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スライム掃討作戦(そうとうさくせん)

 僕たちは朝食を済ませると、すぐさま馬車に飛び乗った。


 用意したのは、着替えと畑仕事の道具と秘密の道具のあれこれを乗せて。


 朝食の時の話では、「帰省本能のないスライムもう、橋の下には居ないはずです。たぶんですが」


 ルイスは、そう言って最近街で売り始めたコーヒーを僕のカップにミルクと砂糖の入る余地を残して注ぎ入れた。


 そしてここは昨日の現場、確かに、見た感じ居ない。


 問題の橋の上から見た風景でだが、川の土手は昨日の戦闘で背の高い稲にも似た草が、一部燃えている。


 そしてその周辺にはスライムの干からびたようなもの、まだ粘液を状態を保っているものがこの暑さのせいで、もう酷い匂いと虫を呼んでいる。


 川の中はと言うと、川の流れを妨げるように生えていた草が、昨日のウンディーネの濁流のせいで一部横たわっていたが、それ以外は流れてしまったのかいつもと変わらない様だ。


 しかし橋の幅は広く作られているので、その下をすべて覗き見る事は難しい。


 ――この橋の中びっしりスライムが居るのだったら、いやだが……日中はスライムを見る事はないので、その可能性もある。

 とってもいっぱいあるが、昨日全部、流れてくれていないだろうか?


 しかし昨日は、非常事態で川にながしてしまったが、それはそれで少し問題のあった行為だったようだ。


 この下流は湿地になっていて水はあまり深くないらしい。だから死ぬ可能性もあるが、しなない可能性もある。


 やはりここ橋付近ですべて仕留めるとのが望ましい。難しい作戦だ。


 しかし遣り甲斐のある仕事なのだ。……ジャジャーン! このスライム退治は、ギルドクエストを1つクリアーした事になるらしい。


 しかしあれがランク初級の強さだろうか? よくわからん。


 ―― では、作戦を開始しょう。――


 まず、だだっ広い草原の草を適当に刈り、戦闘場所を作った。


 1番はハヤトが川の土手、2番ウンディーネが中継地点、3番ルイスが戦闘場所で待機する。


「1番、ハヤト、魔法行きます!!」


 川の土手に居る僕は、二人に手を上げつつ合図する。


「「は――い」」


 ルイスと、ウンディーネも準備は出来たようだ。


 川の土手の風が僕のまわりを吹き抜け気持ちがいい。


 そして僕の手の僅か上には2つの風の魔法、決してスピードや威力は早くないのだが、スライムたちの集団をかき乱す分には十分!


 では……!


「行けぇぇ――――――!!」


 よし逃げろ!



 僕の後ろでは、ビィチブィブィチブィ粘着質ぽい音と、水の中を移動するバシャバシャシャと何にかが走る何かの音がする。


 そして全力で、ソレと距離をとる僕は、中間地点のウンディーネの所までもう少しの所まで逃げていた!


「3、4、え、えぇーいっぱい!?」


 ――いっぱいってなんだ――――――!? 


 ウンディーネは、凄く多くのスライムが追って来た場合、スライムをやむを得ないと判断しふたたび押し流す役目だ。


 そしてそれ以外の場合は、僕が辿り着く前にスライムの数を叫んだのち、一撃入れ、僕より先に逃げる手筈だった。


 しかし……ウンディーネは、数えるに手一杯だったようだ。 


 そして僕は、ひたすら走った目的地まで。


 ビューン、僕の胸の横を、矢が飛んで行った。思った以上に火をまとった矢は熱い。


 ビューン、ビューン、ビューン、次々飛んで行く。ルイスの射た矢だ。彼の本職は弓使いらしい。


「やはり後方で、全体の様子を見ながら判断を行える弓が、私に合うようです」


 そう言ったルイスだが、この弓を射る速度はバーサーカー系だよ!


