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「――こんなところにいたの」
ひと月ぶりにわたしの顔を見て。あの子はそう言って泣きそうな顔で笑った。
きっとわたしも同じ顔をしているのだろう。
「久しぶりね」
「ええ、やっと会えた」
「たくさん、探したのよ」
「ごめんなさい、突然いなくなって」
愛しい半身と抱き合って、わたしたちは泣きながら笑った。
腕を回した体が細い。このひと月の間にお互いとてもやつれてしまったみたいだ。
ああ。お互いがいなかったこのひと月は、どんなに長かったことか。
「――聖女様。リナ・レナ様」
そこに再会を邪魔する無粋な声。聖宮で一番位の高い初老の男だった。
「リナ・レナ様。お身内の方のお部屋が用意できております」
「その呼び方はもうやめて。わたしはもうリナ・レナではないの。それから、部屋は同じでいいと言ったでしょう」
あの子が不思議そうにわたしを見る。
リナ・レナというはあの子がいなかった間の、この世界でのわたしの名前だ。
この世界に来たとき、名前は何、と訊かれてひどく戸惑った。理奈と名乗るべきか。それとも怜奈と。それはどちらも本当で、どちらも間違いだ。理奈と怜奈はわたしたち二人の名前であって、二人を区別するためのものではない。
わたしはあの子にこの世界のことを話した。ひと月前、この世界に呼び込まれたこと。聖女と呼ばれていること。その役割のこと。召喚術のこと。
あの子は一言、そうなの、とだけ言った。そして安堵したように、またわたしの体に腕を回した。




