異世界の日本料理屋 竹
城下町に一軒だけの日本料理屋、決して潰れる事のない国営の店である理由は、きっと彼女達の友達の勇者が理由だろう。
料理屋へ入ると元気な仲居さんが僕たちを出迎えてくれた。そして彼女は僕を見た。フィーナ達、女性陣をも見た。
そして彼女の目が少し険しくなる。彼女の目が言う。
『とうとう来たか、この時が!』……そんな目。
気のせいだろうか?
「掘り炬燵のようになっておりますお座敷と、机どちらになさいますか?」
「お座敷で、出来たら個室がいいんですが」
「はい、大丈夫ですよ。こちらです」
そして彼女は僕たちを畳の部屋へ案内する。
「お座敷は靴は脱いでね」
僕がそう言う時仲居さんは、なかなかやるなこやつと言う顔をする。
そして……「気になるなら……彼女の心を読んでもいいわよ」と、シルエットまで恐ろしい事を言い出す。
これからシルエットの前ではずっと、槍の使いの心得でも、唱えてなきゃだめだ。
「いえ、遠慮しておきます」
「ふふふ、魔界ジョークよ」
彼女は妖艶に笑うが、笑いごとではない。
なにはともあれ個室に座る事ができた僕たちは、これで気兼ねなく、料理を食べる事が出来る。
「私、おにぎりと豚汁、卵焼きの『勇者へのおもてなし』にします」
注文をとりに来た仲居さんに、フィーナはそう伝えた。
「ウンディーナもそうする」
「ウンディーナ、梅干し食べられるの? 酸っぱいから変えて貰う?」
仲居さんの配ってくれた。お茶飲みながら、ウンデーネに僕は横ヤリを入れる。
「主様、大丈夫」
そう言ってニコニコ笑顔だが、その笑顔はわりとすぐ曇る事を僕は知っていた。
そしてシルエットは、「天麩羅とミニうどんのついたセットをください」
「僕は、親子丼のセットを1つ」そしてみんなを見回したのちに「以上です」と、告げる。
「はい、少々お待ちください」
仲居さんは普通の洋装を着ていたが、東洋人ぽい人だった。
そこでようやく一息ついて、彼女達に今後の予定を聞く事にした。
「フィーナ、今後の予定としては魔界の魔王の城に行く。その先の予定はないんだ。君の故郷の事も考えたけど迷ってる。行かなくて、いいじゃないかと」
「私の故郷ですか、私はたぶん故郷の事は捨てた様なものです。でも、私によく似た従兄弟や私たちの後を付いて歩いた、親戚の女の子。私を心配してくれた人、彼らに会わずにいていいのかな? 彼らは困ってないだろかと思ってしまうのです」
「君が行くのなら、僕は付いていく。1人では行くかせられない」
「そうですね、私たち一心同体ですし、一緒に行きましょう。私が死んだらハヤトも死んじゃいますしね」
「へぇ――。そうなんだ……うん? 僕、死んじゃうの?」
「えっと……私たちどちらかが死ぬと死んじゃいますが、普通に生きている分には、寿命は伸びるし、魔力も高まりますよ」
「う――――ん、問題ないかな」
この世界で冒険者となった僕は、クエスト報酬と命を天秤に掛けて生きている。怖がるよりは、運命を切り拓く方に重きを置くようになっていた。
「でも、子供がうまれると残った方の寿命が伸びますけど……、子供は立派に育てなきゃいけませんからね」
そう言って彼女は恥ずかしいそうに、モジモジとした。
「死んだら即死なの? 僕が死んだとして、聖女様に復活されても、君が死んでいたら意味なくなりそうだけど」
「恋の病、お医者様でも治せない。それで私たちは死んじゃいます。死なないため生命を分け与えるのです。でも、人間の愛は人それぞれでわかりません」
「じゃあ、僕らは死なない事もありうるの?」
「手を出して下さい」
「うん……」
彼女は、「それは貴方が狐からの」と、言葉を綴りながら僕の手をひらかせて、手のひらをあらわにした。
そして彼女は僕の手のひらにら『愛』と書く。
