暗がりを歩む僕ら
ルイスの「行きますよ」と言う声とともに、薄暗い中を3人で歩いて行く。光は、ルイスの持つランプのあかりだけ。
今日は月のない夜、星の瞬きさえない。街灯の明かりも、車のテールランプまでない夜。
そんな夜は各々の足音に集中しだす。それが草木のすれる音、川の流れる音に関心を向けるまでにはそんなに時間は掛からなかった。
その音たちの中で一番先頭を歩いているだろう。ルイスの靴の音が変わった。
彼は幾度も通ったあの川の上にかかる石橋を歩いている。
ルイスと僕、そして僕の服をしっかりと掴んだウンディーネの距離は皆、離れていないはず。
なら、僕の前にはただの道より少しは歩きやすい石橋はもうすぐそこだ。
だが、あるはずのない感触を僕の右足に感じた。
柔らく、ドロッとした感触、それはズボン越しからも湿り気と共にわかった。
――うん?!
と、そう感じた時、ソレは筋肉の収縮させる。足の吊った時のあの感触に近い正体不明の存在に僕は、戸惑い体を硬直させてしまった。
その間も僕の足を掴むそれは、ドロォットした粘着液がビショビショのグッチョグチョでおもちゃ屋で売っているスライムのようだった。
その2つの事は一瞬の内に起こり、次の瞬間には僕自身が川に引っ張り込まれていた。それらの事について僕の中で時間がスローモーション伸びたり、驚く出来事がワンポイントごとに飛んだように感じ、時が縮んだような感じがした。
落ちたのは川のはずなのに、手足の動きに抵抗を感じる。右足を掴まれ川に引っ張られる中を、必死に抵抗のある水にしがみつき落とされない様にするするのだがそれさえグチョグチョだ。
しかし目の前に手が現れる。捕まえなければいけない! 頭ではわかる。わかる。わかる!
だが……見えない何かから手を離せばすぐに、そのまま川のそこへと引きづり込まれるのは、考えるとか、知能でわかるのではなく、恐怖でわかった。
しかし別の誰かの手が、僕の手首を掴みひき上げる。
それはルイスだった。やっと生を実感した僕は、もちろん生の痛みも実感することになる。
彼は僕を投げ捨てると、すぐさまスライム向かう。
僕は……立てない、最悪。粘着質の液体も含めて川の水を多く飲んでいた、入って来ていた、鼻も目も痛いし、口の中からも含めてむろん顔中からリバースする事になる。それで死なないようよつんばになって……。
本当酷い事態だ。だから、むろんその場で、おいおいと泣く。
「主様…………ハヤト……泣かないで……大丈夫だから……」
そう言って僕の背中をさする、彼女。
「ウンディーネ! いい加減こっちを手伝ってください!」
ルイスの声が聞こえる。
「どうしよう……主様、今すぐ元気になってね?」
そう言って彼女は回復魔法を使ってくれているらしく少し症状が落ちついてきた。
「ウンディーネ、ルイスが退いたらあそこの川の水を決壊しない程度に押し流して欲しい。出来る?」
「主様が望むなら……」
「うん。お願い! ルイス!! 川から離れてー!ウンディーネが魔法を使う!」
彼は僕の叫びの途中に、川の近くからとびのく。
「お前たち、どっか行っちゃえー!!」
ウンディーネの声ともに、川が勢いを増し流れだす。曲がりくねった場所から押し出された水が河川敷に流れだしている。
ルイスがこちらに歩いて来る。
「あぁ……酷い目にあいましたねえ」
「その割には、随分と余裕そうでしたね……、とこで、ルイスの使って武器ってなんなんですか?」
「鋼の糸ですよ。これを強化してムチの様に、使えるし、魔法ものせる事が出来ます。持ち運びも便利ですしね」
「へぇー、凄いですね。発想しだいでいろいろ使えそうだし……」
「しかし糸は、糸なので、力の強い魔物にはすぐ切られますけど」
彼はそれも楽しいって感じで笑う。
そして違和感を感じる……。
「ウンディーネ?」
「ここです……」
そう言った彼女は草の中で倒れていた。さっきは元気そうだったのに?
「どうしたのウンディーネ?」
「もう、疲れて歩けない……」
「回復しようか?」そう言った僕の肩に、ルイスの手がのった。 僕がルイスを見つめると……。
「やはりハヤトに仕えるのは、私だけで十分なので、ウンディーネにはこのまま野良ウンディーネに戻って貰いましょう」
そう言い僕の手を掴み歩き出す。
「駄目!!」ウンディーネが元気に立ち上がった。
僕を引っ張りどんどん進むルイスと、僕の手を掴みついて来るウンディーネの歩みはしばらく続いた。
街が見え来る頃には、片手ウンディーネの手を持ち、もう一方の手で彼女の背中を押す僕らがいた。
「今日は、晩ご飯買って帰ろう?」
「はい……何食べたいですか?」
「スープぼくない奴で……後、川の水とスライムの粘液凄く飲んだので、浄化とかした方がいい?」
「じゃ、教会へ念の為行きましょうか」
僕たちはもういろいろ疲れていたので、そんな事を話しながら気をまぎらわせながら歩いた。
ウンディーネは……黙って僕らに背中を押されていた。
そして僕の気付かない内に、暗闇から月は出て、そんな僕らを照らしていたのだった。
続く
見ていただきありがとうございます!
また、どこで




