愛の花の伝承
夢から目覚めた隼人は考えていた。
「愛ってなんだろ…」
愛の花を眺めながら呟く。
(岩崎に聞いてみるか。)
そう思い立った隼人は、用意をして、両親の昼食を作っていると、母親が起きてきた。
「あ、おはようございます」
「うん、おはよう。また遊びに行くの?」
「まぁ…はい」
「勉強もしなさいよ」
「あはは…してますよー…」
「そう、ならいいんだけど。」
「いつも通りお弁当を用意したので持っていって下さいねー!」
「いつもありがとう。」
春休みに入ってから、隼人は両親の昼食用の弁当を作っていた。
「じゃあ、いってきまーす!」
「気を付けてね」
―岩崎の家―
ピンポーン
隼人が岩崎の家のチャイムをならす。
「……はい…?」
少し機嫌の悪そうな岩崎が出てくる。
「あ゛?あっ!隼人くぅん!」
「お前マジで寝起き機嫌悪いな。」
「あはは…ごめんねぇ…。取り敢えず入ってぇ…」
岩崎の部屋にリビングに座る。
「てか、起きるの遅すぎだろ…」
「まぁねぇ、休みだし」
「春休み、生徒たちでさえ明後日で終わりだぞ…。仕事ないのか…?」
「先生皆仕事あるけど、僕は新学期の用意とかは早々に終わらせて、春休み結構有給取ったんだよねぇ…。けどねぇ、実はねぇ、今日でお休み最後なんだよぉ!寝かせてぇ…!」
「え…それはごめんだけど……」
「いや、もう、言わなくてもわかるよぉ!!昔の“夢”見たんでしょ?!なんかわかるよぉ?!」
「え、あ、そうだよ…」
「それで…?どうしたの…?」
「愛ってなんだろうなって思って…」
「そうだねぇ…取り敢えずなんだけど…今日隼人くん愛の花持ってるよね?」
「え、なんでわかるの…?」
「そりゃあ僕が作った物だからねぇ」
「愛に関係するものだし…ついでに聞こうかと…持ってきたんだけど…」
そう言いながら机の上にガラスドームを被せている1輪の花を出す。
「なんか…お洒落になってるぅ…ガラスドームなんか被せちゃって…雑に扱っても大丈夫なのに…」
「インテリアとして飾ってる」
「隼人くんおしゃれぇ…」
「いや、そんなんはどうでもいいんだよ。」
「そっかぁ。えーっと、取り敢えず1番最初、実はめちゃ説明省いててね?混乱しちゃうだろうしって感じで。」
「そうなのか。」
「そうそう。んでね、この花の詳しい説明をしたら、愛についてちょっと分かるかなって。」
「なるほど」
「じゃ、取り敢えずこの花の説明をさせてもらうね」
「ありがとう」
「まず、愛には種類があってね、“家族愛・ストルゲー”、“友情愛・フィリア”、“自己愛・フィラウティア”、“無償の愛・アガペー”まぁ、とりあえず、大事なのはこの4つ。他にもあるけどね」
「大体は何となく分かるけど…無性の愛ってなんだ?」
「僕も詳しくは分かんないけど…神様の与える見返りを求めない愛…だね」
「神様?」
「うーん…何かよくわかんないんだよねぇ…多分なんだけど…ほぼ例えてるだけで、神様ってとこは気にしなくていいかな。見返りを求めない普遍的な愛だよ。」
「なるほど…」
「それでこの花を使ってやりたいことがあってね、ちょっと失礼…」
岩崎が花に被せてあるガラスドームを外す。
「ガラスドーム被せてあっても大丈夫だと思うけど心配だから…」
「なんかごめん…」
「大丈夫大丈夫」
そう言いながら、岩崎は集中し始め、花に向かって呪文を唱え、魔法陣をかく。
そうすると、花の上に線で簡易的に描かれたような4つの花が出てきた。全て色が違い、黄色の花が光り、桃色の花が点滅していて、残り2つ、青色と緑色の花は暗い。
