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──聖女様、なんですって。このわたしが。
三百年に一度、聖宮で守る水晶に力を込めるためだけに呼ばれる、異世界の乙女。
馬鹿じゃないの。そんなことのためにわたしをあの世界から引き離したの。そんなことだけのために、わたしとあの子を引き離したの。――馬鹿じゃないの!
ああ、憎い、憎い。ここの人たちが、ここの世界のものが全て憎い。感情のままに泣き叫んで当たり散らして、全てぶつけてやりたい。
だけど、やらない。だってそんなことをしたってあの子に会えるわけではないのだもの。
そんなことより、わたしにはしないといけないことがある。
この世界から向こうに帰ることができないというのならば、何としてでもあの子をこちらに呼び寄せないと。早く、できるだけ早く。
そのためには聖宮に取り入って召喚術について教えてもらわないと。そのためには、わたしは聖女とやらの役割をちゃんと果たしてあげないと。
わたしはまだ何が起こっているか分かっているからいい方だ。だけどあの子は、向こうに一人残されたあの子は、何も知らずにわたしを探し回っているはず。
わたしの血に共鳴させてあの子を探し、世界を繋ぐ穴を開く。かつてわたしも引きずり込まれた黒い穴は、こちらから手を伸ばしても弁に遮られるみたいに届かない。だけどあの子があちらからこの穴に触れてくれればこちらに来れるはず。
わたしは聖宮に閉じこもって来る日も来る日も試行を続けた。
寝食も忘れがちになるわたしを心配してか、聖宮の役人や騎士や王子までもが暇を見つけてはやって来る。
無理をするな。ちゃんと飯を食え。少しは寝ろ。
ああ。うるさい、うるさい。わたしはそれよりも、早くあの子に会いたいのだ。




