ギルドクエスト 蜂の撲滅 前編
昼下がりギルドの両開き式の扉を押し開ける。
遅い昼食にありつく冒険者や、受付で報酬の詳細を確認しているパーティーで、今日もギルドは混み合っている。
僕らのパーティーは、まず来月の1日にあるギルドランク進級試験の詳細な説明用紙を貰うべく、今日も元気なコトハさんに話しかける。
「コトハさんこんにちは、進級試験の説明用紙出来てる?」
「こんにちは! 勇者パーティーの皆さん、出来てますよ! 出来たてほやほやです。もうインクの香りしちゃってますからね。中級と上級同時受験で、受験者は、ミッシェル、オリエラ、ハヤトにハヤトの大精霊様で、ウンディーネ様でいいのよね?」
「うん、そうだよ」
「はい。上級用のプリントです。各パーティーに一枚ですので、無くさない様にしてくださいね。無くした場合は……一週間前に大型ポスターが張り出されるのでそっちを見てください。次の一枚が、進級試験後に行われる魔物撲滅祭りプリントで、ルイス、そしてぬいぬいにも出来たら来てくださいと伝えて下さい! 私達の帰宅時間が変わるので、切実です! で、最後に本日のおすすめクエストのプリントになります」
「じゃ、進級試験のある1日は、毎月こっちのギルドは休みなの?」
「そんなわけないじゃないですかー。こっちの仕事が終わってから、手伝いに行くんですよー。帰りの荷馬車はもうみんな目が虚ろなのに、ギルマスのレンさんと紫龍が毎回楽しそうに、次回の開催場所を話してるんですよ! 鋼の心ですよ!」
「そ、そっか……大変だね。頑張ってね」
「ありがとうございます♪」
コトハさんは、我を取り戻した様に可愛く僕にお礼を言った。ギルドの黒い闇は、相変わらず広く深い様だ。
そんなギルドから、僕らは蜂の撲滅クエストの依頼を引き受けて今日は民家にやって来た。
本日の参加者は、僕、ルイス、ウンディーネ、オリエラ、ミッシェル
民家の周りには広い畑が広がり、何か飼っているのだろう柵も見える。
そうしてバケツ一杯分の大きさの蜂がいる。見た感じアシナガバチに似ている。
「これは僕ら死んだわ、命日だわ」
「ハヤト、大丈夫です。形無くなるくらいまで食べられなければ、復活するための魔法で死にませんし、毒もアイツ程度なら私でも浄化出来ますよ」
「凄い! そんな魔法まで覚えてるの?」
「いえ、解毒剤を幾つか常備しているだけです」
「うん、そっか、じゃあ作戦の通りいこうか」
その時、ウンディーネが僕の袖を引っ張った。
「うん?」
彼女を顔を見ると、いつもより青白い……。
「ウンディーネ?! もしかして蜂に刺されたの?」
僕は近くに居るかも知れない蜂を、興奮させない様に出来るだけ静かに言った。
「主様……蜂の顔が……無理」
「ウンディーネ……」
「ハヤト、誰しも好き嫌いはあります。彼女たちがいる様な水中には、蜂はいませんからね」
彼は近場の蜂を、弓矢で、すぐさま射抜く。彼が射抜いた瞬間から蜂はピキピキと音をたてて氷漬けになっていく。
その矢を刺さっている木から引き抜くと、ウンディーネの前に転がす。
――えぇ……。一同ドン引きしたが、「ここで慣れなければ、いつか同じ事で足を引っ張り、皆を危険にさらすかもしれません……。厳しい事を言いますが、この場で慣れてください」
「ルイス……」ウンディーネは優しくそう言い、「絶対倒す!」と、ルイスを指差し怒った。
しかし僕の顔とみんなの顔を見て、彼女は顔をおおい、少し指の隙間から見る。指を閉じるをキャー、キャーと言いながら繰り返しだした。
僕ら少し、微笑ましく思いつつ笑顔になる。
と、言うわけで、ウンディーネ脱落!
しかし作戦は遂行されなくてはいけない!
条件、民家に巣食う蜂を倒せ! 現状維持は絶対厳守、クエストクリアーは依頼者に報告し、確認、了承を得る事。
作戦その①、依頼に挨拶! 社会人に当然の振る舞いだ! 僕らは比較的に、蜂が飛んでいない裏口にまわり扉を叩く。
駄目だ……、大きな窓があるこちらには、やって来てもくれない様だ。
しかしその間にも僕を援護射撃しているルイスが、一撃で蜂を射落としていて、僕のまわりどんどんバケツ、いや蜂の凍った死体の壁のオブジェ増やしていく。
「じゃ、本格的にやろうか」
「「わかりました」」「はいー」
作戦その② 蜂の巣の駆除、依頼はこの家の主の息子で、今日の朝、起きて仕事をしに来たら玄関に、昨日までなかった牛よりデカい蜂の巣が出来て駆除欲しいと書いてあったが、今や民家と同レベルまで巣が巨大かして居る。
これは絶対初級の仕事では無い。
当初の作戦では、火が使えないので、ウンディーネが水で囲い、オリエラに巣を家から切除してもらったのちに水圧で潰すって予定だが、計画がどこまで遂行出来るかも不明になって来た。
「ルイス、これは討伐続行可能なの?」
今、唯一の最高資格のエクストラを持つルイスに尋ねる。
「初級冒険者には、正直不可能ですね。しかし勇者パーティーの前には超えなくてはいけない壁しかありません」
「でも、無理でも突っ込めって事じゃないでしょう?」
「無理かどうか、決めるのは貴方です。私の決める事ではありません」
「じゃあ、やろう」
「なんで、そうなるんですか、ハヤトさん!?」
「やったー!」
「わかりました」
「いや……家から、でられないと困るでしょう? なんせ上位ランクは、クエストが日々変わらず張り出されてるし」
「それだけパーティーの数が限られますし、それに見合う報酬で堅実に暮らせば長期間仕事をせずにすみますしね」
「楽して暮らすって最高でしょう。ミッシェル、今が頑張り時だよ! そして勇者パーティーに居た日々を、本まとめて書いてよ。僕の思い出をさー」
「そんなの自分で書いてくださいよ!」
「……うん、そうだね。考えとく。じゃーミッシェル行ける?」
「あっ、はい、行けます」
「作戦はほぼ変更なしで、水責めは、僕とミッシェルのみになったけど、飛んで出て来た蜂は、ルイス、オリエラお願い」
魔力の消費を減らすために、槍を出し玄関側へと進んで行く。
バケツ大の蜂はそのスピードが普通の蜂より遅い。そして羽音によって来る方向がわかるので、練習場の兵士たち相手の稽古より倒すのはたやすくはある。
進んで行くと、誰かの視線を感じ顔を向けた先には、老夫婦とただ僕をみつめる白い犬が居た。
僕に手を組み祈る奥さん、そしてそんな奥さんと白い犬を両脇に抱える旦那さん。僕は、彼らにうなずき先へ進む。
玄関前に差し掛かる前に、心静かにし、以前みた小瓶の中の世界を思い出す。それとともに水はそこにあって太陽を遮る。
目の前あるものは、海の大岩に過ぎず。静かにあるべきところに帰っていく。
「ハヤトさん、ルイスさんからの報告で、全ては海に沈みました。下へ深海の奥底へこれを落としてください」
やはりミッシェルは、すべての基礎が出来ている様で、魔法のイメージをより深くする方向に、僕に今の状況を伝達してくる。だから僕は彼の言う通り岩を落とそう。
深海、異常な水圧のかかる世界へと。
続く
見ていただきありがとうございます!
また、どこかで!




