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朝明けぬまま狩りへ向かう

 早朝、夏は気づけ遠くに過ぎ去り、頬をかすめる風が涼しい。


 ギルドクエスト『エクストラ級』の敵を討伐するためギルドが用意してくれた幌馬車に乗り込み僕ら勇者パーティーは城の馬車乗り場から出発した。


 乗った時からしていたが、葡萄の甘く発酵した匂いが辺りに、少し残っていた。


 馬車が動き出した事で、乾燥しかけの葡萄がコロコロと転がって来て僕の足に当たった。


 今日は朝、早かったので、ルイスが保存食の乾パンを配ってはいるが、そこから落ちたわけでもなさそうだ。


 この幌馬車で、収穫した葡萄を運んだのか? それも山ほど。


 きっと正解なんだろう。


 この幌馬車の匂いもきっと落ちた葡萄の粒が何者かに踏まれてその匂いを発しているだけなんだろう。お


「ハヤトさん」


「うん?」


「人を乗せるなら、こんな状態なら一度洗うまではしなくてももっと風を通すとか、掃除して欲しい、そう思いませんか?」


「もと冒険者あがりが多い、ギルド職員にそういうのを求めても無駄でしょう。僕ら自身時には自分の血で血濡れになって幌馬車に乗るのに、それに比べて葡萄なんかは気にとめる事ではないのでは?」


「しかし気になるものは、気になるんですよね……」


「まぁ、それはわかる」


 そんな僕らを悩ました葡萄だが、それには訳がある。今回のギルドの討伐対象は、あの湿地帯を抜けた大蟻の奥と言うか、近場に棲息(せいそく)する植物系のモンスター、通称葡萄(ぶどう)なのだ。


 そしてたぶんこの葡萄は、魔物から以前に収穫したものだろう。なんに使うの? って闇深い疑問は考えない様にして、ルイスから聞いた弱点は、炎、風の魔法が有効らしい。


 葡萄のよく似た魔物で、ツタによって敵を捕獲する。湿地帯に居た、魔物と似た部分があると言う事だが、特徴として葡萄に似た丸い果肉の中に人間を、閉じ込め効果的な栄養成分としてしまうって様だ。しかも若干の毒があり(とら)えた人間を痺れさせ、しばらくの間は行動を不能にするいやらしい技まであるという。


 今回僕らのギルドクエストに同行者が、一人ギルドから乗り合わせるらしい。


 その人物の目的は、ミッシェルの階級のランクアップの試験と、それとは別にギルドの討伐範囲拡大のため、新エリアに住む新種の魔物の討伐ランクを定めるため事前調査を兼ねている様だ。


 その話しを始め、ルイスにされた時には、レンさん来たらどうしょう……、そう身震いしたものだ。


 彼女は自分に厳しく、人にも厳しい。そして請け負っている仕事は山盛りだ。


 だから他人のペースを乱すところがある。チームワークの整ったパーティならいざ知らず、今の寄せ集めのこのパーティーでは、それは時には重大な過失につながる恐れがある。


 だからそれについてルイスに指摘されたのち、「エクストラという最高ランクだからこそ、指揮系統の統一が大事なんです。リーダーはレン殿ではなく貴方なのです。緊急時にそこは決して譲らないでください! 譲ってしまった事でいつもと違う状態に、判断が鈍ると言う状態を作り出さないください」


 そう昨日の夜に、ルイスから口を酸っぱくなるほど言われた。覚えがある為、何も言い返せなかった。

 ギルドから来た通知には、それくらいしかルイスの話では書いてなかったらしいので、それ以上はわからない。


 しかし僕、ルイス、ミッシェル、オリエラ、ウンディーネ。そしてフィーナとシルエットのいつものメンバーで、世間話をしながら行くので、最高ランクの緊張感などは微塵もない。


 僕達が、葡萄と言う魔物とその先にいるかもしれない魔物を倒す事ができれば、いままでは僕の畑から湿地帯の外側を大きく迂回して隣り町まで行っていたのが、今回の討伐で城から大蟻のエリアに抜けて通れる様なれば2時間ほどのショートカットになるらしい。


 討伐を頑張らないと!


 ☆


 城から街へ続くクネクネとした下り坂抜けて、街中へと入ったのだろう、石畳の街道を馬のひづめの音がパカッパカッという乾いた音が響く。


 こんな時間には、まだ誰も起きてこない。以前いた世界なら、この時間なら始発の電車は動いている時間だろうに……。


 そして幌馬車は、ギルドの前に横づけされ馬車は止まった。


 僕はのその人物を迎えるため、幌馬車の中でフィーナに膝枕をされながら、眠るウンデーネを踏まない様に荷馬車の中を進む。


 荷馬車の最後尾に横たわる荷物止めの板の先の外には、もう彼が待っていた。


 長身で、中肉中背、中年と言うにはまだ若い彼はの頬には黒い墨で(りゅう)の天高く舞い上がろうとしているさまがいれられている。髪は、三つ編みに結ばれ、人好きする笑顔だが、目の奥は笑っているか少し疑わしい印象を与える。


 僕達の挨拶に、「おはよう」と、彼は落ち着いた声で話すと、僕の出す手を掴み馬車に乗り込んで来た。


 彼は、自分の事を紫龍と名乗った。彼の衣裳は、どこか中国風で、この異世界のどこかに中国によく似た文化の国があるのだろうか? しかしそれはわからない。何故なら彼は乗り込んで、すぐ座りこみ眠ってしまったからだ。


 ギルドの副長を乗せ僕らは、街中を馬車で進むが新聞配達と思われる少年としかすれ違わなかった。もう少ししたら一番高い塔の上で、誰かがトランペットを吹くだろう。


 それまで街は眠り、朝を迎えない。これが本当の世の中の(ことわり)なのか僕にはわからない。


 しかし異世界の時間にすっかり慣れてしまった僕は、じゃんけんで負け荷馬車の御者の席に乗るミッシェルと、見張りを自ら申し出てくれたシルエットに任せ、僕はまだしばらく眠る事にする。


 起きたら何時になっているのやらわからないままに。


 つづく

見てくださりありがとうございます。


またどこかで

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