表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深海の巨獣  作者: 無名
2/3

第2話 深海からの影

超深海の未知の領域に足を踏み入れたカーター博士のチームは、再度アビス・ワーカーを使い、さらなる調査を行っていた。予期せぬ発見をしたあの日から数ヶ月。政府の指導のもと、超深海の探索は続けられ、次々と新たなデータが集められていた。しかし、どこかで起きるだろう危険を感じつつも、カーター博士は一歩踏み込んでいた。


その日の調査中、アビス・ワーカーが予想外の信号を捉えた。再度、巨大な生物の影が映し出されたのだ。今度は前回とは違い、敵対的な動きを見せるかのように、その影はアビス・ワーカーを追尾してきた。


「こちらチーム1、カーター博士、状況確認を…」

カーター博士は慌ててモニターを見つめる。アビス・ワーカーのセンサーが捉えたのは、今までの何倍も巨大な生物だった。確かに、前回の発見を超える、圧倒的な質量を持つ生物がこちらに向かってきていた。


「信号が強くなってきた!このままでは追いつかれる!」


すぐにアビス・ワーカーは急浮上を開始。目の前には、超深海の圧倒的な暗闇を突破してくる怪獣の姿が現れた。その姿はまさに圧倒的な力を持つ怪物で、前回確認されたものより数倍も大きく、鋭い鰭と装甲のような体表を持っていた。


「やばい、これは…」

カーター博士は恐怖を感じながらも必死に指示を出す。「浮上速度を上げろ!すぐに全員の退避を指示する!」


だが、既にアビス・ワーカーは追い詰められ、進行方向に巨大な影が迫っていた。次第に海面までの距離が縮まり、やがて海上に浮上したその瞬間、無数の艦船が出現した。


海底での急浮上の後、アビス・ワーカーはなんとか海面へと脱出した。その直前まで追ってきた巨大生物は、依然として深海の陰からこちらを見上げているようだった。発見からの一連の動きは、全世界の監視衛星や深海センサー網に記録され、即座に各国の軍へと情報が共有された。


ちょうどその頃、近隣海域では国際合同の軍事演習が行われていた。各国は演習名目で艦隊を展開しており、それぞれが高度な監視装置と兵器を備えていた。その報告を受けた司令部は、即座に演習中の艦隊へ現地への移動を命じ、状況確認と迎撃、もしくは最悪の事態への備えとして配置を始めた。


海域には、アメリカ、ロシア、日本、中国、フランスなど、主要国の艦艇が次々と集結していった。艦隊は防御陣形を取り、怪獣が再浮上してくる可能性に備えながら、無線で情報共有を進めていた。


やがて、深海から巨大な影がゆっくりと浮上してきた。水面が不自然に波打ち、異様な静けさが海全体を包む。艦隊は一斉に沈黙し、その生物の全容が海上に姿を現すのを固唾を呑んで見守った。


膠着状態が続いた。


怪獣は攻撃の意志を見せない。ただ、海上に姿を現したまま、各艦隊をゆっくりと見渡すように動いていた。艦隊の中では、誰もがトリガーに手をかけながらも、まだ撃つには至らないという判断を下していた。


しかし、沈黙を破ったのは中国艦隊だった。


「ここで何もしなければ、先を越される」

そんな焦りが、指揮官の判断を誤らせたのかもしれない。中国のミサイル駆逐艦が、警告射撃として怪獣の前方海面にミサイルを一発発射した。


爆音と水柱が轟き、緊迫した空気が一気に張り詰めた。各国の艦長が慌てて状況を把握しようとする中、怪獣の動きが変わる。


それまで静かに漂っていた怪獣が、ゆっくりと頭を巡らせ、中国艦隊の方へと身体を向ける。その動きには怒りも迷いもなく、ただ静かに、確実に、ターゲットを絞る冷たい意志があった。


それが地獄の始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