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アニス王の心

 王座の間の全ての人々の視線が王と僕に注がれている。

「アニス王、病人は寝ていてください」


 女性はそう、王に声をかけ彼をゆっくりとベットへ導く。聖女様は、病人の扱いに慣れているのだろう、行動に(よどみ)みがない。


 僕より少し年上だろうか? 彼女は、ベールを被り白く、そして少しゆったりとしたワンピースを着ている。


 彼女は、彼女を見つめる僕に笑いかける。


「王都のサラネス教会から派遣されました。ルナと申します。本日はよろしくお願いしたいします」


「ハヤトです。本日は、()()()よろしくお願いします」


 僕が少し力を込めてそう言うと、彼女はふふふと可憐に笑う。


「ルナ、アニスの体の調子はどうだい?」僕の後ろから声がするので振り向くと、魔法学校のヘデック校長が居た。


「たくさん回復魔法かけていただいたので、もうすっかり元気なりましたわ。それよりも校長先生、勇者様がいらっしゃいますよ」


「あぁ……勇者殿か……すまない。挨拶が遅れたな私が、魔法学校校長のヘデックだ。今日はよろしく頼む。そしてくれぐれも死ぬないように。この呪いはどうも死ぬと魂を(むしば)み、消滅までは行かないだろうが、しばらく輪廻転生の輪からも外れてしまうらしい。そうすると蘇生魔法でも生きかえることは出来ない。本当にふざけた呪いを作り出しおって」


 どうもやはりあの時ぬいぬいが言った様に、魔法学校にいた校長は偽物ようだ。圧とか雰囲気が依然と比べ物にならない。


「はじめ……」僕の挨拶。それは儀式の始まりのため、前方を向いたヘデック校長の声に打ち消された。


「では、始めよう。皆、それぞれの立ち位置で、説明と同じ位置にいるか、まわりを見回しみなさい。これから先は臨機応変が求められらるが、今は、それは求められておらぬので安心しなさい」


「「全ての立ち位置、揃いました!」」


 校長は、指揮者のように手を上げ指揮して行く。


 その旋律の中で、神官により僕は王の横に、頭と足を逆向きに寝かせらる。

 だから僕は、王様なんかスリッパの様な靴を履いているなとか考えていたりした。


「では、王族の結界は確実か?」


「「皆様、結界内に退避され、全ての結界が稼働している事、確認済みです!」」


「勇者殿!」

「はい!」


「勇者殿、決して闇に沈んではならぬ。この呪いは正義を盾に、勇者殿の正義を蝕むだろう。だが、人は誰でも生きていれば、つぐなう機会を与えられる。決して負けぬように……」


「わかりました」


「ふむ、では始めよう」


 そこで歌が始まる、ゆっくり間延びした歌声が、群衆から聞こえる。一度、見学に見に来た事はあったが、この歌は本当に嫌いだ。闇に落とされる感覚になる。


 校長が目の上に、軽く手を置くと僕の目は勝手に閉じられる。


 ――始まった。始まってしまった。僕はもう逃げる事は出来ない。


「汝は、どこにいる間違ってはいないか?」


 校長は、誰かに話しかけている。

 マナの中心と言える、僕の心臓の上に手を置きながら……。


 僕の中に、誰かの思いを感じる。


【間違いではない……】


 アニス王?……。


 ☆


 そして僕は目を開けた。開け放たれ扉から太陽の眩しい光を感じる。ここは城の階段の下の玄関前のホール。


 沢山の人々がホールの中に、あゆみ入り階段の下で足を止める。


 そしてひとりの女性が、僕に向かって階段に登ってくる。


 ――遠路はるばるご苦労たった。疲れてはいないか? 彼の気持ちのなかに、そんな言葉は浮かんでは沈む。ゆっくりするがいい。何か欲しいものはあるか?……など……いろいろたくさん。


 けれど、若き王子の心は、彼女をねぎらうよりも、自分の運命を早くこの目で見てみたい。そう強く思っている様だ。


 僕の目の前の女性のベールを誰かの手がゆっくりと外していく。心臓の鼓動がいきなり早くなり僕は驚く。


 僕の目の前に金髪で、髪の長い美しい女性の顔があらわれる。


 黄色に近いブラウンの瞳は、とてめ強い意志を秘めているようで目が離せなくなる。胸がときめく思いに、僕まで勘違いしそうになる……。


「お初におめにかかる俺の花嫁殿、俺はホイルトツェリオの王の息子アニスだ。末永く仲睦まじくあろう」


「お初におめにかかります。アニス様、スーミルの第一王女レミナと申します」


「そうか、うん。皆のものすまない。俺の花嫁をしばし連れて行く」


 そう言って俺は、彼女を独り占めしたくなりその手を引いて、王宮から連れ出した。


 そして俺の将来治める事になるホイルトツェリオの城下街を見せまわまった。


 ――彼女はそこで、初めて貨幣を使い、気に入った髪飾りを買い。そして初めての買い食いをした。


 住宅が建ち並ぶエリアの池で、一生に野鳥を見たりもした。


「俺の花嫁殿は幼な子の様に、城の中に居たのだな……」


「スーミルは港街で、船で見知らぬ人々が多く訪れますから仕方ない事ですわ。けれどアニス様が今日のように沢山街に連れ出してくださいますなら、すぐにいろいろなれますわ」


