全力疾走、葡萄狩り
幌馬車の揺れが酷くなり、ガタガタと僕らの荷物が揺れによって辺りとぶつかり音をたてている。
幌馬車の進む道が今までに無く酷くなっていっているのがわかった。
それにしても、今はいつで、どれくらい眠っていたのだろうか?
なんとか、重いまぶたを開けると。外はどんよりとして、太陽の位置から時間をわりだす事は難しい。
しかし今回のクエストは街の近場のはずだから、1時間も過ぎていないだろ。
それにしてもこのような道の悪さなら、もう一度地盤を埋め固める事になるだろ。幌馬車から眺めていると馬車用の大きな板と歩行者用の細い板が並ぶ様子は、ばっと見、子どもの砂遊びを思い浮かべるくらいには、見た目や性能があまり良く無い。
板の道、そのまわりを見舞わす。ギルドの階級の検定の時、あれほど茂っていた魔物のツタは、今ではもう見ることは出来ない。
その代わり小さな雑草の芽たちが、この広い湿地帯を埋め尽くそうとしている。
その草たちが呼んだのだろうか? 魔物ではない鳥が歩いているのも見えた。もしかしたら、川から餌となりそうな魚もやって来ているのかもしれない。
少し見ない間に、人間と草花によって変わってしまった自然を見ると不思議な気持ちなる。人間が変えるのは、コンクリートとだったり住みやすい暮らしばかりだと思っていた……。
その時、ふいに肩を叩かれてて驚き、「はい」と、言って振り返るとシルエットから朝ごはんの包みと、飲み物を手渡された。
クロワッサン、でかいチーズに、焼かれたこれまたでかいウインナー、そしてくし切りにされたオレンジ。
なんかお洒落なお弁当に、感心するような、目が丸くなるような。
クロワッサンを食べていると、ガクンといういう揺れとともに地面に乗り上げ、通り過ぎたあとの道に地面が続くようになった。
しかし道はここで終わりのようで、すぐに幌馬車は止まってしまう。御者が現れて降りやすい様に、後ろの板を外してくれたので僕らは、次々飛び降りる。
そして女性陣には、それぞれ手が差し出され、彼女たちが降りるのを手助けをする。
全員が下りた事を確認すると「こっちだ」と言う、紫竜さんの後ろに続き、道なき道を行く。
途中で、彼の三つ編みの動きを見つめながら、ウンディーネが楽しいそうに歩いているのに気づく。子猫の様に三つ編みにイタズラしそうな雰囲気で。
そんな僕の視線に気づいた彼女は、「深い海の底に居た頃の、魚の後ろひれを思い出す。私達はその後ろを泳いだりしたの」
「海は見た事が無くて凄く美しく、そして絵では表せない程、素晴らしいって聞いたので是非見てみたいです」
ウンデーネとフィーナが、仲よさげに歩いている。もともと、僕の中のフィーナの匂いに釣られてやって来た、ふしのあるウンデーネはフィーナもたまらなく好きな様だ。
しかし顔に竜の刺青を入れた、百戦錬磨そうなお兄さんの髪を見てする話しでない。
しかし突然紫龍さんが止まる。
これは怒られるのか?! と、思ったが、目の前に、多くの葡萄の房を付けた。大きな木が生えていた。
「じゃーいつもの通りに」円陣を組み、静かに僕がそう言うと、ウンデーネが、水の塊を稲妻の様に走らせ葡萄の幹に風穴をいくつも空ける。幹は、ゆらゆらと多くきく揺れ、ウンディーナのは放つ、数多くの魔法を自分の体からそらそうとしている。
次の出番の僕は、以前、パーティー『黄昏』の黒魔術師も、使っていた魔法を使う事にする。7割の確率でサラマンダーを呼べるようになって来たが、契約はまだだ。……いや、なんか無理そう。
【禍津神を、滅却する古の精霊サラマンダー、すべて燃やし尽くす炎となりて敵にを滅ぼせ!】
そう詠唱すると、葡萄の体内から炎をまとったトカゲ、サラマンダー跳び出して来て、すべての幹やツタを焼き切る。
そして最後にこちらを向くと、サラマンダーが味方の僕を燃えない程度の追いかけてる。
僕は慌てて仲間の居ない方向の、湿地帯へ逃げることになる。
「なんだよ! サラマンダー!」
そう言うとサラマンダーは、プイって感じで横を向いて消えるのだ。
「次は、こっちだ」紫龍さんがそう言いかけ出す。
その横をオリエラが並走し、草木を切り分け進む。僕は湿地帯の水を幾分、吸収した靴で駆ける。
――なんか靴がチャプ、チャプいってる!?
