人魚姫とウンディーネ
文字の読めないウンディーネのために僕らは、長い山のそびえ立つ城から歩いて街へとやって来た。
何度も休憩を必要だったウンディーネも我先にと歩き出した。
そしてある店の前で、ルイスが僕らを呼び止める。
「こちらです」こう言うと、彼は店の隣の横道へとどんどんとは入って行ってしまう。
家の壁と石畳の道、一定間隔ぐらいに家の扉はあるが今は歩いているのは僕らだけ、雰囲気としていくら進んでも堂々巡りをする道を思い浮かべてしまう。
「有りました!」
彼が僕らに余りも構わず行くものだから、ルイスの偽物だったらどうしようと思ってたところだったよ。
しかしそこは入り口横の地面に『営業中』と書かれた看板が立て掛けてあるだけだった。
そして彼は扉に手を掛け中に入って行くので僕らも慌てて中に入る。やっぱり時間をあけて入ると違う出口に出てしまいそうな雰囲気はあるからね。
店に入ると老婆が、ロッキングチェアでレースを編んでいた。
「あら、ルイス坊っちゃんお久しぶり、新しい勇者のお話入っていたわよ」
「今は、まだ楽しんでいる冒険譚があるから、また今度にするよ。今日はこのお嬢さんの本を、探しに来たから勝手に見るよ」
「わかったわ、どうぞごゆっくり」
ーー僕は先に歩くルイスの背中を見つめていた。ボス猫が、にゃーんっていきなり可愛い声で鳴き始めたのを見た時くらいの衝撃があった。
そしてルイスも子供の頃から敬語ってわけでもないらしい。ワンチャンこのおばあさんだけ普通にしゃべって他の人には5歳くらいから敬語もなくない感じもルイスにはあるが。
そしてルイス立ち止まり「ここです」と言った。
そこには見知った話もあったが、もちろん全然知らない話しもあった。それについて深く追及すると、夢が壊れる恐れもあったので確かめる事はしたくなかった。
異世界と僕の世界の話しどっちが原作とか知っても……いや、単に勇者が伝えたのだろう故郷の話として、そうだ、そうに違いない!
「これ! きっとウンディーネの好きな話は、これだと思う」
彼女の選んだ絵本は、『人魚姫』作者……アンデルセン! 僕の考え過ぎだったようだ。僕は胸を撫で下ろした。
話しは戻して、人魚末路はウンディーネ達の末路によく似ている。
彼女もその内容は知っているのか。人魚姫の挿し絵を愛おしいそうに撫で、そしてその本を抱きしめルイスに差し出した。
「では、これを」
彼女はルイスから紙幣を渡され、自分で購入する。そしておばあさんにバイバイしてお別れした。
そして僕らは裏道へと再び出た。
ご機嫌でルイスの後を歩くウンディーネ『人魚姫』彼女の初めて自分で買った本。
そして彼女は言った。
「この子は、きっと人魚で初めて海を出た。凄く凄い。でも、彼女は諦めた。凄く凄く残念」
「ウンディーネこういう事に勝ちたい」
そしてルイスを指差し「ルイス、あなたにも勝ちます!」言ってのける。
だから「そうですか、ならまずは第一歩に夜食のメニューをご自分で作ってくだい」と、ルイスに無茶振りをされていた。
しかしルイスも勿論、彼女の事がわかっているので、彼女の好みのフルーツなども買ってウンディーネにサンドイッチを作ってもらった。
もちろん前回の失敗を踏まえて、助手はルイス、僕のフルメンバーだったけど。凄く美味しく出来た。
そして夜食後はリビングのソファで、ゴロゴロしながら人魚姫の挿し絵を見て過ごす。
見かねたルイスが文字の表を、書いてあげていた。そして彼がウンディーネに文字の読みを教えている時に、僕も横で見ていた。
「へぇー、そんな風になっているんだ変わっているね」
2人は、不思議な顔をして僕を見た。
「ハヤト、文字を読めますよね?」
「うん、何故読めるんだよねー。僕の国の言葉に変換されているみたい」
「それって、本当にある事なんですね!」何故か、ルイスの方が食いつきが良い。
「主様、ずるいな….ウンディーネもそうだったらな……」
なんか2人の反応が予想と逆だ。
「ウンディーネ達はどんな文字使ってるの?」
「ウンディーネ知らない。覚える前に私の王子様を探しに出ちゃったから」
「ウンディーネ、僕は一言多い人間で 申し訳ないけど、ウンディーネの主様?は、頑張る凄くね、だから僕は君の王子様ではないと言いたい」
ごめんねって言いたいが、……けど、僕は何に対して謝るのだろう? 他に好き子居てごめんね? って言われて、全然大丈夫よ! と、言った記憶しかない……。
「主様は、主様でしょう? そして好きな人がいる」
「はい、そうです」
ウンディーネは伝わっていた。1人自惚れていたようだ。
「そうだよ。なんか変な事言ってごめんね」
そう言って僕は照れ隠しに頭をかいた。
☆
ベランダの月明かりの下、彼女は居た。人魚姫の本を握り締めて。
ーーウンディーネは賢さを置いてきた、だから今は愛しか無い、だから今は諦める事だって出来る! ウンディーネはいつか絶対勝つ!
そう彼女は、星の海に誓った。
続く
見ていただきありがとうございます。
また、どこかで。




