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奪われた全て

「う・・・ここは・・・」


空弧との戦いで意識を失ってしまったスターが目を覚ます。そこは鉄格子があり、目に映る風景から考えて明らかに牢屋である事は容易に想像出来た。


「目が覚めたのね」


その声と共に何者かが鈍い金属音と共に近づいてくる。その存在が目の前に現れた時、スターはこれまでにない衝撃を受けることとなった。何故ならそこに立っていたのは紛れもなくスターその人の体だったのだから。


「なっ・・・どういう・・・!?」


そう言いかけて言葉に詰まるスター、その口から聞こえる声の違和感に気付いたのだ。その声は今までの自分の声とは明らかに異なる少女の様な声だった。


「動揺しないで・・・って言っても無理ですよね・・・」


スターの体をした何者かはそういうと手鏡を出し、それをスターに渡す。現状を把握するのが先決と思ったスターは渋々ながらそれを受け取り自身の顔と体を映し込む。そこに映っていたのは今までの自分の姿ではなく、記憶の上ではつい先程まで交戦していた空弧の姿であった。


「なっ・・・こ、これは・・・」


あまりの出来事に全身を貫く衝撃を受けるスター、それを見た目の前の存在は


「そう、今の貴方はこの前までの私、今の私はこの前までの貴方」


と告げる。そう、目の前のスターの体をした何者かは空弧だった。


「ふざけるな!!一体何を・・・」

「あの時私が唱えた妖術はお互いの体を入れ替える妖術。つまり貴方と私は入れ替わったのです。最も、一度使うと二度と元に戻れないという厄介な制約がありますが」


あの時の妖術を淡々と説明する空弧、更に


「あの後、ブエルスは私達が抑えさせてもらいました」


とスターに無情な現実を突きつける。


「何・・・だと・・・それじゃ・・・」


余の衝撃にその場に崩れ落ちるスター、又意識を失いそうになる。


「衝撃でしょうが私と共に来てもらいます。魔王様が貴方に会いたがっているので」


空弧はそういうと扉の鍵を解錠しスターの手を握ろうとする。当然の様にスターは抵抗しようとするが何故かそれが出来ない。


「抵抗は無駄です。貴方が意識を失っている間に呪縛の妖術で幾つかの行動を封じておきましたから」


またしても空弧の口から語られた現実を突きつけられるスター、心は抵抗しつつもその場は空弧の言いなりになる他なかった。そして空弧に連れられるままに魔王の間へと向かわされる。だがそこに居たのはスターの想像する魔王とは違う、明らかにかつての自分と変わらぬ背格好の少年だった。



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