よくわからない回復魔法
畑仕事に本気を出すと決めた僕は、風の魔法で畳4枚分の土地耕すと、ルイスが用意してくれた網の荒い網戸の箱にシャベルで、畑を深く掘り起こした土を入れて! 入れて! 入れて! 入れる!
ウンディーネが網の穴を通らない土を、僕が掘り起こす事に集中している時間に、小さなスコップで小さく砕く。
ルイスは網に残った岩や石を、離れた所に捨て、それ以外の時間は僕と同じ様に土をスコップで、掘り起こし網に入れる
全ての畑の土を網に通し終えた時、僕は心身共にクタクタだった。
真っ黒になってしまった手袋を脱ぎ、椅子へとかけて魔法で水をだし手を洗う。心なしか水の出も悪い。
「ウンディーネ、手を洗いたいのだけど、水をお願い」
「はい!」
心よく引き受けてくれたウンディーネの魔法の水は、適量で洗いやすい。
しかしウンディーネは、暇さえあれば僕らに水のミストを吹きかけてくれた。彼女の魔力はどれほどあるのだらろうか……?
彼女の魔力の底はまだ、到底みる事が出来ないようだ。
僕がそんな事を考えている間に、ルイスはさっきの箱から、今度は透明のボトルに入った水を僕に手渡す。
中に緑の葉が入っていて、その葉には見覚えがあった。
水を一口含む。レモンに少し似たこの味わい。
やはりこれは……僕はルイスを見た。
彼はにっこり笑い、「ハヤトはご存知なのですね。今、城下街から各国へと売り出しております。『スリアロの葉』です。こちらは残念ながら魔力の回復は出来ませんが、夏に好まれるスーとする味わいが人気となっております」
「そんなに人気に……」
頑張っている人が報われる話しは、いつ聞いても嬉しい事だ。僕はそう思った。
「ハヤト様が、ご希望なら……ここの栽培に加えてみては? 名産品なので、今ならギルドから種を安価にて購入出来ます」
――安価で購入!? 僕の脳裏に雷が走った。また……、また、事業を広げちゃったの?! 少し目頭が熱くなったのはこの日差しのせいじゃないだろう……。
「いや……。畑の規模を拡大とか目指してないので……、ギルド発のふるさと事業の新製品なのかと思いまして……」
動揺の隠せない僕は言ってる事が、ぐだぐだだった。
そこで、ルイスの目が光った。
「なるほど……ギルドの事業にいっちょ噛みしたいと……」
ここで僕はふと思った。無いなと思いもしたが……、全然見当はずれな事もないのでは?
勇者の僕は一人で、何人分もの働きが出来る。その僕が冒険者の資金援助をする。
例えば……ぬいぬいの故郷に学校を建てるのはどうだろう?
「ルイス……それはこの農園の資金で冒険者援助を考えていると言う事でいいのですか?」
「ハヤト、この世界には緑の指をもつ人間も、夜中働く小人も居ます。機動力があるだけの勇者では叶わない未来もあるのですよ……」
「では、ギルドの事業への参入って……」
「ははは、失礼軽い冗談でした。お詫びと言ってはなんですが、この本をどうぞ」
「ありがとう……」
ルイスから渡された本の表紙をみる。『はじめての家庭栽培』と、書いてある。
ーーこの本も必要だが、せめて冒険者に関係ある本も一緒に貰いたかった。
僕は、ルイスをちらっと見る。ルイスは、もっと専門的な農作業の本を読んでいる様だ。
いったい僕らはどこに向かって走っているのか?
とても疑問だ。
しかしルイスの手前、僕は僕の本を黙って読み、結果地面をまだふかふかにするために、いろいろな物を土に混ぜこむ必要がある事を知る。
「ルイス、土に混ぜこむべき物が、ここに記されているけど、どこまで揃っている? 買うべきものが、あったら帰りに買って帰ろう」
「そこあるものか、それに準ずるものを混ぜ合わせて貰い買って参りました。今日はそれを土に混ぜてかえりましょうか」
「そうだね。それぐらいが潮時だね」
僕とルイスは、ウンディーネに少し下がって貰い、念のためタオルで口もとを覆い、肥料や土壌に良いと書かれていた物を土にまきもう一度畑全体を耕した。
暑い夏にタオルで酸欠、熱中症などにならない様に気をつけて、休憩時間など十分に取りつつゆっくり作業をしたが、最後にはに立っているのもやっとな状態になる。
……今こそ、体力回復を使う時――。
「回復を使ってみます!」
ルイスは一度左下を見て、それから僕の目を見て「お願いします」と、言った。
そして僕たち3人は、ある程度の僕の癒しの光を受ける。
「あれ……なんか効果がうすい?」
「では、ウンディーネ……私たちを回復してくださいませんか?」
「えっ!? ウンディーネ回復まで出来るのですか?」
「え?!」
――ウンディーネも戸惑っていた。大丈夫だろうか?