 ルイスの元までもう少し、「主様、止まって!」ウンディーネの声がした。


 僕が止まった後も次々と、スライムがやって来るし、矢は飛んで行く。ウンディーネの水圧で作る。魔法のカッターまで飛ぶ。


 どんだけ居るの? スライム……。しかし気になるのが、さっきからスライムから出る甲高いピィ――ピィ――音。


 どこから出ているのかわからない高い音が、スライムからする。


 昨日は無かった音……。その音は何か? 理解に苦しむ。


 が!!、答え合わせは直ぐ出来た。川は、湖とは言えないまでも、大きな池を経由している。


 その池が立った……。バシャバシャシャと言う。音をたてて……。


 その時、僕の頬ギリギリを矢が通る。熱くないが死にそうではあった。


「惚けてないで、攻撃してください!、そしてあれを目標にします!」


 僕は場所を移動し、前方のデカいスライムを確認しながら、左手からやって来るスライムを攻撃する。


 デカいスライムは我らの願いむなしく結構早い。


 もう50メートル手前だ。


 40、30、20、10


「避けて早く危ない!!」


 僕が避けた時、ウンディーネの声が聞こえ、デカいスライムは僕らが魔法で掘った穴に落ちた!!


 すぐさまルイスが、炎をまとった矢をぶち込む! 刈り取った雑草に燃え広がりスライムを赤く染める。


 ギャァビォーーグビシャーー!! わけのわからない音を出すスライムに恐怖し、何度も火の魔法を撃つ。


 顔は炎のせいなのか、それとも恐怖、殺意、高揚に駆られた、ためなのか、熱く僕の中で何かが循環しているのがわかる。


 手を見ると依然見た魔王の腕の様に、僕の手はさまざまな色が幾何学模様を描いている。


 炎を使っていたのだから、赤だけでいいじゃないか……そんな事を考えて僕は自分の手を見ていた。


「ハヤト?」「主様(あるじさま)……」


 ルイスとウンディーネとが、いつの間にか僕の隣にいた。


「ははは、手がこんなになってしまいました」僕は笑って言った。


「大丈夫です。激しく魔法を使ったので、他の属性の魔力も活発になっただけです。一時的ですぐ戻ります」


 ルイスはそう言い、「少し座ってください」と、僕に座る様に促した。


 ウンディーネは僕の手を取り「きれい……」と言いながら、近くで見たり、遠くで見たりしていた。


 ルイスは、僕が座って居る間に下へ降りて、何かやっていた様だがあがって来ると、僕に緑の宝石を見せた。


「これは?」


「スライムの(ぬし)の魔石です。初級はなかなか出ないのですが、倒すと宝石を落とすものいるんですよ」


「これは換金出来るの?」


「いろいろな所で換金していますが、この城下街ではギルドが一番安定しています」


「えっ…………」僕は絶句した。仕事し過ぎ!


 僕はそこで、そろそろ立とうとした。しかし立てなかった。腰が抜けるってやつぽい。


「ウンディーネ、あまり効果が無いかもしれませんが、ハヤトに回復の魔法をかけてください。私はギルドクエストの依頼主に居るかどうか確認して来ます」


 ルイスはそう言って行ってしまった。


 ☆



 そしてルイスはある男性を連れて来た。


「これは凄いありさまですね!」


 僕と似た格好だったので、この辺りの農民の方だろう。彼はよく通る大きな声だったので、彼の話声も僕らの方までよく聞こえて来た。


「こんなにも……」「わぁ……」と驚きの声をあげる彼。


 最後にメイド姿のウンディーネのと、作業着で体操座りをするこの場に似つかわしくない僕らにたいしても――。


「これは、これは……」と、言って驚いていた。


「すみません、少し腰が抜けてしまったようで……」と、僕は正直に話す。


「いえいえ、勇者様ありがとうございます」と、彼は丁寧に頭を下げた。


「いえいえ、当然の事をしたまでです」と、勇者の僕は言った。


 ただの冒険者としての振る舞いをしていたので、正直に腰を抜かしてしまった事を話したのに。


 身バレしていたとは…………。


 今から実は日いずる国の出身の、普通の若者ですって言っても駄目だろうか?


 はぁ……。


「では、焼却の方までお願いします」


 彼は、そう言って帰って行った。


 また、腰が抜けそうだった……。


 僕たちはその後、ルイスに手渡されたスコップとバケツを持って、スライムを集めて回った。


 集め終わるとまた魔力回復飲料を片手に、大穴の中に火をつけてスライムを燃やした。


 そしてルイスが弓を放った、その場しのぎの高台の土をもとあった場所に返し埋め立てたのだった。



 続く

見ていただきありがとうございました!


またどこかで~。


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