白鷺 采奈と高田 絵理のやり取り。
高田 絵理には好きな人がいた。
それは幼馴染でイケメンで学校の人気者で、野球部のエースで四番の加藤 大和である。
しかし、大和には高校に入ってどうやら好きな人ができたみたいであった。
それは学校で高嶺の花と噂される超絶美少女の白鷺 采奈であった。
2年になって同じクラスになった白鷺 采奈はミステリアスな女子で常に一人で行動する孤高の美少女であった。
小柄で小顔、童顔ながら整った容姿、見た目は愛らしいが、纏うオーラが絶対零度――近寄りがたいものがあった。
正直、話しかけにくさマックスな美少女であったのだが、本日、絵理は意を決して話しかけに行くことにした。
なぜなら、白鷺 采奈は、別のクラスの秋月 緋真というぱっとしない男子生徒と付き合っているという噂の真相を確認するためであった。
もし、この噂が本当なら、幼馴染で想い人の大和の恋心は叶うことはなく、自分にもワンチャンあると思ったからである。
そう、傷心したところこそ恋愛では狙い目だと恋愛マスターがネットで言っていたからだ。
昼休み、一番前の窓際の席でぼーっと外を眺める、絵画のような美少女に気後れしつつも、絵理は意を決して近づいた。
「あ、あの……し、白鷺さん……ちょっと聞きたいことが……」
絶対零度――冷たい視線が絵理を貫いた。
そう、白鷺 采奈がこちらを見た。
ただそれだけで、絵理は人形のように固まり、黙り込んだ。
回れ右して帰りたい――そう思う絵理だった。
二人の間に長い沈黙が訪れ、耐えきれなくなった絵理が本当に回れ右と帰ろうとする。
「はぁ~、なにか御用ですか?」
帰ろうとしていた絵理がピタリと止まり、恐る恐るといった感じで采奈の方に向き直る。
采奈は無視していたわけではなく、「ちょっと聞きたいことが……」の続きを待っていただけだった。
人とのコミュニケーションをあまり取らない采奈にとって、その後に続く言葉を催促するという行為が思いつかなかったのである。
「そ、その聞きにくいんだけど……し、白鷺さんって……A組の秋月くんと付き合ってるの?」
「……は?」
采奈の絶対零度の不機嫌マックスの聞き返しに、絵理は慌てて首と両手をバタバタと左右に振る。
「そそそそそ、そうだよね! つ、付き合ってるわけないよね」
その一言で、采奈の機嫌が戻るのを確認し、ほっと一安心するも、やっぱり付き合ってなかったと、危機感を募らせる忙しない心情の絵理だった。
「そうですね……私は……その問いに、毎度必ずこう答えています……お付き合いはしていません……と」
それはそうだよね、と絵理は納得する。
正直、秋月 緋真というパッとしない男子生徒が目の前の超絶美少女と釣り合ってるとは思えなかった。
馬鹿なこと聞いて怒らせてしまったと心のなかで反省して、話を終わらせようとした絵理に対して、采奈は真顔でこう言い放った。
「なぜなら、緋真は私の夫ですから」
これに対して、絵理は「……え?」と言葉をこぼし、何を言っているのかわからないという状態に陥った。
「ご、ごめん……い、今なんて言ったのかな?」
「はぁ~」
「ごごごごご、ごめん! いちおう聞こえてはいたんだ! ちゃんと聞こえてはいたんだけど! 聞こえてはいたんだけど、念の為、確認のためにもう一回だけ言ってもらってもいいかな?」
あまりに整いすぎた采奈の顔で呆れられめちゃくちゃテンパる絵理なのである。
それはしょうがない。
だって、高校二年生である絵理からしたら同級生から聞くとは思えない言葉が出てきたのだから、念の為に確認しておきたいのである。
「緋真は私の夫ですよ」
「………………へぇ~、そ、そうなんだ~」
やっぱり、聞き間違いではなかったようで、これはなんの冗談なのだろうと虚無顔を浮かべる絵理なのである。