「大丈夫です。ハヤト思う優しい心で、彼を癒そう、そう思えば出来るはずです……」
そう言ったルイスは、こちらへやって来て僕をウンディーネの逆方向へと、向かせ「ウンディーネの回復ですが、貴方の体力が全回復するまで、彼女の魔法を決して止めないようにお願いします」
「はぁ……わかりました」
「ルイス、2人で何、話してるの? ウンディーネも聞きたい!」
「貴方が魔法を頑張れる様に応援するよう伝えただけですよ。では、ウンディーネ様お願いします」
「わかりました。いきます!」
彼女の片手を突き出し、もう一方の手を添える形で、回復を放出する形だ。
一般的に攻撃の際によく見る形だが、これだと長い間魔法を撃ちつつける事が出来る。アニメや漫画も考えて作ってあるなぁ……。
しかしウンディーネの回復も僕よりマシって程度で、全ての回復には程遠い……。何故? 彼女の魔力はまだ尽きる程ではないはず。
「主様、元気になった?」
「いや……まだ」
「えっえ? ウンディーネちょっと疲れてきたんだけど……もう、いいよね?」
「いや、後もう少しかな?」
「………………あっあぁ、大変! ウンディーネの魔力切れちゃった……。でも、ウンディーネ頑張ったよね?」
……ウンディーネは、凄く嘘くさい演技をした。
僕はルイスを見た。彼はくびをすくめて笑う。
「お疲れ様でした。ウンディーネ、後は私がいたしましょう」
「ウンディーネ、疲れちゃったからお願いルイス」
彼は僕の後ろに立つと、背後がポカポカ暖かくなるを感じた。そして回復量が驚くべきほどに違う。
今度は「失礼します」と、言ってウンディーネの背後に立つとまず、肩の少し上を撫でるように手を滑らせると身体の側面に手を降ろし、その背骨をの上で手を重ね両手を体の外側に別れさせ、ふたたび少し下の背骨へと繰り返した。
最後、自分の全身をパンパンと叩くように回復していた。
「これが皮膚をもとの状態へと戻す魔法……」
「いえ、今回は火傷の様な怪我ではないので、普通の回復になるよう心がけました。せっかく筋肉を鍛えるための行為も元にもどり蓄積が減ったら残念ですからね。だからと言って100%復元の聖女の回復でも、筋肉成長の度合いは誤差程度と聞きますから人体と言うのは不思議なものです」
「うーん、回復っていろいろ複雑ですね。癒し方も人それぞれだったし、1番の問題は魔力切れでしょうか?……魔力回復飲料が沢山飲めればいいのに……」
「飲んで下さい。代わりがいない貴方は、動けなくなっても動くという修行を、1日に何度も繰り返す必要がある。貴方には魔力がない間の軽作業は用意されていのです」
そう言うと箱から今度は、魔力回復飲料取り出し僕に手渡す、しかしウンディーネには「貴方は今日これだけですよ」って手渡した。
お母さんかな? って思いもしたが、それを飲んだウンディーネは目を輝かせ「美味しい! ウンディーネ魔力ないから……もっと飲みたい……」っと言ってルイスを困らせるが、お母さんルイスは「貴方は飲む前から魔力は十分だったはずですよ」と、取り合わない。
「でも、ウンディーネは……」
「回復の魔法は、精神力を使いますから奔放なこのウンディーネには難しいかったのでしょう。でも、彼女は有り余る魔力と魔法の筋はいいので、それで釣り合いが取れているのかもしれません。しかしハヤトはもっと複雑な要素で生きているので、回復魔法は十分使えるはずです。今は疲れと不慣れな仕事で、精神が摩耗してますが回復を使っていく内に、それらに折り合いをつけて下さい」
ルイスの言葉に、ウンディーネは少しご機嫌になった。
僕の複雑な要素って……それはウンディーネは単純って事を言いたいために、逆に僕を複雑と言ってない? 気のせいだろうか?
そんな話しをしていると、僕らの前にふたたび荷馬車が現れる。
そしてルイスがウンディーネに聞いた。「今度は貴方だけ乗って帰りますか? この後は歩いて帰るつもりなので、誰も貴方を背負いませんよ」
「あれ? ルイス、帰りは荷馬車で、帰らないのですか?」
「ここら辺は、やはり町から遠いので、魔物が出ます。ですから帰りは一緒に帰りましょう」
「は……それは、ありがとうございます」
「なら、ウンディーネも歩いて帰ります」
「無理しなくてもいいんだよ? ほら、ウンディーネのハンカチ持って行くからね」
「ごめんなさい……主様、それウンディーネのハンカチじゃないの……」
――うん。知ってた。見てたし。
「そしてウンディーネは、ルイスに負けないために一緒にいきます!」
「ウンディーネ、今度は本当におんぶ無しですよ」
ルイスが少しきつい感じで聞くが、彼女はうんうんとうなずいている。
というわけで、今度は馬車は荷物だけを乗せて帰って行く。
そして僕らは夕焼け空が、もうすぐ闇に染まりそうな野道を歩いて帰る事になった。
続く
見てくださりありがとうございます。
また、どこかで!




