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流転の國 vol.6 〜天よりの侵入者〜  作者: 川口冬至夜


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10/20

⑩レイヴンズクロフト伯爵令嬢

なぜか今明かされるシャドーレのフルネーム。

「みどるねーむ…ってなんだ?(byルーリ)」

「ティーメが…死んだ…?」

ジェイも驚きを隠せずに言う。

「はっ。その書状によれば、魔術の実験中に起きた魔力事故とのことにございます…」

クラヴィスが説明している間も、マヤリィはそれを読み続ける。

「しかし、白魔術の実験中に事故なんて…有り得るのでしょうか…?」

「いえ、その部屋にいたのは白魔術科の学生だけではなかったようなのです」

シロマの問いにクラヴィスが答える。

「…確か、あの学校には黒魔術科も併設されておりましたわね?レベルは低いですが」

「はい。普段は別の棟で授業を行っていますが、放課後には行き来することもあるらしく、ティーメも学友に誘われて黒魔術科の実験室へ行ったとか。…って、シャドーレ様の卒業校は桜色の都最難関の王立魔術学校にございますよね?そちらと比べればどの学校もレベルは低いですよ」

一言多いシャドーレにクラヴィスは言う。

「そういえば、前に国王陛下から伺いました。優秀な黒魔術師を養成する王立魔術学校に特待生として入学し、常に成績は一位。伝説とも呼ばれる研究論文を残し、当然のように首席で卒業したシャドーレ・メアリー・レイヴンズクロフトとは、貴女様のことですよね?」

「っ…。なぜ、ヒカル様は私の学歴をご存知なのですか?私が魔術学校に通っていたのは十年以上前のことですのよ?」

「黒魔術師部隊『クロス』の紅一点にして才色兼備な副隊長。幼い頃からの憧れだったと国王陛下はおっしゃっていました」

桜色の都の英雄として、ヒカル王と直接話をする機会のあるクラヴィスは色々な話を聞かされたらしい。

っていうか、今話すことではないような…。

しかし、クラヴィスの話に反応した者がいた。

「シャドーレのフルネーム、初めて聞いたわ!ミノリはちゃんと覚えたわよ!!」

「今のお話、私も聞かせて頂きましたぞ。シャドーレ殿の経歴が光り輝いて見えますな…。機会があれば、ぜひその研究論文を読ませて下され」

ミノリとネクロが嬉しそうに話すのを見て、何も言えなくなったシャドーレとクラヴィス。

そこへ、シロマが遠慮がちに言う。

「あの…ご主人様のお手元のお手紙…私も拝見してよろしいでしょうか?」

クラヴィスのせいで皆シャドーレの話に夢中だったから、本題を完全に忘れていた。

「いいわよ。読んで頂戴」

マヤリィはシロマに書状を手渡すと、皆に説明する。

「やはり、原因は黒魔術の暴走だったみたいね。黒魔術科の学生が発動した魔術が不完全で、制御不能になってしまったらしいの。それに巻き込まれてティーメはほぼ即死。『シールド』を張る余裕もなかったのかしら…」

「畏れながら、ご主人様。ティーメは『シールド』を使えないのでは?白魔術以外のことは教わっていないと思いますし…」

シロマの言葉にマヤリィは素直に頷いた。

「そういえば、そうね。私も教えてないし『宝玉』も持たせていないわ」

つまり、ティーメは防御が出来ない状態で、至近距離から不完全な黒魔術を食らってしまったらしい。

「ティーメ殿がその場に居合わせたのは不運としか言いようがありませんな。その黒魔術科の学生が自分の力量に合った魔術の扱い方をしていれば、こんなことにはならなかったでしょう」

ネクロが残念そうに言う。

「ネクロ様のおっしゃる通りですわね。…元々、桜色の都には黒魔術を扱える者は多くないので、学生も少ないですが教師も不足している状況です。今でも、それは変わらないのですね…」

シャドーレも肩を落とす。自分が学生だった頃から魔力事故の話はたびたび耳にしていたが、まさかそれがティーメの身に降りかかるとは思ってもみなかった。

「これから…どうなさいますか?ご主人様」

ようやく落ち着きを取り戻したクラヴィスが主に訊ねる。

「貴方はティーメの上司として彼女を迎えに行きなさい。そして、私は貴方の主として同行するわ」

「はっ。畏まりました、ご主人様」

設定上、クラヴィスはティーメの上司。

書状もクラヴィス宛だったし、彼女を回収する際にはそこにいてもらわなければならない。

「クラヴィス、すぐに『転移』するわよ」

そう言って『長距離転移』の魔法陣を展開しようとするマヤリィを止めた者がいた。

「姫、待って下さい」

「どうしたの?ティーメを迎えに行くなら早い方が良いでしょう?」

「…その役目、僕に任せてくれませんか?」

「えっ…」

ジェイの思いがけない申し出に戸惑うマヤリィ。

「貴女は國を離れてはいけない。なんとなく、そんな感じがするんです。脅威は去りましたが、それでも貴女にはここに留まって欲しい」

マヤリィの不在時に起きた悲劇。ジェイはそれを思い出していた。

「……分かったわ」

たとえ短時間でも自分が國を離れれば、再びルーリに最高権力者代理という重責を背負わせることになる。それに、皆もあの時のことを思い出して不安がるかもしれない。ここはジェイの言葉に従った方が良いとマヤリィは判断した。

そして、有無を言わさぬ態度で彼に言う。

「ジェイ、貴方に全て任せるわ。それで…勿論『変化』はしてくれるのよね?」

ここに来てシャドーレのフルネームが判明しましたが、本筋とは全く関係ありません。


次回は再びマヤリィに『変化』したジェイがクラヴィスを連れて桜色の都を訪れます。


それにしても、皆ティーメの扱いが雑すぎる。

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