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流転の國 vol.6 〜天よりの侵入者〜  作者: 川口冬至夜


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⑳流転の國の最終日

流転の國の休日最終日。

「姫、大丈夫ですか…?」

「無理…。動けないわ…」

熱を出して寝込むマヤリィを心配そうに見守るジェイ。

今朝『念話』で呼ばれて部屋まで来てみたら、マヤリィは既にこの状態だった。

「何か欲しい物はありませんか?水とか…」

「今はいらない…。頭が痛くて起き上がれないの…」

「困りましたね、姫…。貴女のその症状、白魔術では治らないんでしょうか?」

「シロマの『宝玉』は試したけれど駄目だったわ。その後『宙色の魔力』で回復魔法を発動してみたら…魔力を消費したせいか余計ひどくなったのよ…」

マヤリィは苦しそうに状況を説明する。

「昨日は平気だったのに…。何がいけなかったのかしら…」

「昨日はどこで誰と何をしていたんですか?」

「ルーリとネクロと一緒にいたわ。場所は第7会議室よ…。ネクロの話を聞いていたの…」

なんか事情聴取みたいになってる。

「真夜中に水晶球の間でローブを外した状態で鎮魂の花を咲かせようとしていたらランジュが現れて襲われそうになったって言っていたわ…」

「どんな状況なんですか、それは」

全く話が掴めず、ジェイは混乱する。

しかし、今はネクロの話をしている場合ではない。

「どうしますか?貴女が少しでも楽になる方法があると良いんですけど…」

ジェイはとりあえず熱を下げようと、冷たいタオルを用意した。

「少しは効いてますか…?」

「…………」

マヤリィがさらに苦しそうな表情になったので、ジェイはその方法を諦めた。

「無理に熱を下げない方が良いってことですかね…?」

「そうかもしれないわね…」

「…僕、一度部屋に戻りましょうか。僕がここにいない方がゆっくり休めるかもしれませんし…」

すると、マヤリィは即座に否定した。

「いえ、そんなことないわ。ここにいて頂戴。どこにも行かないで」

うるんだ瞳でジェイを見つめる。

「分かりました。貴女の傍にいますよ。だから、そんな哀しそうな目をしないで下さい」

「ジェイ……」

マヤリィが布団から手を出すと、ジェイはその手を優しく握った。

(ルーリを呼んだ方がいいだろうか…。でも、この状態ではかえって姫の負担になるかもしれない…)

なんだかんだ言ってルーリもマヤリィの配下の一人なので、必要以上に心配する時がある。

それに、昨日会っていたと言うなら、自分のせいかもしれないと根拠のない罪悪感を抱くかもしれない。

(姫が会いたいと言うまではそっとしておこう…)

結局のところ、主と側近という立場を完全に超えられるのは『元の世界』で一緒だったジェイだけである。

ジェイならば白魔術の効かない体調不良に関しても理解出来るし、ある程度は対処も可能なはず…なのだが。

「…姫、さっきよりも熱が高くなっている気がします。やはり、先に熱を下げましょう」

「…………」

ジェイは再び解熱を試みるが、マヤリィは意識が朦朧としてきたようで返事も出来ない。

(思った以上にひどい状態だ…。どうしたら良い?どうしたら姫を楽にしてあげられる?…考えろ、ジェイ!)

マヤリィの意識は完全に途切れ、苦しそうな息遣いが続いている。

「姫…僕は結局、貴女の為に何もしてあげられないのでしょうか…」

手を握ったまま、ジェイは俯く。

「どうして貴女ばかりが苦しい思いをするのでしょう…。流転の國も…『元の世界』と変わらない。貴女を助けてはくれないんですね…」

ジェイがそう呟いた瞬間、驚くべきことが起こった。

マヤリィを大魔術師たらしめている『宙色の耳飾り』が忽然と姿を消したのだ。

「えっ…」

ジェイはすぐにそのことに気付くが、辺りを見回しても耳飾りはどこにもない。

同時に、マヤリィの魔力がなくなっていることに気付く。

「まさか…僕が『流転の國』を否定したから…?」

ジェイは自分が口にした言葉を思い出すが、全ては遅かった。

アイテムボックスを確認すると『流転の指環』もなくなっている。

「皆は今…どうしているんだろう…!?」

消えた魔力。

目覚めないマヤリィ。

現在の状況も掴めないまま、ジェイはその場で意識を失った。


『流転の國 vol.7』(仮題) に続きます…。

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