code 003:
それに仲村は結構まじめで、成績はむちゃくちゃいい。
普通に勉強していればダブることはないだろう。
そんな話をしていると、いつの間にか教室に着いていた俺たち。
「なんだ、これ」
「さ、さぁ?」
思わず入り口で入って固まってしまった。
情報セキュリティーの指定された集合場所に着いてみると、そこは、巨大な鉄の箱が幾重にも並べられた空間だった。
小さい動作部の音が重なりあい轟音を立てている。
そこから発せられる熱を冷ますために寒いぐらい冷房が効いている。
「何だこれ?」
もう一度同じ事をつぶやいて唖然とする俺。
「さ、寒い…」
寒そうに縮こまる仲村。
入り口に立っていたら邪魔になるので部屋の隅に寄ってちょっと待ってみる。
情報セキュリティーの生徒らしい人たちが次々と入ってくる。
その人たちはみな一様に寒そうだったけど……。
「やっぱ、ここで良いんだよな?」
「うん…」
とりあえず人が少し途切れたところで、皆の後ろをついて行ってみる。
「うわっ」
「すご…」
思わず二人で驚きの声をあげる。
そこにあったのは、ずらっと並んだデスクトップPCとディスプレイだった。
机が格子状に並んでざっと100台はある。
「さすが国立だけあって最新設備なんだな」
「お金のかけ方が違うね…」
二人でぼやきながら、目の前にある大型電子黒板に写されている座席票でそれぞれ自分の席を探して机へと向かった。
「私が君達のクラスを受け持つこととなった、水谷静恵です。これからよろしくね」
春なのに少々大げさなコートを着た女性が電子黒板の前であいさつと共に一礼する。
専門科目の授業はこの冷房がきついスパコン部屋で始まった。
正直、気温とのギャップがすごい。
席が前の方にいる仲村の方を見てみると若干震えているように見える。
……今度上着をここに持ってくるか。
そんなことを思いつつ先生の話を聞く。
「最初はこの部屋で授業をしますので寒さ対策は個人でしてください。
毎年上着も着ずに頑張っている生徒が若干名いるけどほぼ100%の確率でダウンしてるからそのへんは気をつけてね~」
防寒対策が必須の座学ってなんですか!?
たぶんそう思ったのは俺だけじゃないだろう。
「でも大丈夫、この人数をまとめて授業するにはこの部屋しかないから1学期はずっとここだけど、2学期からはグループに分かれて別の部屋で授業します」
教室から安堵の溜息がもれたのは気のせいじゃないだろう。
「何か質問ある人?」
シ~ンとして誰も手を上げない。
「それじゃあ、最初だからここの施設を説明してまわるわね。皆私についてきて」
そう言って先生が教室を出る。
それを追うように、みんな椅子から立ち上がり仲村と二人で行列の最後尾をついていく。
ちょっとマメ知識
皆さんパソコンを付けていると本体が熱くなるのはご存知ですよね?
これはパソコンが動くときに流れている電流の一部が熱エネルギーになって放出されているからなんです
スパコンも一緒なのですが数が多い上に密集して設置されています
そのため熱が篭りやすく高温になりやすいので、熱暴走を引き起こしやすくなります
そのような状態にさせないためにスパコンを置いてある部屋の空調を強くしているのです
入ったら上着を着ないと、きっと風邪を引いてしまいますね