27話 初志の道を⑤
敵地の中である以上、余計に時間を取られる訳にもいかない。
次の動きに警戒しながら、魔石から魔力を引き出す。
改めて標的を確認する。
大通りに居る自分から見て上、建物を高台とし見下ろされている形。
まずは大きく飛翔。見下ろすのは、こっち側がだ。
そして引き出した魔力を大量の刃に変え、短剣使いが居る一帯に掃射する。
だが、またも視界の端に見える遠い閃光。やっぱりここも狙撃の範囲内か。
かろうじて避けるが、状況次第では割り込まれると対応は無理だろう。
短剣使いの対応も確認できなかった。一先ず高度を落とし、直に殴り込む。
だが屋根への着地の直前、感じ取る接近の気配。
今度は浮かぶ盾を生成し防ぎ、反撃の爪の一振り。
しかし空振り。次に視認した時は、既に遠くに下がっていた。
今も高所に居るのに狙撃が来ないのは、相手が起動条件を全部知ってて回避してるのか、それともこの高度ならセーフなのか?
後者なら好都合。特大の剣を生成し、水平に一薙ぎ。
それを最小限のジャンプでかわした短剣使いが、ここで反撃の手。
投げられる短剣。予想外に一瞬対処を迷う。
しかし見るからに外れた軌道。やっぱり短剣使い自身の攻撃は、問題ではない。
斧使いが届かないこの場所で、仕留める。
と思い地を蹴った瞬間だった。
背後から爆発のような衝撃、瓦礫と破片の埃。
威力からして、恐らくあの狙撃。だけど起動条件は踏んでいないはず。
実は装置じゃなくて、狙撃兵がいた?
いや、あのナイフが装置を誘発させて狙撃を撃たせた?
だとしたら、あの高さでも狙撃を受ける可能性がある?
落下しながら、そんな思考が一気に回る。
けど分析は後だ。物陰から斧使いが来る。
だけど瓦礫の音で、音の判別がつかない。咄嗟に全方位のシールドを、硬度重視で張る。
伝わる衝撃、直後にシールドを解除して反撃の爪。
しかし既にそこに人影は無かった。感触からして結構重い斧なのに、どんな腕力してるんだ。
…短剣使いの姿も無い。追撃が来るはず、後ろか。
振りぬいた勢いを止めようとしたのを切り替え、勢いのままに背後も薙ぎ払う。
見えたのは茶色いローブ。爪に裂かれながらも、重力のままに落ち視界を覆う。
取っ払った後の見上げた先に、人影は無かった。
けど現出の輪越しに、爪の先で肉を裂いた感触は確かにあった。




