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霊感ホスト

 がんがんと人工的なライトで辺りを照らし出すライトは、ただでさえ無駄に煌びやかな店内を派手な色に染め上げている。


 つやのある黒革のソファに、派手な格好をした自分の客――いい年していわゆる量産型と呼ばれるようなフリフリした格好に身を包んだ女である――と共に並んで座り、俺は周りを同僚のホストたちに取り囲まれながら、勝ち誇った《《ような》》笑みを浮かべてみせた。


 この客から高い酒の注文が入り、従業員がシャンパンコールのために集合しているのだ。


 シャンパンコール。つまりは、


 女と、高額注文をされたホストを持てはやすと同時に、

 ホストの他の客を煽るための儀式である。



「なんと! なんと! なんと!」

「素敵な!」「姫と!」「素敵な!」「王子の!」「なんと!」「テーブルより!」

「ドカンと一発!」「ドンペリニョン!」「いただきました!」

「ごちそうさま!」「ありがと!」「いただきます!」「ありがと!」



「それでは素敵な姫より一言!」

「レイヤのためならこのくらいなんのその♡ これからもよろしくよいちょ!」

「ヨイショォ〜!」



 ――そう、ここはホストクラブ。欲望うずまく夜の世界。

 

 闇の世界ゆえに――きらびやかで賑やかなその裏では、人には見えない汚いものもあるのである。







(いやまじで今回もきたね〜〜〜もん見た! 最悪なんですけど!)


 俺――レイヤはきらびやかな店内から一転、ホストクラブのバックヤードで死んだ顔になっていた。いや、自分では自分の顔など見えやしないのだが、死んだ顔になっていると確信できる。

 吐き気がこみ上げてきて、思わずうっぷと零しながら顔をおさえた。



(――あの女肩にやべえのつけてたァ!)



 そして。

 口には出せないので心の中で泣き叫んだ。


(サイズはちいせえけどなんなんあれ! なんかしゃべってたんですけど! 言葉の意味はわからんけど!)


 ――俺は先程のシャンパンコールを思い出す。

 俺ビジョンでは客の女性の肩に、蝿と蛾が一体化したかのような拳大の異形の怪物がいるように見えていた。


(最悪……何年経っても慣れるかあんなんクソが……)


 俺の名前はレイヤ。

 本名は畑中礼。

 ホストクラブ【AGELESS】のナンバーワンホストやってるが、昔から何故か霊感がある。




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