人族部隊がブント!?でも一寸待って、それじゃ・・・」

「そう、僕の父は、法皇はブントの構成員だったんだ!!」


衝撃を受ける間もなく、ルイナは更なる衝撃の事実を投げかける。


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