「たまに付き合ってるのと聞かれますが、私たちは夫婦なのですから、付き合ってはいないのは当たり前ですよね?」
「……えっと……」
そんな絵理の反応でなにかのスイッチが入ったのか、いきなり熱く語り始める采奈。
「そもそも夫婦に対して、お付き合いしていますか? って聞きますか? 聞きませんよね? つまり、私達の関係を聞く時は……夫婦ですか? が正しい……そうでしょう? それなのに、二人は付き合っているのか?とか、彼氏いるの?とか、失礼だと思いませんか? 思いますよね!!」
めっちゃ前のめりになって愚痴っている采奈に、呆気に取られるも、絵理は真っ当な疑問を投げかけた。
「……えっと、普通は高校生の男女に夫婦ですかとは聞かないと思うよ?」
その絵理の言葉を聞いて、采奈は落ち着きを取り戻したかのように静かになり、頬杖をついて黙ってそっぽを向いた。
「……あ……あの……」
「……まだ、何かようですか?」
采奈の冷たい視線が絵理に突き刺さる。
ビクッと怯える小動物系の美少女の絵理にため息がでる采奈なのである。
「要件があるならお早めにお願いします」
「そ、その……け、結婚は18歳からじゃなかったかな?」
「……そうですね……なので、正確には結婚(仮)で、夫婦(仮)が正しいですね」
そんなことが聞きたかったのかと、呆れている様子の采奈に対して、納得の行かない様子の絵理。
「あの……結婚(仮)なのはわかったけど……な、なんで秋月くんなのかな? しょ、正直、そ、そんなに……こう……なんというか……」
言葉をかなり濁す絵理だが、内心では、なぜ秋月 緋真なのだろうかという疑問でいっぱいだった。
「ほら、もっと、良さそうな人とかいるじゃん……秋月くんと同じクラスのやま……か、加藤 大和……くんとか?」
自分で何を言っているのだろうと、言ってから後悔するも、どうしても目の前の美少女が、秋月 緋真と結婚(仮)をしているのが信じられない絵理だった。
「誰ですか? その人?」
采奈のその一言で、絵理のスイッチが入った。
「はぁー! 大和知らないとか、白鷺さんは本当に女子高生というか同じ学校の生徒!? 大和といえば、野球部のエースで四番打者でイケメンで超超有名人じゃん! 二年で……いや、この学校で一番もてると言っても過言ではない男子だよ!!」
今度は絵理が饒舌に語りだし、静かに真正面から聞いていた采奈がどうでも良さそうに口を開く。
「はぁ~、緋真以外の男子は全員モブのような存在なので認識していなのですよね……それはすごい人なのですね」
「そう大和はすごいんだよ!」
「……あなた……その人のことが好きなんですね?」
絵理の時が止まる。
しばらくして、顔を茹でダコのように真赤にして右腕で顔を隠す。
「……………………はぁ~?だ、誰があんなやつ!ただの腐れ縁で幼馴染なだけだけど! さっきのも、私がじゃなくて、周りが言ってるだけだから! か、勘違いしないでよ!」
ツンデレよろしくとばかりに絵理がそうまくしたてるも、ふむふむと真顔で聞いていた采奈がこう問いかける。
「……つまり、好きなんですね?」
「……ち、違うから……幼馴染なだけだから」
「つまり……好き、ということですよね?」
「だ、だから……」
采奈に真顔でそう言われるも必死に否定する絵理。
「私も緋真とは幼馴染ですから……幼馴染とは結ばれるものですから……幼馴染というなら、その人のことが好きということなのでしょ?」
と、とんでもないことを言ってるこの人となる絵理だが、実際、大和のことが大大大大大大好きなのだから、反論の余地はなかった。
「私も緋真から幼稚園の時にプロポーズされました……結婚指輪までもらいましたよ」
首にぶら下げたチェーンを引っ張って、それについている結婚指輪を絵理に見せつける采奈。
なるほどと、納得した絵理だったが、先ほどとは打って変わって元気がない。
なんてことはない。
