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⑦他言無用

「えっ…僕のいない間にそんなことがあったんですか!?」

マヤリィから天界を滅亡させた話を聞いたジェイは驚きの声を上げた。

「…ジェイ。大きな声を出すな。一応、このことは皆には伏せてある」

ルーリが落ち着いた声でジェイを制す。

「そうなの。天使(ティーメ)を配下にした手前、皆には言いづらくてね。…さて、どうしたものかしら」

躁状態から抜け出したマヤリィは真面目な顔をして腕を組む。

「…それにしても、よくそんなことが出来ましたね、姫。ようやく『宙色の魔力』の真価を発揮したというか…」

「ええ。桜色の都のドラゴンの集落も壊滅させたことだし、天使達も簡単に()れると思ったのよ」

マヤリィ様、やっぱり何か変わった…?

任務として行ったドラゴン討伐に対し、今回の一件は完全に私情によるものである。

「とにかく、さらなる犠牲者が出なくて何よりです。僕が貴女に『変化』して国王陛下の相手をした甲斐がありましたね」

もう一人の天使を迎え討つ為に、桜色の都での二日目の行程をジェイに任せたマヤリィ。

「そういえば、詳しい話を聞いていなかったわね。…どうだったの?」

「どうもこうもないですよ。…ヒカル王は完全に貴女に惚れてるみたいですね」

ジェイは呆れた顔で言う。

「これから風光明媚な場所に案内しましょうとか、もう少し都に留まって下さいとか、後半はそればっかりでした」

「…しかし、ヒカル王の気持ちは分からんでもない。マヤリィ様のような美しい御方を前にすれば、たとえ国王陛下であろうと公私混同したくもなるだろうよ」

ルーリは苦笑いしながら頷いた。

「流転の國の主様でなければ貴女に結婚を申し込むところでした…!だってさ、姫」

「私、王妃になる気はないわよ?」

「勿論です。面倒なので、『私には愛する男性がおります。わけあって今は離れ離れですが、私は彼の帰りを流転の國で待っているのです。いつかきっと再会出来ると信じています。ですから、私はそれまで主の座を退くわけにはいきませんわ』…って言っときました」

勝手に設定を追加するジェイ。

「微妙な言い訳ね。私の愛する男性は今目の前にいるというのに」

そう言うと、マヤリィはジェイにキスをした。

「よくやってくれたわ、ジェイ。ご褒美は何がいい?」

マヤリィ様、ここにはルーリもいますよ。

「僕を第2会議室に連れて行って下さい」

キリッとした顔で即答するジェイ。

その言葉にマヤリィは頷いて、

「分かったわ、ジェイ。今日の夜は貴方にあげましょう」

もう一度ジェイにキスをする。

「頑張った甲斐があった…!」

「よかったな、ジェイ」

「うん…!」

感極まってルーリに抱きつくジェイ。

「仕方のない奴め…」

ルーリはそう言いながら、ジェイを優しく抱きしめるのだった。

(ルーリ、美しいわね…。ジェイは、可愛い…)

珍しい絵面を前に、マヤリィは微笑んでいた。


「…というわけで、これからどうするかはまだ決めていないの。だから今の段階では他言無用よ。いいわね?」

「はっ!」

結局、天界を滅亡させた事実を告げられたのはルーリとジェイの二人だけ。

恐らく『他言無用』はいつまでも続くだろう。

「…では、私は一度自分の部屋に戻るわ。二人とも、後は自由時間にしなさいね」

「はっ!」

そして、二人は玉座の間に残された。

「…それにしても、ジェイは驚かないのか?」

「えっ?何を…?」

「新しく配下にしたティーメを除く全ての天使達をマヤリィ様が葬ったことだ」

最初こそ驚いていたが、すぐにそのことを受け入れたジェイを不思議に思っていたルーリ。

「…まぁ、仕方ないんじゃない?姫もそろそろ異世界転移の常識に慣れてもいい頃合いだよ」

異世界転移してチート級の魔力を手にした支配者は時々殺戮者になることがある。

「そうか。イセカイテンイ…が何かは分からないが、お前がそう言うなら安心だ。マヤリィ様が変わられたわけではなかったんだな」

ルーリはマヤリィが変わったのではなく環境が変わっただけだと解釈した。

…ちょっと違うけど。

「ところで、姫が新しく配下に加えたっていう天使について教えてよ。君、会っているんだろう?」

「ああ。名前をティーメと言ってな、身の程知らずの大馬鹿天使だ。無謀にもマヤリィ様に戦いを挑み簡単に拘束された挙句、殺せ殺せとうるさくてな…」

ルーリの話を聞いたジェイは苦笑しながら言った。

「つまり、姫はその後すぐ天界を滅ぼしたんだね?」

「そういうことだ」

「姫、途中まではいつものマヤリィ様だったのか…。その後何があったんだろう…」

二人で考えても答えは出なかった。

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