Speculum-偶像の妖姫-
久々に短編書いてみました(連載については御容赦とお情けを…(泣))、芸能界だのアイドルだのあまり私らしくないものを題材にしてみましたが最後まで楽しんでいってください
※尚、下品な表現も多々見られますので閲覧の際にはお気をつけて…(汗)
-『アイドル』…それは人々に夢と希望を与える存在
-時には歌で、時にはダンスで、時にはビジュアルで…様々な方面で活躍するしている
-アイドル達は今日も厳しいレッスンや営業、そして芸能界という名の荒波に飲まれることに勤しむのだった
-此処は天凶原プロ事務所、様々な方面で現在活躍している人気アイドル達を数多く世に送り出していることで有名な芸能プロダクション…
-だが、此処には『人間』のアイドルは誰一人いない、というか人間のアイドル(そんなもの)を求めようなど今の世の中では無理、というか『不可能』な話である
-何故ならば、この世界では人間の…全世界の『女性のみ』に悲劇が起きたからだ
-その悲劇とは…突如起きた原因不明の謎の『退化現象』により…
『ウホッ』
-『ゴリラ』と化してしまったのだ
-もう一度言おう
『ウホッ』
-ゴリラになったのだ…例えでもなんでもなく、本物のゴリラである、『ウホウホ』鳴きながら胸を叩いたり(『ドラミング』という行為)、バナナ食ったり、ウ○コ投げつけてきたり…
-子供だろうが大人だろうが老人だろうが美人だろうがブスだろうが女性は容赦・差別一切無く全員、身も心もゴリラになったのだ
-世の男共はこんな目を背けたくなる様な悪夢の現象と夢ではなく現実という名の絶望に吐き気を催し、ありとあらゆる家庭は崩壊、夫婦の離婚は当たり前、産まれてきた子供が女の子だった場合はそこらに捨てまくり、結果…世界のあちこちで野良ゴリラがウロウロしまくるという異常な光景を目の当たりにするのが当たり前な世界と化した
-この退化現象により最も深刻なダメージを喰らったのは芸能界である、女性が全員ゴリラになったのだから当然ながら女性アイドルもみんなゴリラ、ゴリラ・ゴリラ・ゴリゴリラ
-ゴリラの歌やダンスなど誰が見たいか、人気はガタ落ちになり多くの芸能事務所は潰れてしまい、関係者(主に男性の経営者やプロデューサーなど)は路頭に迷ってホームレスになるのはまだいい方で最悪の場合…現実逃避の意味で諦めて自殺したりしてるのが現状…まさに『アイドルは衰退しました』状態だ
-だが此処、天凶原プロだけは違った…とある『独自のルート』から『人間ではない』が『ゴリラでもない』本物の逸材達を大勢引き入れたことによる、若き社長・天凶原零時は彼女達の人気により今の芸能界では彼が絶対的な地位と権力を持った唯一の『王』として君臨しているのだ
-さて、本日は一般応募からの面接による新たなるアイドル(候補生)誕生の様子を皆様に御覧になって頂くとしよう…
-天凶原プロ・会議室(兼面接会場)
「ふむ…今回入る予定の新人は…三人か…少ないな」
「アンタがかなりの応募数を絞りに絞りまくった結果だろが」
「仕方あるまい、私の目にとまった人材がこれだけになったに過ぎん」
「うわー、さっすが芸能界の王様、すっげー偉そーな発言」
-眼には丸いサングラスをかけ、銀の髪をオールバックにした冷徹そうな印象を与えるスーツ姿の若い男…天凶原プロ社長・天凶原零時と口がかなり悪く軽薄そうな印象を与える派手な金髪が目立つ、だらしなく着崩したスーツ姿の青年…天凶原プロ所属プロデューサー・比良坂逢真はこれから面接する三人の一般応募者の資料を眺めていた
-実を言うと本当は数百人ものの応募があったが、大半が零時の感性にピンと来た者がほとんどおらず、選別という名のふるいにかけにかけられた結果…面接にまでこぎつけられたのがたった三人以外全員不合格になってしまった、それだけこの事務所でアイドルになるのが厳しいという事なのだ
「そろそろ時間だな、まず一人目…入ってくれたまえ」
「…………………はい」
(返事遅っ!てか怖っ!?)