「無くした時わかります」そう言って僕の手をふたたび握らせて、僕の胸へと僕の手を戻す。
「あらあら」と、言っているシルエットに――。
「ウンディーネもそれやりたい」と言って机の上に手を伸ばして、こちらを見ているウンディーネ。
「君は教会で誓いを立てだでしょう」
「むぅ」
「そっかーー」と、ウンディーネは、納得したが今度はフィーナの機嫌が悪くなったようだ。
「フィーナ、大精霊との契約は」
「わかってます。魔界でも欠かせない事です」
「うんうん、そうなんだ」
でも、やはり機嫌悪いような……。
「モテる男は困るわね」
シルエットは、肘をつきながら楽しそうに僕を見る。
そこへ料理が届く
「勇者へのおもてなしのお客様、天麩羅とミニうどんのついたセットのお客様」と、続き、「親子丼セットの勇者様」と、僕の役職が新しいセットメニューみたいに呼ばれる。
しかも明らから他のセットより器も豪華なのである。
器が足りなかったのかな? と、思い親子丼の蓋開けると金粉……。お茶を配る仲居さんは、明らかに狼狽える僕を、ニコニコ見ている。
「わぁ美味しいです」
「なかなかね」
「主様、主様だけに付いているりんご食べていい? みんなに1つずつあるよ? 食べたいな……」
何で、うちの子フルーツの事になると、意地汚くなっちゃうの?
「みんなにどうぞってしたら、食べていいよ」
ウンディーネは、みんなにどうぞとしだし、フィーナはそれを見てて少し機嫌がなおった。
彼女もりんごが好きなのだろうか?
「とりあえず、私達が来た道を使えばいいじゃない? それかフィーナがいつもハヤトを覗いていた様に、ヤーグ様を覗けば? 彼ならすぐに気付くじゃないかしら?」
「えっ!? いつそんな」
いつも落ち着いている彼女にしては珍しく慌てていた。そして顔は、耳までピンク色だ。
「えっ?!」
僕も普通の男性として見られてはいけない場面は、多々あるわけで……。
「大丈夫だった?」
思わず、聞き返す。大丈夫だったってなんだ。しかしあえて墓穴を掘るわけにはいかなかった。
「だいたい、大丈夫でした……」
彼女は太ももに手を置き、下を向く。彼女の前髪のせいで彼女がどこを見ているのかさえわからない。
えっ……彼女は自分の覗き恥ずかしいのか、僕の大丈夫でない部分について照れてるのか、薄暗い事はないが……気になる。
「そこについては、二人だけの時は話そう」
「えっ!? ……はい……」
「二人だけの時、どんな話をするのか気になるわね」
そう言ってシルェツトが楽しそうに笑う。
「じゃ、シルェツトの言う通りここを出発する直前に、魔王に通信を試みるなど、いろいろ試してみよう。でも、この国の人々や、仲間の前でも、もしかして誤解されるような事は控えたいから、出来るだけ出発の前にするよ事にしたいんだ……」
「「はい」」と、シルエットとウンデーネは答えるが、シルエットだけが……「貴方はここへ来たばかりなのに、人間界に随分肩入れするのね」
「えっ? そうですか? たぶんシルエットと同じ位だと思いますけど」
僕が、そう言うと彼女は少し黙り込み――。
「貴方は若いのに遊びがいが、無いわよねぇ……」と、ルイスに鍛えられた僕に対して、こっそり呟いた。
「とりあえず僕は、君がここまま僕を好きであってくれるならこの世界で暮らそうと思う。出来たら、少しは里帰りもいいだろうけど、たぶんそれは僕の気持ちを曖昧にさせるから、良い選択ではないよね」
「ハヤトは、ハヤトの世界には帰らないのですか?」
「うん、そうだよ」
彼女は、少し信じられないって顔もするが……僕はただ作り笑いしか浮かべる事しか出来なかった。
続く
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