勝利への疑問
コンスタリオ小隊も移動車に乗り込み、城に帰還するが、移動車の中でもスターは何か気掛かりな表情を浮かべていた。
「スター、どうしたの?移動車の中でもずっと浮かない顔してたよ」
「ああ、今回の奴等の動き、何か引っかかる・・・」
「またか・・・ま、スターのこの手の発言は何時もの事だもんな」
ミーティングルームへの移動中、シレットが質問するとスターは返答するがその返答をモイスが茶化す。
「もう、モイスも少しは・・・」
「あのな、スターの発言は何時もの事だがな、俺だって考えて無い訳じゃない」
「へえ、そうなんだ~じゃ、言ってみてよ。その考えって奴を」
シレットが少し不機嫌な顔でモイスに振るとモイスは
「今回の奴等の動き、不意を突いた訳でも無く、かといって正面突破をしに来た訳でも無い。陽動作戦と言う訳でも無い。そんな所だろ」
「・・・ああ、今回魔人族は明らかに俺達が迎撃に来ることを想定して行動していなかった。だからこそ最初の足並みが乱れ、結果として俺達が優位に立てた訳だが・・・」
と返答しスターも被せる。その時のスターは何か物珍し気な表情をしていた。
「・・・何だよ、俺だってその位は分かるぜ。今回の魔人族が無茶苦茶な舞台だったって事位」
スターの顔に気付いたモイスは少々不満そうな顔を浮かべる。
「そうね。でも部隊を率いて移動していれば妨害がある事は末端の兵士でも考える事だわ。にも拘らず足並みが乱れたという事は・・・」
「上層部に無断で行った作戦か、或いは偽情報が出回っていたのか・・・大型兵士を連れていたにも関わらず、指揮官らしき存在が居なかった事も気になります」
「偽情報・・・つまり、魔人族も一枚岩ではないって事?」
「そういう事になりますね。権力争いなのか内乱なのか分かりませんが」
コンスタリオも会話に加わり、コンスタリオ小隊の面々は益々今回の戦線の不自然さを深めていく。その会話はミーティングルームについてからも続くが、最終的に纏まった答えは出ず、魔人族内部が一枚岩ではないという認識が生まれただけにとどまった。
その日の夜、スターは椅子に座り、机で今回の一件の不自然さを洗い出していた
「魔人族も一枚岩ではないか・・・これでは・・・否、何を考えている。奴等は敵!!倒すべき・・・」
そう独り言を呟きながら書き出した紙を見つめるスター、その姿は何かを強く意識しているようにも見える。
同時刻、ルイナは自室において手元に謎の端末を握っていた。その端末から何かの音が聞こえると
「分かってる・・・」
とだけ呟き、その端末に目をやるのであった。
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