-零時は嫌味なまでに高級そうな自分の腕時計を見て、早速面接を始めた…入室してきた面接者の返事が何故か異様に遅く、しかも声が低過ぎて恐ろしいナニカにしか聞こえなかったが気にしてはならない
「さて、まずは名前から聞こうか…」
「…龍崎瑠衣」
(だから怖っ…って眼が死んでるーーーッ!?なにこの娘!?なんで眼が死んでるの!?ねぇ!なんで!?なんでなの!?何があったの!?)
-零時に名を尋ねられた赤がかった桃色のショートヘアの髪全体に無造作にヘアピンを付け、生きてるやら死んでるやら解らない…例えるならば、汚染されたドブ川で白い腹を見せてプカプカ浮かんでる系の魚の様に濁った眼をした少女は龍崎瑠衣…そう名乗った、異様に低い感情のカケラも無い声で…そんな彼女に逢真はとにかく心の中でツッコミまくった
「『種族』は?」
「…ワイバーン」
-零時が人間の面接では絶対にまず聞かれないだろう質問を瑠衣にした途端、彼女の腕が突如コウモリの羽根みたいなものと一体化した様な形へ変化し、さらには瑠衣から長い緑色のトカゲみたいな尾が生えた…
-そう彼女は…いや、彼女だけではなく、この天凶原プロに所属しているアイドル全員が人間ではない…
-彼女達の正体は人間が『地獄』『魔界』『冥府』『黄泉』…などと呼ぶ人間の世界とは別の次元に存在する異世界『ヘルブラッディア』からやって来た、この世に破壊と殺戮をもたらすと云われている伝説の魔獣達なのだ、瑠衣もそんな魔獣の一人・飛龍である
-ちなみに何故彼女達ヘルブラッディアの住人が人間の世界でアイドルとして活躍してるかというと、数年前…零時が偶然にもヘルブラッディアへと繋がる異空間の門・ヘルズゲートを発見したことにより、退化して見た目も中身もゴリラになった使い物にならん人間のアイドルとは違い、翼やら尻尾やら生えたり、下半身が魚やら蛇やら…とにかく人間離れした外見という点を除けば妖しくも美しい容姿の魔獣の女性達と巡り会えたのだ
-廃れゆく芸能界に絶望し、一時期自殺を考えていた零時は最後の望みを彼女達に託す意味でプライドというプライドを全て捨て、M字開脚・全裸土下座・裸阿波踊りなど屈辱に塗れた行為を経た交渉に交渉を重ねて渋る彼女達をスカウトした…
-その結果、全員がデビューしたばかりの全くの無名の新人アイドルにも、見た目人間じゃないにも関わらず、ゴリラのせいで夢もクソも失くなった男達からの人気が爆発的に急上昇…そう、異形の姿を持ち、本来ならば人々から忌み嫌われているハズの存在であるヘルブラッディア出身の彼女達は人間界で見事に一アイドルとして受け入れられたのだ
-最初こそは『人間の世界でアイドルだなんて馬鹿馬鹿しい』『どうせ無理だろう』…と思ってたヘルブラッディアの住人達…だが、テレビやネットなどの情報媒体にて、マンドレイクで構成された『SCREAMING』、セイレーンの歌手・海鳥セレナ(うみどり・セレナ)など、様々なアイドルが世に輩出され、天凶原プロは一躍有名となり大成功をおさめたと知るや否や、他の住人達もそれに触発され、次々と人間界の天凶原プロへ応募書類や自己アピール用に作成したPR映像のDVDなどをそれこそ百…下手したら千はいくだろう、とにかく嫌がらせの如く大量に送りつけては異色の芸能界デビューを目指すのであった
-さて、話を戻そう…瑠衣の異形としての姿を見て零時はサングラスをかけ直す仕種をしながら感想を一言述べた
「ワイバーンか…実に自信に満ち溢れたいい眼をしてる、流石龍族だな…」
(龍っていうよりも死人だよね?不死族だよね!?この娘の眼ッ!!アンタの眼も節穴か!?)