 彼女はそう言いながら、くちもとを俺が買った一本の赤い薔薇で隠し、手をさし出しす。俺はその手を取り、彼女の吐息がかかるくらい近づき……。 


「もちろん、喜んで。俺の薔薇」

 そう言い、彼女の目を見て手のこうにくちづけをする。


 彼女の赤く染まったその顔が、ついつい可愛いらしく見えって、彼女の肩に手を置き「薔薇を横にずらしてくれれば、そこにもくちづけするが?」と、彼女の耳に囁く。


「こんな場所では致しません」そう言って、彼女は少し怒って行こうとするが、「アニス……」と言って手をさし出した。


 そして俺は彼女の手を取り、俺たちの街をふたたび歩いた。


 そしてその帰り道、城も城下街も全て見る事の出来る場所で、馬から2人して降りる。そして彼女の両手を、俺の両手で包み込み。


「この国の、そしてこの俺の妃になってくれないか?」


 俺は彼女と結婚する事は決まっている。彼女は花嫁修業でこの国に来たのだから……。


「はい、いついかなる時もアニス貴方のため、そしてこの国のために生きる事を約束しますわ」


 俺は胸は幸せに満ち満ちたが……少し悩み、鞄に刺しいれてあった薔薇を彼女に手渡した。


「アニス……」


 彼女はそう言って少し戸惑い、そして恥ずかしそうな、でも幸福そうな笑みをうかべながら、口もとを薔薇で隠したのち、薔薇を横にずらした。




 俺たちの結婚は、あくまで政略結婚ではある。俺たち王族は国民を生かしも、殺しもする。しかし国民によって生かされているのも、また事実。


 だから俺は結婚に愛など求めなかった。結婚は義務で、政策なのだから……。


 しかし俺は彼女を愛し、彼女の愛を確信した。しかし後悔した事が1つだけある。


『レミナ、君を愛している。結婚して欲しい』と、言えなかった事だ。しかし私たちは王族で、プロポーズの時でもその事は重要な事なのだ。



 ★


 ――もう一度問う。その体か憎っくき敵のものか?――


【間違いではない……決して私は間違えない。我が一族、(おさ)を殺した者を!】


 アニス王の声、そして彼が滅ぼした魔族一の魔法の使い手、可哀想な子供。


 あの時、俺はここが死地とまで定めて、あの城に乗り込んでいた。


 俺の過ち、ただ一度の過ちはレミナへの裏切り。

 けれども、長く辺境のあの城にとどまれば、罪は辺境の姫君への愛へと変わってしまうだろう。


 俺の国でただ1人、王の責務を果たす女性を知っているのに……。


 この一度の過ちを誰にも言わず、背負っていく。だから早く帰らねばなんとしても、レミナのもとへ。





 ――お前が命を落としてまで殺したかった男は、この男ではないのか?――


【お前は何を言っている? 私が間違えるはずなど……】 





 その1つの罪が今、私に罰を与える。


 いつもなら、うち漏らす事のない命。


 ある部屋のカーテンを切り刻み入ると、部屋の中にうずくまる何かがいた。


 多くの蝋燭を備えつけられているにもかかわらず、彼に会った瞬間、彼の後ろに禍々しい闇を感じた。


 青年と言うにはまだ若い彼は、我が軍を苦しめる魔術師の姿と瓜二つで、若いはずなのに、生気も無く、体は醜く痩せ細り、土色の顔色の彼、もはや枯れ木のようだった。


 若い頃の俺なら、正義の名のもとに迷いなく彼を切っていただろう。


 しかしその時、迷い、そして打ち損じた。


 傷を舐め合う様な愛もある。憎悪の目の奥に、誰かに縋らなけば立ってられない弱さ。辺境の姫君と同じ弱さを彼の中に見出してしまった。とても愚かな事だった。


 そして俺は間違い続ける。窓から落ちいく彼は、少し安らかな顔をしていた。だから確認を怠った。俺は願った……俺と彼のために優しい死が、彼に訪れますようにと……。


 その結果、彼の魂まで黒く焼き焦がすような未来が待っているのなら……窓から飛び降りてまで、彼にとどめをさしに行ったものを……。


【アニス王! アニス王! 何故お前は、そこにいる。憎い! 憎い! 私の仇!】


 俺は俺はだけの薔薇、俺の愛する人、レミナ、彼女の心だけを思いさえすれば良かったのに……。


「でも、レミナから聞いた俺の娘には何の罪もない。あの戦では誰もがいい知れない恐怖に戦い、救いを求めていた。オリエラ、俺は彼女になんと告げていいのかわからない。あの愛は、過ちであり、罪。でも、あの時の俺にはそれに縋るしかない希望だった。オリエラは誇っていい命だと、俺は思っている。でも、それでも俺は薔薇を何より愛しい」


 これは僕の声。その瞬間、右手を通して悪意と禍々しい呪いなのか? 目の前が見えているのに、覆われた感覚。

 痛み、やるせなさ、深い深い悲しみが僕のもとに来た。心臓を掴まれるような痛み、そして体中を刺すような苦痛はなんだ!?


 ぐあぁぁ――ああぁ――!


 僕が僕の物とも思えない苦痛の声を出す間に、腕のロープは切られ、厚い布を取るのを中途半端に、王はベッドごと連れ去られていく。


 なんだよ! 痛いのは仕方ないけれど、マーブル模様の様に僕の心をいろんな感情で、刺激されるのはもうこりごりだった。


 彼の気持ちは僕を守る心の防波堤を、貫通してきた。もう、本当に勘弁してくれ。


 続く

 

見ていただきありがとうございます!


また、どこかで!

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