21話 針は示す①
宿に戻り、魔石の補充作業。
炎熱の腕輪の溝に溜まった黒い魔石を削り落とし、その破片をかき集める。
こんな破片を一気に溶かす使い方をしてるからか行動規模に関係無く毎回補充した黒い魔石を使い切っていて、既に消費量は全体の3分の1ほど。
とりあえずの目標としては下層の9地区を一通り回りきる事。残り3区画、そこまでの余裕はある。
けどその後に2周目だとか、脅威として在り続けるのはリミットとの闘いになる。
そんな考え事をしていた所に、ラディは帰ってきた。
「おかえり。
…鈍色仮面の事、何か変化があったのか?」
相変わらずの不安な様子の中に、少しの変化が見えた気がした。
「それが、英傑より先に、『赤霧の鎧』をどうにかしようってことになって。
だからこわい勢いはなくなって、どうやって『赤霧の鎧』をたおすか、ってなって、話し合いらしくはなりました。」
「なら、よかったじゃん。」
その対象が自分、という事は置いといて。
「でも、そのきっかけになったツァイシーさんが……。」
「ツァイシー…って前にここまで来たあいつか。」
「はい。
そのひとがラディの話もよく聞いてくれて、こわいふんいきにも気が乗らなかったひとで。
でも、そのツァイシーさんが『赤霧の鎧』におそわれて、無事ではいたのですが、危なかったそうで。」
…つまり、あの相手だった鈍色仮面がか。
余波がラディにも及ぶのは思考の片隅にはあったが、想定よりもかなり近い。




