交わる二つの種
星峰達が見つめる中、その少年は
「でも今回の一件で流石にこれ以上偵察は続けられなくなったよ。外部に情報が漏れたと知った以上ブントも漏洩の警戒は強めるだろうし、何よりキャベルの周囲を魔神族がうろうろしているのは危険すぎるから」
と自己の置かれている状況を説明する。それを聞いた天之御は
「そうだね、でも君はこのまま隠居するつもりはないんでしょう」
と問いかける。それを聞いた少年は待ってましたと言わんばかりの顔と声で
「そうだよ、これからは僕も戦力として戦う。君達と共にね」
と返答する。その即答に怪訝な顔を向ける八咫。これまであった事もない存在を協力者と言い、躊躇う事無くその申し出を受ける。幾等協力者とはいえ、流石に話が急すぎると感じずにはいられなかった。その顔を見逃さなかった天之御は
「八咫、彼の実力は今回の作戦で別動隊を殲滅した事からも分かる筈だよ。急な話なのは承知しているけど、今はこちらも戦力が欲しい」
と語って諭そうとする。八咫は慌てて
「いえ、不満がある訳ではないのです。ですが彼は一体・・・どうしても純粋な魔神族とは思えないのです」
とどこか論点がずれた返答をする。
「純粋な魔神族ではない・・・か。確かにそうだよ。僕は純粋な魔神族でも人族でもない。その双方の血が交わった存在だからね」
少年が語ったその言葉に天之御意外の全員が困惑する。これまで人族でも魔神族でも双方が交わり、子を生す事が出来るという話は出ていなかったのだ。それが唐突に語られた、それも明るい口調で。そんな状況で困惑しない方が無理があった。
「そ、双方のって・・・つまり、君は・・・」
空弧がたじろぎ乍ら聞き質すと
「そう、混血児って事。それ故に双方の長所を備えてる。魔神族の武力、妖力、人間の魔力その全てを一つにね。最も、これを中途半端と見る意見もあるけどね」
とこれまたあっけらかんとした返答で返す。
「・・・分かった。君を戦力として認めるよ。だから今日の所はお開きにさせてくれ、頭がこんがらがってきた・・・」
自身が言い出した故、ばつが悪そうな声で八咫が語る。だがそれに異論を挟む者はいなかった。星峰でさえ少なからず混乱していたのだ。その言葉から空気を察したのか、天之御は
「分かった。今日はここまでにしよう。その子の部屋は僕が決めておくから」
と言い、その場を解散させる。その夜、自室に戻っていた星峰の元にふと扉を叩く音が聞こえてくる。
「誰?」
と言いながら星峰が扉を開けるとそこには問題の少年が立っていた。




