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ふたりは顔はそっくりなのに中身は正反対だね。
そう言われる度にわたしたちはにっこり同じ顔で笑ってやって、だけど内心でほくそ笑む。
だって何も分かっていないんだもの。
わたしたちはひとつの命をふたつに割って生まれてきた。全てを半分こして生まれた、全く同じな二人。
わたしたちが二人別々いるとき、あなたたちは一度だってわたしたちのことを確信をもって呼ぶことができないでしょう?
明るく元気な「理奈」と内気でおとなしい「怜奈」。わたしたちが意図的につくり出した二つの性格。人に見せるためだけの、性格。
「明日はわたしが理奈の方ね」
「そうね。明日はわたしが怜奈ね」
わたしたちはくすくすと笑って顔を見合わせた。
毎日毎日、わたしたちはお互い入れ替わる。今日はわたしが怜奈、あの子が理奈。明日はその逆。ずっとずっとそうしてきた。
生まれたときにどっちがどっちの名前だったかなんて、そんなのとうの昔に忘れてしまったわ。