あんなパッとしない秋月 緋真と結婚(仮)をしたというこの目の前の美少女は、ただ、彼が幼馴染というだけなのだ。
幼馴染だから――それだけで好きなんだ。
呆れ果てる絵理。
「……幼馴染……ね」
采奈と緋真の関係は、絵理の逆鱗に触れた。
絵理にとって、大和は幼馴染だ。
幼い頃に結婚しようなんて言われたことも、当然あったし、自ら言ったこともあった。
(あいつはそんなことなんて覚えてもいない)
正直、不公平だとしか思えなかった。
目の前の相手は、なぜか幼稚園児の戯言のような言葉で結婚(仮)などとして、両想いで結ばれてる。
パッとしない秋月 緋真という男子生徒は幼馴染というだけで、こんな美少女と結婚している。
カッコカリだけど。
絵理は、大和が大好きだ。
采奈に言われるまでもなく幼馴染のことが好きなのだ。
だけど、幼馴染の大和は違う。
大和の好きな相手は目の前の美少女――白鷺 采奈だ。
納得がいかない絵理は、今まで采奈の纏う雰囲気に怖がっていたが、もう怖くはなかった。
だから、怒りで反論を口にした。
「あ、秋月くんは幼馴染なだけで、もっと、顔がかっこいい人とかいるじゃん? 大和もそうだし、白鷺さんに告白した男子の中にだってイケメンいっぱいいたじゃん!」
「あなたは顔で結婚相手を選ぶのですか? では、ひとつアドバイスしてあげますね。顔で結婚相手を選ぶとろくなことになりませんよ……遊び相手なら顔で付き合ってもいいでしょうが、長い時間一緒にいる人は相性で選んだ方がいいと思いますよ」
正論ぽいことを真正面から采奈に言われると、ぐうの音も出ないとばかりに黙ってしまう絵理だが、ここで負けるわけにはいかない。
「ほ、ほら、恋愛マスターとか名乗ってる人が言ってるじゃん……顔とか能力が優秀な人のほうが良いって……性格とかも……」
絵理のその話を聞いた瞬間鼻で笑う采奈なのである。
「そもそも、恋愛における好意と愛情は別物ですからね……正直、恋愛マスターとか言ってる人は全員ペテン師です……あいつらは人を愛したことがないので、話を聞くだけ無駄というものです……そもそも、恋愛マスターと言いながら交際が長く続いたことがない人ばかり……それにですね……最初に付き合った人と生涯を共にした人物と、交際人数百人超え、離婚歴は数知れず、などという自称恋愛マスター……どちらが本当の恋愛マスターだと思いますか? 私は残念ながら前者だと思いますが……」
どうやら、今度は采奈の逆鱗に触れてしまったようである。
またも、普段のシリアスでミステリアスな彼女とは別人のように饒舌に愚痴り始めた采奈。
散々、今まで恋愛マスターを自称するギャルやネットの人たちに煽り散らかされたことがあるのだろう。
しかし、絵理からすると采奈の意見のほうが納得ができてしまったようだ。
ぐうの音も出ない絵理は、露骨にぐぬぬぬぬという悔しそうな表情を浮かべていた。
「だいたい、恋愛マスターを自称する人物は……こういう男はダメと減点式なんですよ」
しかし、采奈の愚痴は止まらない。
「それがどうしてかわかりますか? 恋は減点式、愛は加点式だからです……愛を知らないから、常に減点式でしか採点できないのですよ……そんな人物の話を参考にしても無駄なだけですよ……まぁ、遊び相手を探すのならありだとは思いますよ……恋愛マスター(笑)の言うことを信じるというのも……」
普段はあまり喋らないクールな美少女采奈の饒舌に語りだした恋愛観を黙って聞く絵理なのである。
「すみません……話しすぎました……今のは聞かなかったことにしてください」
突如として正気に戻ったのか、少し顔を赤らめわざとらしく咳払いをして話を強制終了させる采奈は黙って俯いている絵理を見つめる。
「そもそも、あなたが言うとおり恋する相手なら緋真は絶対にないと言えます」
いきなり、肯定され驚きとともに顔を上げる絵理に話を続ける采奈。