駆けた先に、新な葡萄がおり一同に緊張が走る。
その葡萄に合わせて紫龍さんが、腰の中国刀を抜き一振りし走り去ろうとする。
いや、どうやらその一太刀で、葡萄を仕留めていたようで、葡萄は斜めに切断され、上であった部分が切断から斜めに下へ落ちた倒れた。
残された幹の部分をオリエラが切り刻み、その上を跳び越え走っていく。
ミッシェルやウンデーネ、体力が無いものから徐々に、脱落していく。
「ルイス、脱落者を頼む」
どうやら、シルエットもそこに残ってくれた様だ。
「ハヤト、凄く楽しい。なんか冒険みたい」
オリエラがそう言ってワクワクしている様だが……普通の人間がこれやったら魔物に不意を突かれ普通に死んでる。
「そうですね。ワクワクします」
魔王の部下の僕の彼女も、やはりチートなのである。
「2人とも、たぶんこれ一般な感覚だと、荒業だから無理はしないでね」
僕と、フィーナの冒険への姿勢には、まだ、隔たりがある。僕は泥臭いやり方であっても、確実にみんなが生きて帰る事を選ぶ。
だから、ついていけなくなった者が出たら、僕ならそこで待つだろう。
しかし今回、置いていくのかと言われたなら、僕が半人前の若造だからだ。
粋がってこれが正解だ! と言ったところで、その道で生きて来た人間の考えにあっさり方向転換していかねばいけないのが僕で、それによってレンさん言う通りにしては……と、ルイスに小言を言われるのも僕なのだ。
残念ながら……。
「ハヤト、魔王城で育った子供は、誰一人、下等で、知能もない魔物には負けないから、見ててください!」
そう言うと誰よりも早いスピードで、紫龍さんに追いつき、その先の葡萄へ単身で彼女は挑む。
その腕から浮かびあがる、いばらが、葡萄を縦横無尽にとらえた瞬間、葡萄は果肉を垂れ流し切り刻まれ地面へドスドスと落ちていく。
その時の衝撃でおきた風。その風のいたずらで、彼女の髪をしばるものが取ちる。
風を受けて彼女の髪は、彼女の顔を隠す。
そのまま彼女は僕に手を差し出す。
「お疲れ様いばら姫」と言って僕が、彼女の手にくちづけすると、風は僕の気持ちを理解する様に、彼女の顔かかる髪を退かせ彼女の可愛らしい顔を僕に見せてくれる。
そして僕のいばら姫は、「はい」っと言って頬を染めながら僕にはじらった笑顔をくれる。
彼女が僕の前であえて無茶をするのは、彼女の持つ強さや魔王幹部として彼女がそうあらねばならないという気持ちや姿に、僕が怖気づいてしまうかもしれない。
そう思っているのだろうか?
すでに恋人同士の僕たちなのに……。
でも、重い人認定されてきた僕に対して、するべき心配ではないのだ。
愛され過ぎて怖い。
それが彼女のするべき心配なのだ。しかし本当にそう心配されたら凄くへこむけどね……。
続く
見ていただきありがとございます!
また、どこかで。




