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魔王の責務

「人族に勝利したブントはそのままあの街に居座ろうとしたけど父が手を回して僕が戦果を挙げていたこともあり、ブントに居座られる事は避けることが出来たんだ。

でもその事を逆恨みしたブントは父の失脚を狙った。しかし、優れた者に与えられる魔王の称号をはぎ取れる存在が直ぐに生まれる筈も無く、ブントの権謀術数はことごとく失敗、一方で父もこの一件でブントを放置出来ないと悟り、得ていたブントの情報を正規軍に流し始めたんだ。その過程で僕もその存在を知った」


淡々と話している様に見える天之御だが、言葉の所々に怒りが混ざっているのを星峰を初め、その場に居る全員が悟っていた。


「離し辛い事を承知で聞きますけど・・・そのお父上は・・・」


星峰の声に慎重さが混じる。どう聞いていいのか分からないからだ。


「・・・その枕詞からすると、察しはついているんでしょう?」

「・・・ええ」


天之御の問い返しに頷く星峰、それを見ると


「君の察し通り、父は既に死んでいるよ。失脚が見込めなくなったばかりか、自分達の事を公表されかねないと思ったのか、ブントが暗殺者を送り込んでね。それが四年前の話だよ。でもその少し前、父は新たな人族の協力者を得ていたんだ。

それが誰なのか・・・それは今は言えない」


星峰の問いかけを予想したのか、先に結論を話す天之御。それを聞いた星峰は


「今は・・・と言う事は何時かは話してくれるのでしょう?」


とこれ以上追求しない構えを見せる。


「話してとは迫らないんだね」

「まあ、ただでさえ話し辛い事を聞いた後ですからね。私でも言葉に詰まると思います」


至極あっさりと食い下がった事が意外だったのか、天之御はその事を聞く。そして星峰はそれを聞き、一歩下がった言葉をかける。


「他に報告はない?」

「はい、特に私達が報告するような事柄はありません」

「なら皆、今日はもう休息を取って。今後の行動は明日以降考えよう」


空弧に確認を取った天之御はその場を解散させ、一行はそれぞれの部屋に戻っていく。そして部屋のベッドで横になると星峰は


「あの時の英雄が天之御だったとはね・・・これも合縁奇縁なのかな?」


長年の疑問が解け、少しすっきりした表情で眠りにつく。


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