「…友達からよく言われます」
(お友達も節・穴!!その虚空しか…否!それすら見つめてないような眼のどこに魅力が!?虚無感しか感じられないってばよッ!?何も無い!無だッ!空だッ!パァだッ!!)
-…どうやら零時は節穴とかそんなレベルではない視覚レベルの持ち主の様だ、死人みたいな生気の無い虚ろな眼の瑠衣のどこをどう見たらそんな言葉が出てくるのだろうか、とにかく逢真のツッコミが止まらなくなるくらいの零時と瑠衣のボケまくりな面接はまだまだ続く…
「志望動機は?」
「チッ…えーっと…この事務所の海鳥セレナに憧れていまして…彼女みたいなアイドルになりたいなと思って…?」
(おいコラァアアアアアアアアア!!今、面倒臭そうな顔で舌打ちしたよな?そして志望動機、此処に来るまで何も考えてなかったな!?ソレ、明らかに社長サンに聞かれてから適当に考えただろッ!最後が疑問形だし!なぁ!オイ!?)
「君のアピールポイント…例えば自慢出来る特技などはなんだね?」
「…あー?そうですね…まず握力ですね、人間の頭くらいなら片手で簡単に握り潰して脳漿撒き散らせますし…」
「素晴らしい」
「あ、私の吐く炎は鋼鉄をもドロドロに溶かせますよ?」
「アイドルの鑑だ」
(いてたまるか!ンなアイドル!!)
-…零時と瑠衣のふざけたやり取りを傍で見てる逢真のストレスがマッハで加速しているのは言うまでもない…こうして一人目の面接が終了した
「これにて終了だ、龍崎君は退室して構わんよ…次、入ってくれたまえ」
「…はい」
「失礼します」
-退室した瑠衣と入れ替わるかのように続けて入室してきた二人目の面接者は静かながらも意志の強そうな吊り目の瞳、レモンイエローの髪をショートボブにし、上はタンクトップ、下は短く切り落としたカットジーンズで生足を惜しみ無く見せている少女だった
「名前は?」
「鎌立風吹といいます」
「種族は?」
「はい、鎌鼬です」
-少女は鎌立風吹と名乗った次の瞬間、頭に小さな動物の耳が飛び出し、両腕が鋭い鎌に変化し、腰から先端部分が鎌になった尻尾が生えた…どうやら彼女は東洋の妖怪・鎌鼬のようだ
(見た目はともかく…中身は割とまともそうだ…)
-…しかし、外見はともかく先程の無礼者(瑠衣)とは違い、礼儀正しく、かつ、静かながらもハキハキとした声で風吹は受け答えしてるため、逢真はホッと胸を撫で下ろした…だが、またもや…
「志望動機は?」
「Money」
「Whats?」
「聞こえなかったんですか?お金ですよ、お金…アイドルはお金になりますからねぇ」
「カネ!?」
-なんと…志望動機は『金』、恐ろしく俗過ぎる理由に逢真は素っ頓狂な声を上げて驚いた
「…本当に君は、金だけが目的でアイドルになりたいのかね…?」
「同情するなら…お金下さい」
「…もしかして何か事情が…?」
-零時が風吹のアイドルへの志望動機を聞き、その本位を改めて聞き出そうとしたが、突如…風吹の表情に影が…どうやら何かワケ有りの様だ、そう思われたが…
「いや、ぶっちゃけ手っ取り早くお金が欲しいだけで、アイドルはお金になりますし、CDとかが出れば豚野郎共がこの私のために金を貢いでくれますからねぇ〜…うふふふふふ」
「…」
(お前は金銭欲の化身かァアアアアアアアアッ!?ほら見ろ!社長サンが怒りでうち震えてるし!!)
-ンなワケが無かった、アイドル(志望者)のものとは到底思えない下心丸出しな言葉とドス黒い金への執着、さらにはデビューの暁には大切にすべき全てのファン達を馬鹿にしたような発言…そういう汚い部分を無修正で見せられたせいか零時は身体をワナワナと震わせていた、これには流石に零時もキレたか?
「…!!」
(怖かったんかい!?)
