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ある日。わたしたちは二人で庭園を散歩していた。
美しい配列の樹々と季節の花々。聖女と王族ぐらいしか立ち入れないこの庭園にはわたしたちの他に人影はない。
奥にある東屋みたいなところまでのんびり歩くつもりだったのだが、先客の気配に足を止めた。
あの子と顔を見合わせて頷くと、わたしたちはそっと木立に隠れて聞き耳を立てた。
声は、この国の王子と、もう一人は護衛らしき人だ。王子は声を荒げているけれど、もう一人の方は冷静だ。
「――聖女に求婚する? 何を言っているんだお前は」
「何をと言われてもそのままの意味だが。俺は彼女らを愛している」
「それは最初に召喚された聖女をか? それとももう一人か?」
「どちらもだ。当たり前だろう」
「意味が分からない。自分が何を言っているのか分かっているのか」
「お前たちこそなぜ分からない。リナとレナは同じ存在だ。二人で一つと言ってもいい。以前私達がリナ・レナと呼んでいた人物はその内の半分でしかなかった」
「……正気で言っているのか、レガード」
「ああ。全くもって正気だ」
歓喜で、震えた。
わたしたちをわたしたちとして愛してくれる人がいるなんて知らなかった。だってそんなの有り得ないと思っていた。
隣を見れば、あの子も同じように瞳をきらめかせている。わたしと目が合って、幸せな気持ちがいっぱいで頷きあった。
あの人。あの人は確か、王子の幼馴染で護衛騎士をやっている人だ。名前はレガード。
この日、わたしたちは同時に同じ人に恋に落ちたのだ。わたしたちを、二人とも愛していると言ってくれるあの人に。




