二人の決意
行く先々で物珍しそうに周囲を見渡す空弧に呆れつつも星峰も又、その風景を見て安堵していた。そう光景が嘗て自分が居た時と全く変わらなかったからだ。違うのは魔神族もその場に居る事だが、少なくとも自分が見ている場所で人族とのトラブルは起きていない。その事実は星峰を安心させると同時に嘗てとは違う希望を抱かせるのに十分過ぎる物だった。そうこうしている間に日が暮れ、街は夜へとその風景を変える。
「夜の街か・・・そういえば私も中々見る機会が無かったわね」
星峰がふと呟くと空弧は
「え、そうなの?」
と不思議そうに聞いてくる。
「ええ、何時戦いが起きるか分からないから夜の休息は原則早めにとる。それが人族部隊の基本だったから。最も、祭りとかがある日はその限りではないけど・・・」
「参加してなかったんだ」
星峰の言い方からその心境を察したのか、空弧の声も少し小さなものになる。
「うん・・・魔神族への怒りが強くてね。天之御と出会うまでの私は故郷の奪還、魔神族への憎悪、あの時助けてくれた英雄との再会、この三つだけを支えに生きてきていたわ。だから戦いその物を裏で操っている存在が居るなんて考えもしなかった」
「・・・仲間や同僚は居なかったの?」
「居たわ。でも・・・心のどこかで私は共に戦いながらも、信じたいと思いながらも支えにすることが出来なかった。今にして思えば失う事を恐れていたのかもしれない」
月明かりがうっすらと照らす公園の中で星峰は空弧に自身の気持ちを打ち明ける。それは一寸前に剣を交えた相手に対する発言とは思えない。否、交えた相手だからこそここまで打ち明けることが出来るのだろうか。
「・・・知ってもらいましょう。その人達に」
「・・・え?」
空弧が何かを決意した強い口調で話す。その口調に思わず聞き返す星峰。
「星峰の仲間達にもブントの事を知ってもらいましょう。今すぐには出来なくても」
「空弧・・・うん」
そよ風が髪を靡かせ、静かなひと時を送る中空弧はそう口にし、星峰も空弧に頷いて見せる。そのまま夜が訪れ、街は昼とは違う顔へと変わっていく。




