○5
ひと月が経った。あの子はまだ見つからない。
一人きりになったわたしは寝る間も食べる間も惜しんであの子を探し回った。
だけど大学の単位を落とすわけにもいかないから、出欠の確認が甘い講義では代返を頼んで、今のところは何とか理奈と怜奈二人分をこなしている。
最近わたしがずっと一人でいるのを見て、もう一人はどうしたの、と声を掛けてくる友人もいる。わたしたちの入れ替わりには気付かなくても、一人二役を演じていれば流石に人数が足りないことに気付くのだろう。
だけど友人たちの誰もあの子がどこに行ったか知らないらしい。それもそうか。わたしが知らないものをあの子たちが知っているはずがない。
事故にあったのだろうかとか。もうこの世にいないのではないか、とか。そんなことを考えなかったことがないわけではない。
だけどあの子はいる。きっといる。絶対に、どこかにいる。
その日。
一人きりのアパートに戻って、玄関のドアを開けると、目の前に真っ黒の穴が広がっていた。
何かを考える前に感じ取ったのは、その向こうに微かに感じるあの子の気配。
「……そこにいるのね?」
わたしは躊躇いなく、穴に向かって手を伸ばした。
続きは明日の朝7時に更新です。




