表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深海の巨獣  作者: 無名
3/3

第3話 沈黙の海に咆哮響く

怪獣が中国艦隊に向かって動き出した瞬間、海はまるで時が止まったかのような静寂に包まれた。だが次の瞬間、その巨体が引き起こした波が駆逐艦の船体を大きく揺らす。警告射撃に対する応答は、想像を絶する速さだった。


「接近してくる――!」


中国艦のブリッジに緊張が走った。だが、既に遅かった。怪獣の頭部が海面から完全に現れ、その口を大きく開いたかと思うと、鋭く湾曲した顎が水を切り裂き、駆逐艦の船首に喰らいついた。


鋼鉄の船体が紙のように裂ける。わずか数秒で、1隻が完全に沈黙した。


それが引き金だった。


「全艦、戦闘開始ッ!」


各国の艦隊が一斉に砲火を開く。ミサイルが唸りを上げて飛び、砲弾が海を割って怪獣へと降り注ぐ。夜の海が昼のように明るく照らされ、爆発と振動が連続して響き渡った。


だが、怪獣は怯まなかった。どんな兵器を受けても、その厚い鱗に弾かれ、傷一つ見えない。


「効いていない……」


艦橋の中で誰かがそう呟いた。


怪獣はまるで学ぶかのように動き、砲撃を避ける最短の軌道を取りながら、次々と艦船へ肉薄していく。そして、巨大な尾で叩き潰す。鋭い背骨のような構造が砲塔をなぎ払い、海を真紅に染めた。


日本の護衛艦、ロシアの巡洋艦、フランスのフリゲートが、次々に撃沈されていく。


「このままじゃ……全滅する!」


カーター博士は遠隔観測でその様子を見ながら、言葉を失っていた。これは単なる生物ではない――。攻撃を理解し、分析し、対応している。確かな知性と、意図がある。


やがて、残された艦艇が戦術的撤退を開始した頃、怪獣は深く沈み、再び海の底へと姿を消した。


まるで「これで終わりではない」と言わんばかりに。


そして人類はまだ、その意図を知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