彼のもとへ
魔界。その奥深く、自然は厳しい姿をみせせるが、生きているものすべては生命力にあふれ何者にもなれる土地。
そして人の姿さえ、捨ててしまえる場所。その魔界の頂に立つのが魔王なら、彼女はその片腕と言っていい。
そんな彼女は魔王の城のバルコニーから猫の爪のような月を、見ながら好きな男の事を考えている。
フィーナ、それが彼女の名前。
そして……バルコニーを破壊しながら、落ちて来た鳥が、よしの。勇者のなれの果ての青い鳥。
「なんですか、よしのさん! またバルコニーを破壊して……」
そう言いながらフィーナは、よしのの羽を広げながら傷はないかと丁寧に確認する。
「あっ、悪い大丈夫か? ってフィーナ、お前はまた月を見て泣いていたのか? 相変わらず暗い子供だな……」
もと勇者の鳥は、正直さが取り柄なので、そんな余計な事まで言ってしまう。
「泣いてなんかいません……少し目にゴミが入っただけです」
フィーナは、鳥をそっと床に置くと、立ち上がりそう言って鳥に背を向けた。
彼女の心を察する事もせず、鳥は彼女の目の前の、今にも崩れそうな手すりにつかまり言うのである。
「泣くほど会いたければ、会いに行けばいいだろう?」
フィーナは鳥を見た。鳥は、さも、わからんと頭を傾げる。
その時、鳥は突然、狐目の侍の姿に、その姿を変えた。
髪の大部分を剃り上げて、頭の上ね方に一つに結っている若い侍。
「あら、話し中だった?」
紫髪に、赤い瞳、人ならざる者の美しい女性、シルエット。
彼女が、バルコニーの入り口からフィーナたちを見ている。そんなシルエットに、急によしのは問いかけた。
「おい、好きな男に会いたくなったらどうする? シルエット」
「今すぐ、私の前に現れてって思うわ。来ないなら、殺しちゃうかもしれない」
「そっかー、って来ないんだよ、そして好きな男を殺すな」
よしのは、シルエットに投げやりに返事をしながら、もう一度聞き直した。
「それなら……会いに行くわ。今すぐ、そして殺しちゃうかもしれない? そうじゃないと、苦しすぎて……私が死んじゃうもの、私の一生も……」
「な?」
そう言う人間のよしのは、またもや半分は以上聞き流し聞きたい言葉のみ拾ってはいるが、鳥の時と違い目に説得力がある。
「でも、狐の里の問題があるのです。父母は、知っている者に、殺されたのかもしれない。反魂の術が2人とも失敗し、帰らぬ人となったように、私も魔王様の庇護から出れば私も……」
「大丈夫、見知らぬ狐が近づいたなら、私が殺してあげる。魔王様にお世話になったからそれくらいさせて」
シルエットはフィーナの肩を抱きながら、優しく微笑みを浮かべる。
「シルエット……」
フィーナはシルエットに抱きつき、涙を流して喜んだ。
「俺もやる、全面戦争だ! そして事は迅速に、力の差を見せつけて本丸を潰せば……、平和的全面降伏として解決するだろうよ」
そう言うよしのの言葉も今だけは、頼もしい聞こえるのだった。
☆
以前は、孤独の中にあった魔王。
彼のもとには多くの人材が集まり、彼の城は、そんな彼らに合わせ変化を遂げ、そして魔王自身も、変わって行ったのです……ですが……。だが……。
「だが、お前達ちょっと待て、特に、よしの……。何故、お前は人間の勇者であろう? なんで、お前が一番決起盛んに戦闘をしかけようとするのだ……」
魔王の椅子に肘を付き、そこで魔王ヤーグは、頭を抱えた。
「やはり脅威にしかならない奴は、討たなければだめだろう?」
そう言ってよしのは、腕を組み踏ん反りかえる。
「やはり、私とよしので、フィーナについて行く案は難しそうね」
シルエットは、左手で、あごを乗せている右手をささえつつそう言いました。そのまま彼女の血の様な赤い目で、魔王を見つめているとある事に気づく。
「もしかして魔王様……、仕方ないわね。今回は、よしのを置いて行くわ。子離れと、ペットロスは魔王様でさえ、ううん、人間界進行してまでの構ってちゃんぶりを発揮する魔王様には耐えられないかもしれない。そうでしょう?」
シルエットが人差し指と中指を揃えて、魔王を指さす。
そう、シルエットが言うのを聞いて、「よしのさん魔王様を、よろしくお願いしますね」
フィーナは、少し安心したようで…… 。
「何でだ、せっかく人間界の連中とも久しぶりに手合わせ出来ると思ったのに! なぜ俺を置いていくんだ! 魔界では、人間と言うだけで公式の試合に出る事も出来ないんだぞぉ!」
よしのは全身全霊をかけて、みんなに訴えかけるが、よしのが戦いたい気持ちを訴えば、訴えるほど他の仲間は危機感を持って彼を見つめるのです。
「仕方ない……よしの、お前の身なりは独特で、もと勇者なのだからおおごとに巻き込まれる可能性もある。ここは自重しろ。フィーナ……。子供だと思っていたお前の最近はそれなりの成果をあげている。いいだろう。人間界に行く事は許そう、しかしお前の命次第で争いも起こりうる事を覚悟して行くなら」
「もちろんです、魔王様。そして以前から議案にありました。人間界との共存の道を調査も重ねてお約束します」
フィーナは、そう言った。哀れな子供だと思っていた子供の姿は、もう彼女には無かった。寂しくもあり、うれしくもある。そんな彼女が、好きな男に会いに行くのだ。
「シルエット!」
「はい? どうしました? 魔王様」
「シルエット、お前に2つ言う事がある。1つ目は、私は寂しくて言っているのではないし、人間界への侵攻は我の預かり知らん事だ」
「わかりました。私には魔王様のお心が、わかっておりますわ」
「お前がそう言うと、不安しかない……。まあ良い。2つ目、……人間界には、いろいろな誘惑がある。わかるな?」
「はぁ?」
「だから……つまり……」
魔王は、何故か歯切れが悪く要領を得ない。
「シルエット、いい加減わかれよ? 結婚前の娘が男に会いに行く時、育ての親がぐだぐだいいだしたら、そう言う事だろう?!」
やる気の無くなったよしのが、床にの転がり折り曲げた手の甲に頭を乗せながら、そうがなりたてる。
「あ……はいはい、わかりました。ついでに浮気しそうにないかも確認しますわ」
「金持ってるかもな!、ギャンブルやる奴もだめだぞぉ!」よしのが、それに追加する。
「もう! なんの話をしているんですか? 二人とも!」
「シルェツトよろしく頼む!」
「魔王様まで!?」
フィーナは、出発前に顔が赤くなるやら青くなるやら大忙しだった。
「では、ハヤトのもとに扉を開く」
そう言うと空間は妖しく波打ち、銀色の空間を作り出す。
「いってきます」「またね」
そう言って二人はその中へ消えていく。そして元の何もない空間に変わるのだが……。それは……いつもより一層、寂しく二人を包んだ。
「行っちまったな……」
「あぁ……」
「元気だせよ! もしかしたら孫と一緒に帰って来ればもっとうるさくなるだろうよ」
……………………
「魔王? マジで、落ち込んでるのか?」
「うるさい! 無神経なお前とは、当分、口を聞かぬ!」
そう言い魔界の魔王は、城内を歩いて行ってしまった。
続く
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また、どこかで