「色で一応色で分かるようになってるんだけど、光ってる黄色のやつがフィリア…友情愛で点滅してるピンク色のやつは家族愛…青色が自己愛…緑色が無償の愛だね…。光ってるのは今隼人くんがすでに手に入れたものってことだよ…」
「点滅してるのは曖昧だからってことか?」
「そうそう…」
岩崎が少しつらそうに言う。
「つらそうだな」
「そうだね…ちょっとこれ辞めさせてもらうね……ふぅ…」
線で描かれた花が一気に消える。
「これ何故かめっちゃ魔力と体力吸われるの…」
「ありがとうな」
「いやぁ、面と向かってお礼言われると照れちゃうな〜」
「きもいぞ」
「ひどぉい。まぁ、話をもどして…この花の咲く条件がね、前は簡単に話しちゃったんだけど…正確に言うとねさっき出したやつが全部光ると花も咲くんだよ。」
「それだと愛する人が死んだときに…って条件がよく分からないんだけど…」
「それはね、実は……僕も分かんない☆」
「はぁ??」
「ごめんごめん、多分、無償の愛の対象のことだと思うんだけど…どれかが埋まるより先にその対象が亡くなってしまったら…とか、そういう細かいとこは分かんないね…」
「てか、そもそもなんでこんな意味分かんねぇ花を作ったんだよ!!」
「理由は色々あるけど…」
「そもそも…なんでこんな花を作るための魔法があるんだ…必要ないだろ…」
「うーん…それは何か伝承があったなぁ…この花の魔法陣が描いてある本に書いてあったと思うんだけど…」
「その本はどこなんだ?」
「持ってくるからまってねぇ…」
そう言って魔導書などが置いてある部屋に入り数分で戻ってきた。
「これかな?多分」
異世界の言語で説明が書かれている本で、隼人はその本をペラペラめくる。
「これか?花の絵が描いてある。」
「これだね。次のページから伝承が書いてある。読むね」
「ありがとう。頼む」
「昔、とある人間の大魔法使いが居ました。
その魔法使いは悪魔と契約し、約二千年もの間生きていて、もうすぐ寿命が来ることが分かっていました。
ですが、1つ、心残りがありました。愛する人を見つけられなかったのです。
ずっと1人で、孤独で、そんな生活にも慣れたと思っていたものの、実際は寂しかったのです。
そんなときに突然神様からこの花と作るための魔法陣を貰いました。
そして、大魔法使いは色々な愛を求める人にこの花を作り、与え、大魔法使い自身も愛する人を見つけ天寿を全うしました。
ですが神様は1つ大事な事を伝え忘れていました。
“この花を作った者が亡くなるときにも、花は咲くのだと”
結局、多くの人が愛を見つけられず亡くなってしまったとさ。
おしまい……え、これ、作った人が亡くなったときも花咲くの…???」
「は?つまりお前が死ぬときも5日後に俺死ぬってことか?」
「そういう事だね…これ…大まかな説明書いてあるとこに書いてなかったと思うんだけど…」
「それは…お前長生きするだろうからあんま関係ないと思うけど…」
「確かに…でも…こんな花作らなければよかったぁ………」
「それはそうなんだよな…」
「でも、隼人くん…あの時、あの後、自殺でもしようとしてたでしょ…?」
「な、何で知ってんだよ……」
「僕、実はねあの時…隼人くんの心の声聞いてたんだよ…」
「…は?」
「人に迷惑かけたくない、自分が嫌だ、生きていたくないって、そんな心の声を聞いちゃったの。そんなんほっとけるわけないじゃん…だから、咄嗟に思いついたこの花を作ったんだよ。でも、それで逆に隼人くんに辛い思いをさせて本当に申し訳ない…」
「謝らないでくれよ…自分の事を思って行動してくれている奴を責めれるわけねぇだろ…」
「………」
「なぁ……お前…何か悩んでることあるか…?」
「……え??なんで?」