「いい加減で適当でめんどくさがりやで、口だけは達者な人ですからね……単純に性格がひん曲がっていますし、何度言っても容姿に気を使わないですし……洋服なんて着れればいいと思っているような人ですよ?」
自分の旦那(仮)に対して、ボロカスに言う采奈に対して、ちょっと引いてしまう絵理なのである。
「でも、そういうところを含めて……私は緋真を愛しているんですよね」
いきなり聖母のような顔を浮かべ、微笑みながら優しい口調で惚気だす采奈に、一瞬見惚れる。
も、すぐにガクッと肩を落とす絵理。
なんだ惚気かと呆れてしまったのである。
「恋は自分のために、愛は相手のためにという言葉があります……が、あなたの幼馴染に対する想いは恋? それとも愛ですか?」
何かよくわからないことを言い出してるなこの人となる絵理なのである。
正直、なんか小っ恥ずかしいこと言ってるなぁと思いつつも、相手は既婚者(仮)なのである。
彼氏いない歴=年齢の絵理にとっては、分が悪い相手だ。
「あ……愛かな?」
とりあえず、律儀に答えてあげる絵理に対して、なるほどとなった采奈は間髪入れずこう言い放つ。
「じゃあ、今すぐ告白してきなさい」
「……は?」
さすがにこの采奈の傍若無人ぶりには、堪忍袋の緒が切れる絵理なのである。
「大和はね! あんたのことが好きなの! だから、今告白しても振られるだけなのよ!」
正直、言ってはいけないことを口走ってしまった絵理は、言い終わった後にハッとなり、口元を抑えていた。
「なるほど……つまり、あなた達の関係は、ただの幼少期からの知り合いということですね」
しかし、采奈から返ってきた返答はとんでもないもので、絵理の口から「へ?」という素っ頓狂な声が出る。
「だから、あなた達は幼馴染ではないということです」
この人は何を言っているのだろうと困惑し始める絵理だが、さすがに大和との関係を否定されては黙っているわけには行かない。
「私たちは幼馴染だから!」
「いえ、違います」
「違わなくないから!」
ムキになる絵理に対して、冷ややかな采奈は子供をあやすように語りかける。
「いいですか? 仲良くなくても、幼稚園から高校まで偶然にも一緒という人はいるでしょう?」
「……それは……いるかもね」
「つまり、あなたたちは、そういう関係ということです」
采奈から諭すように言われて、絵理は「幼馴染だから!」と間髪入れずに声を上げる。
すると、やれやれと言った感じになる采奈。
「あなたがそこまで幼馴染というのなら1万歩譲って幼馴染ということにしてあげます」
「譲られなくても幼馴染なんだけど!」
少し考え込む采奈は、良いことを思いついたとばかりに不機嫌そうな絵理に話しかける。
「つまり、言い換えるとあなたたちは真の幼馴染ではないということです」
「いや、幼馴染なんだけど! ていうか真の幼馴染って何!?」
「真の幼馴染とは真の幼馴染です……そもそも、真の幼馴染なら、もう付き合っていてもおかしくはありません……つまりあなたたちは、真の幼馴染ではないのでしょう」
「いや、幼馴染だって……家だって隣同士だし、親同士仲良しで……ち、小さい時からずっと一緒だし……」
「なんでそれで、まだ付き合っていないのですか?」
心底驚いたと言わんばかりの驚愕の表情を浮かべる采奈。
それはこっちが聞きたいとなる絵理なのだが、口には出さない。
「いいですか? そもそも幼馴染に負けヒロインなど存在しません」
「いやいや、結構居ると思うけど……幼馴染って巷じゃ負けヒロインって言われてるし……」
「それは幼馴染ではないからですね……幼馴染に負けはありません……もしも、付き合えなかったというのなら、それは幼馴染ではなく、ただの昔からの知り合い……幼馴染ではありません」
(わかった。こいつ……幼馴染過激派だー!)