-否、零時は劇画調のほとんど真顔の状態で涙を滝の様にブワッと溢れさせていた…そして逢真は見た、零時の下半身にも汚い滝が流れ出し、生暖かい湯気が立ち込める…そりゃそうだ、泣きたくもなる程、風吹は酷過ぎたのだから
「あ、ちなみに私の特技は料理です…『殺す』的な意味で…ね?」
「…〜!!」
(脅すな!脅すな!って、よく見たら…興奮してんじゃねーよ!!Mか!?テメェはッ!!)
-風吹は黒い笑みを浮かべ、刃の如く冷たい声で囁きながら両腕の鎌を零時の首筋に当てて脅迫してきたのだ…『私を採用しないと殺す』、そんな意味合いが込められた目つきで睨みを効かせたせいか?零時は泣きながら下半身に汚いテントをおっ勃てていた、どうやら彼は風吹のドSな発言に感じてしまったらしい
-…最悪極まりない二人目の面接も終わり、いよいよ最後の三人目に取り掛かる…
「…先程は醜態を見せてすまないな、比良坂君…」
「あーそうですね…はいはい」
-先程の失禁&勃○という醜態を晒した結果、下半身がオムツのみという状態の変態セルフ赤ちゃんプレイをするハメになった零時に最早、逢真もツッコミに対して無気力になったか?完全に棒読みになっていた
「では次の面接者は入ってきたまえ」
「は〜い♪」
-零時の呼び出しに応じて現れた三人目はどこかおっとりしたニュアンスの明るい声と共に現れたのは澄み切った流水の如く流れる様な明るい蒼髪をポニーテールにし、青を基調にしたワンピース姿の少女が笑顔で入って来た
「名前は?」
「七海蒼です♪」
「種族は?」
「はい♪ウンディーネです♪」
-七海蒼と名乗った少女は可愛らしく自己紹介したと共に身体の所々から飛沫を上げ、腕や脚が水の様な液体状になる…彼女は火・水・風・土…自然の四大属性の力を司る精霊の内の一人・水の力を持つ水精霊だったようだ
「さて…七海君、君の志望動機は?」
「はい♪私、故郷の人達がみんなアイドルになって歌ったり踊ったり…そういうのを見ている内になんだか楽しそうだなと思いまして、ですから私も…そういった人達と一緒に人間の皆さんに喜んでくれるような素敵なアイドルになりたくて、此処に来ました♪」
-蒼は実に楽しそうに自分がアイドルを目指した理由を話し始める、それはさっきの欲望塗れな守銭奴(風吹)などと違い、本当に心の底から真剣にアイドルを目指そうという意志表示でもあった、だがしかし…逢真がいきなり立ち上がり、拳を机に叩き付けて激昂した
「いい加減にしろ!!もう騙されるもんか!!」
「え…?」
「ひ、比良坂君!?」
「どうせお前もあの二人と同じなんだろ!?ふざけやがって…!!」
「待ちたまえ!比良坂君!どこ…へ…って、それはッ!?」
「その化けの皮引っ剥がしてやる!!」
「!?」
-そう…瑠衣と風吹、この二人のせいで逢真は完全に人間…否、否人間不信に陥っていたのだ、蒼の語った事も全て演技か何かだと思った逢真は会議室から飛び出し…そしてすぐさままた戻って来た、ドス紫色の妖しい闇色の暗い輝きを放つ刀身をした一振りの大剣を抱えて…
「コイツは『暗黒聖剣』…本来ならば天凶原プロ(ウチ)のアイドル達が万が一暴走など取り返しがつかない問題を起こした際の鎮圧用の武器、だがそんなもん関係無ェ!!お前なんか信じられるか!ブチ殺してやる!!この化け物ッ!!」
「そ…そんな…ひどっ…ひどい…私は本当にっ…!う…うえぇえ…」
「…比良坂ァアアアアアアア!!彼女になんてことを!!」
「ハンッ!!下手な嘘泣きなんかしやがって!!このアマ!!ついでに馬鹿社長!!今此処でテメェも殺してやる!そしてこのオレ様が新社長になってやる!!ヒャーハッハッハッハー!!」
「ふざけるな!誰が貴様みたいな一介のプロデューサー如きに私の城(天凶原プロ)をやるものか!!」
