無知という咎
魔神族の攻撃により、シレットと分断されてしまったコンスタリオとモイスは止むを得ずその場から離れる事を優先し、ひとまず魔神族の追撃をかわす事には成功する。
「くっ、今の魔神族・・・明らかにこちらの動きを先読みして配置していましたね・・・一体どうやって・・・只でさえ例の情報漏洩以来情報関連のチェックは厳しくなっているのに・・・」
こちら側に来た兵士の一人が息をゼイゼイと息を絶やしながらそう発言する。それに対しモイスは
「ああ、全く以って分からねえ・・・どうしてここまで戦術を予測出来る。こちらの手の内を見透かしているとでも言うのか?」
と息を絶やしこそしていない物の兵士の疑問に同意する。
「常に先を読んで仕掛けてくる相手・・・まるでスターみたいな奴が魔神族側にも居るというの・・・でも、だとしたら何故今までそいつは動いて来なかったの・・・」
コンスタリオが思わず口にした内心の疑問、それを聞き逃さなかった兵士は
「そのスターというのは確か、ブエルスが陥落した際に・・・」
と思わず口走りかけるが周囲の視線を感じて口籠る。その様子を見たコンスタリオは
「・・・ええ」
と力無い返答を返し、その場に重い空気が立ち込める。ブエルス陥落以降、コンスタリオ小隊に対してスターの話は禁句となっていた。それによりその場の空気が常に悪い方向へと流れるからだ。今回もその例に漏れずその場の空気は重苦しい物となってしまう。少しの沈黙の後、コンスタリオが辛うじて口から
「・・・兎に角、今は当初の予定通り、山の頂上を確保しましょう。私達の方が目標地点には近いのだから」
と任務の継続を口にし、他の面々も無言で同意する。そうしなければその場の空気に耐えられそうになかったからだ。そして兵士達とモイス、コンスタリオは目的地店へと向かって移動し始める。だが目標まであと暫くと言える山の中腹に差し掛かったところでコンスタリオが皆の足を止める。
「どうしたんです?」
当然の疑問を兵士が口に出すとコンスタリオは
「そろそろ来る頃だとは思っていたわ。出てきなさい!!」
と大声を上げる。すると正面から
「あら、気付かれていたんですね」
という声と共に岬が現れる。