すべてを理解し、内心で猛ツッコミを入れる絵理なのであった。
「つまり、あなた達は幼馴染ではなく、ただ小さい時からの知り合いということです」
バッサリ采奈にそう言い切られて、ぐぬぬぬぬと涙目になる絵理なのである。
「だって、家族ぐるみのお付き合いあるし、大和は朝弱いから毎朝起こしに行ってあげていて……お、お弁当だって毎日作ってあげてるし……や、野球部のマネージャーだってしてるんだよ!」
彼女の涙ぐましい甲斐甲斐しさを、ふーんという感じで聞いていた采奈は考え込む。
「なるほど、もしも、あなたの好きな相手が本物の幼馴染だというのなら、彼は……私の顔に惹かれているだけです……本能ではあなたのことが好きなはずです……いいですか……告白しなければ何事も先には進めません」
「で、でも、大和はたぶん、私のことただの幼馴染としか思ってないよ」
落ち込む絵理に今までの冷たい口調とは打って変わって、采奈は、彼女に対して優しい口調で語りかけ始める。
「いいですか? よく考えてください。あなたは、普段から、毎朝起こしてあげて、毎日お弁当を作ってあげて、マネージャーまでやってあげています……それはもう、夫婦と言っても差し支えないでしょう」
「……ふ、夫婦?」
いきなり話が飛躍し、驚く絵理だが、優しい口調で采奈に夫婦と断言されて、まんざらでもなさそうな表情を浮かべ始めた。
「いいですか? 幼馴染に負けヒロインはいません……というか、幼馴染なら夫婦になれるはずです……というより、もうあなた達の関係は夫婦と言えます」
「私たちが……夫婦?」
「そう、幼馴染なら最初から夫婦ですよ」
「で、でも……」
「もう一度考えてください。どこに毎朝起こしてあげて、毎日お弁当を作ってあげて、マネージャーまでやってあげてる人がいるんですか? 恋人でもそこまでしませんよ。これはもう夫婦の関係だとは思いませんか?」
「……た、たしかに……」
真正面から、目を見開き諭すように語りかける采奈に、頷く絵理。
「そ、そっかぁ……私たちって夫婦だったのかぁ」
「そうです。先程、あなたは彼との関係を頑なに幼馴染と言っていました……幼馴染は夫婦……つまりは、あなた達は夫婦なんです」
采奈の甘美な言葉に、眼がぐるぐるとなってくる絵理は、完全に洗脳状態といえた。
「そして……旦那とは、浮気をするものなんです」
「!?」
突然の采奈の発言に絵理はハッとなる。
「そう……あなたの幼馴染が私を好きだというのも浮ついた気の迷いに過ぎません」
「……そ、そうなの?」
「そうです……あとは、勇気を出して、彼があなたの旦那であることを、あなた自身が認識させるだけでいいんです」
「……そ、そっかぁ」
「幼馴染に負けヒロインなんていないのですから」
「幼馴染に負けヒロインはいない」
なんか、告白できそうな感じがしてきた絵理はやる気満々なご様子。
「あ……あと、最後にひとつ……もしも、そのなんとらかんとらさんが告白してきても、お断りしますのでご安心を……」
采奈にそう言われ、安心の絵理。
「不倫は犯罪ですしね」
そう可愛らしくジョークを言い放つ采奈に対して、スンとなる絵理。
「………………どうせ、する気もないくせに」
「当然です……わたしは緋真を愛していますからね……浮気はしませんし、させません」
自信満々にそう言い放つ采奈を数秒見つめて、絵理は完全に大和の彼女(妻)面を浮かべてこの場を後にした。
その後、絵理が采奈の洗脳が解けて、正気に戻ったのは次の授業が始まってのことだった。
浮気だろうとなんだろうと、結局、大和が采奈のことを好きなのは変わらないじゃんと気づく絵理は、次の授業中ずっと頭を抱えていた。
でも、白鷺 采奈ははっきりと告白は断るとも言っていたし、結婚(仮)をしているとも言っていた。
だから、大和と恋人同士になることはないだろう――それがわかっただけでも、彼女と話して良かったと心の底から思う絵理なのであった。
(まぁ、幼馴染は夫婦ではないんだけどね)
きちんとそこは理解して洗脳は完全に解かれていた絵理なのであった。