-アイドル達は本来ならば決して人と相容れられない関係の魔獣…だからこそ緊急事態用に零時が彼女達といつでも対等に渡り合えるようにとヘルブラッディアから仕入れてきた魔界製の金属で造られた武器『暗黒聖剣』…それが今は事もあろうに乱心し、純粋にアイドルを目指す蒼の想いを侮辱し、しかも零時を抹殺しての下剋上宣言までしてきた逢真の手により振るわれようとした…
-…しかしその刃は二人には届かなかった…
「すいませーん、プロデューサー…今日の番組の打ち合わせを…」
「」
「あ…しまった…やっちゃった…」
-今日が自分のプロデューサーも出張る面接だというのも忘れて一人のアイドル…蛇女の歌手・蛇島カナン(へびじま・カナン)が逢真に予定について聞きに来たのか?突如、乱入してきたのだ、その結果…彼女の持つ見る者全てを永久に石に変えてしまう邪眼をモロに見てしまった逢真は生きたままの状態で石像と化してしまったのだ、尚、零時はサングラスをしていたため、蒼はヘルブラッディアの住人故に邪眼が効かなかったため助かったのだ
「あはははは…私、お邪魔だったかな?こりゃ失敬、それじゃ…」
-全くの偶然ながらも結果的に蒼と零時を助けるというファインプレーをしたカナンは自分のやらかした事が事なので冷や汗をダラダラ流し、逃げる様にその場から立ち去ってしまった…
「…すまない、七海君…!」
「社長さん…!?あ…あの、そんな…頭を上げてください!」
-カナンが部屋から去った後、零時はその場で跪き、床に額を擦りつけながら、綺麗な角度での土下座をし、蒼に謝罪をしたのだ、芸能事務所の社長、芸能界の王者という身分ながら一アイドル志望者に過ぎない彼女に向かって土下座なんかおっ始めたため、蒼は困惑してやめるように言ったが零時は一向に頭を上げない
「私はあんな…君に…いや、君達に対して偏見や差別を抱いている者を部下に持った事が恥ずかしい、そして奴の本心を見抜け無かった私自身の責任でもある…本当に申し訳ない…!!」
「社長さん…」
-零時は逢真の暴走を事前に止められなかった事を後悔しながら、ただでさえ下げてる頭をさらに深々と下げひたすら蒼に謝った…尚、断っておくが逢真は瑠衣と風吹が来るまではヘルブラッディアの住民に対しての偏見も差別はカケラも持ってなかったが、出会いの悪さが彼の心をここまで追い詰めてただけに過ぎないのだ、その責任は最低な二人を採用しようと考えた零時にあるのは間違いない、さらに言えば未だにオムツ着用で謝る零時の方が違う意味で恥ずかしかった
「…社長さん、私…わかっています…」
「…」
「私達は本当なら人間の皆さんから嫌われ、恐れられるハズの存在なんです…確かに今の人間界の世の中ならこんな醜い姿の…異形に過ぎない私達でも受け入れてくれる人はいます…けど、さっきの人みたいに少なからず居るみたいです、拒絶し、忌み嫌う人が…」
-蒼は…いや、彼女だけではない、他のアイドル達も知っている、人間というイキモノは異端に対してはどこまでも残酷になれるということを、受け入れているのは彼女達の容姿が人間の女よりもまともだからという薄っぺらで表面的な理由だけ、ひどいものになると単なる性欲のはけ口にしか見てないのだ、でも本当の意味で受け入れている人間もいることは確かだ…現に今この場に一人居る
「君の言うことは最もだ…比良坂の件で私に対して不信感を抱いたならば、採用にするつもりだったがアイドルになることに関して強要はしない…」
-そう、零時だ…人間の女がゴリラ化したために迎えた『アイドル氷河時代』の煽りを食らってドン底のさらにドン底を見て、『死』の一文字が頭に常に過ぎっていた時に『奇跡の出会い』を果たした、だからこそ今の彼が居るのだ
「しかし、信じて欲しい…決して君達を…私を絶望の淵から救ってくれたきっかけをくれた君達を傷つけるようなことはしない…」
「しゃ…社長さん…ありがとうございます」
-零時が蒼の手を取り、そんな何かこう誤解を生みそうな優しい言葉を語りかけたせいか、そんな零時の心情を読み取った蒼は涙をポロポロ流しながら笑顔で応えたという…
((何…この茶番劇は…???))
-…面接結果が気になり、戻って来た瑠衣と風吹の存在にまるで気づかずに…そして何より二人の発言は全くその通りである
-数日後…丑三刻テレビのスタジオにて
「…さて続きましては、というか続くしかないんですけど芸能界屈指のトップを突っ走る天凶原プロが生んだ新たなアイドルユニット!そのメンバーを御紹介致しましょう!」
「「「わぁああああああああああああああああ!!」」」
-司会者の台詞と同時に観客席にいる八百万の観客達の期待が大歓声となって一気に返ってくる中、現れたのは芸能界のトップを独走しまくる天凶原プロが新たに輩出した『三人』のアイドル…
「皆さーん!!こんにちはー!!私は今日からデビューしました!ワイバーンの龍崎瑠衣でーす!!」
「「「おおぉおおおおおおおぉお!!」」」
-一人目は龍崎瑠衣、本来のワイバーンとしての姿+ピンクを基調としたフリフリの衣装に身を包んだその彼女の目は面接の時とは打って変わってキラキラと眩しい輝きが宿り、声もハッキリした大きな、それでいて可愛らしいものになっていた
(あー…クソ怠ィ、このキャラで通すのマジ面倒臭いっての…)
-…かの様に思われていたが、どうやら本番の時だけキャラ作ってるようだ
「はじめまして皆さん…鎌鼬の鎌立風吹です…」
「「「うぉおおおおお!!」」」
「「「ブヒィイイイ!!」」」
「「「踏んでくれー!!」」」
-二人目は鎌立風吹、やはり彼女も元の姿+黄色を基調にした動き易さ重視の衣装姿でクールかつ丁寧に頭を下げると同時に歓声に紛れて風吹の秘められたS気質に感づいた一部のM共の豚みたいな鳴き声や変態な要望まで聴こえてきた…多分気のせいだろう
(私に馬鹿なみんなのお金を分けてくれー、むふふ…)
-…風吹も風吹で眼を完全に『¥(カネ)』になっていたが気にしてはならない
「皆さん♪私がユニットのリーダー・ウンディーネの七海蒼です♪私達の初のデビュー曲…最後まで是非楽しんでくださいね♪」
「「「おおおおおぁああああああああああ!!!」」」
-三人目はユニットのリーダーとなった七海蒼、やはり元の姿+青を基調とした大人っぽさをイメージしたドレス風のゆったりした衣装を纏い、心の中で暴言吐きまくりな汚い二人とは違って彼女だけは本当に観客達に対して最大の心からの笑顔で挨拶した
(見ていてください、社長さん…私達の初めてを…!!)
-全ては生まれて初めて出会った自分達に対して決して偏見や差別など持たず、むしろ人間を信じられる勇気をくれた零時のために蒼はマイクを手に取る…
「さあ、新ユニット『speculum』!新たなアイドル誕生の瞬間です!それでは歌ってもらいましょう!!」
-『鏡(speculum)』の如く色んな表情や表現を魅せるアイドル達の卵達…彼女達の不安と期待に満ちた夢はまだほんの序章に過ぎない…
本当は人外アイドル達が本性剥き出しで暴れ回る完全なギャグを書こうとしたら蒼を出した途端、いつの間にかエセシリアス?みたいな方向へ…あれー???
ちなみにタイトルならびに最後に出てきたアイドルユニットの名前『speculum』はラテン語の『鏡』の意味から取りました
以下、妄想という名の(汗)イメージCV
天凶原零時(イメージCV:寺島拓篤)
比良坂逢真(イメージCV:松野太紀)
七海蒼(イメージCV:水橋かおり)
鎌立風吹(イメージCV:徳井青空)
龍崎瑠衣(イメージCV:名塚佳織)
…とまあこんな感じです
それではまたどこかでお会いしましょう、槌鋸鮫でした!




