深夜の僕ら
異世界の夏、日本の様に生暖かい蒸気の中を暮らす。
と、いうわけではないが、異世界もそれなりには暑い。
畑仕事を終え、いつの間にか眠りについてしまった僕は、夏の暑さと空腹、そしてもうひとつの理由によって目を覚ました。
もうひとつの理由、それは日焼けだ。
顔や手や首筋、作業服でも隠しきれなかった部分が、熱をもって、熱いし痛いのだ。
初歩の木の魔法による、体を健康的に導くという魔法は習った。
しかし日焼けは明らかに、火傷で治療の分野ぽいのだ。僕の今の段階で、それに対応が出来る魔法の技術を持っているのか? と、いうと疑問だ。
伊達に回復魔法のために、畑の開墾はしてないぞ? っと思うのだ。
ルイスに相談すべく彼の部屋へ出向くか、兵士の練習場へ行き夜勤の兵の中の回復魔法を使える兵士を探すか、どちらにするか少し考えたのち、ルイスの部屋へ行く事にした。
彼の部屋の前に行き、少しうろうろしたのち、意を決してルイスの部屋の扉をノックする。
トントントン
部屋から音がわずかにし、ルイスが出て来る。ルイスは、白いガウンを身につけ、いつものように髪はきちんとセットされていない。
「どうしましたか?」彼は、扉に体をさし込むようにして僕に応対した。
「夜中にすまないが……、日焼けがひどくって、寝られないんだ……」
――僕は対面を保ちそう言ったが、頭の中では絵本の挿絵のクマさん「エーン、日焼けが痛くて寝れないよう――!」って切り株の中に住む、狐のお医者に訴えている情景が浮かんでいた。
それくらい辛かったというわけではなく、それくらいルイスに甘えた所業ではないか? と思っていた。
しかし明日も畑作業があり、日焼けも放置する事は出来なかった。
「あぁ……そうですよね……。じゃ部屋へ入ってください。いい機会ですので、ぬいぬいに教わった回復魔法の精度の確認をさせてください」
彼は、眠っていたのだろう……。燭台の蝋燭に火をつけ、僕をベッドに座らせた。
彼の部屋ホテルのような雰囲気で、整えられ、実務的な作業の本と子供向けの古い勇者の本などが置かれているのが特徴的だ。
「人を詮索するのが、ご趣味ですか?」
彼は大丈夫ですか? 今、暇ですか? そう言う時と、同じトーンで言うので、最初意味がわからなかったが彼は、不快感を僕にさらっと告げた。
「人を理解するために必要だと、思ったから……不快だったらごめん」
「なるほど、一応納得出来る理由ですね……。では、治療をしましょうか。まず利き手と反対の手から……まず回復魔法で治せばいい? でしょう」
「なぜ、そこで疑問系なんですか? 治せばいいって、ものではない?」
「考え方の違いです。聖女の回復は復元です。もとあった状態へ戻す。だから酷い怪我の後に、回復しても刺青は元の状態に戻ります。しかしヒーラーの場合だと回復したのち刺青が消える術者の方が多い。何故だかわかります?」
「聖女が復元と念押しから始まりから、新生? うーんなら復元の対義語は何ですか?」
「破壊と改造です。改造は、改めて作り変えること、改造したと言ってしまうと、以前の手じゃないものを作ってしまう事になるので、少し置いておきましょう。でも、的外れでもない」
「では、考えをもとに戻して、単純に刺青の刺された皮膚一枚無くなった状態で、再構築されているから?」
「それが正解ですね」
「回復とは体の活性化を魔力によって助ける。だから体がよくなっても元の状態に戻るのでは無く、遺伝子の設計図通り作り直している。で、最近言われるのが度重なる再生によって、遺伝子の設計図から劣化した物を作りだしている場合もありはしないか?と、いう危険性を言われるようになりました。 だから魔法使いは、聖女様や神官、巫女同様に復元を目指すべきだって話になってきている。と、言うわけです」
「でも、どうやって?!」
「だから大豆の発芽なんです。感覚的にこの力を応用すれば!? って言い出すトンチンカンな魔法使いが、復元を成功させてしまう。魔法使いは意味不明、人理から外れているようで……、どしがたい。なので、ハヤトも復元での回復を目指し下さい」
――ざっくり!! 説明の割に結論がざっくりし過ぎだった。
「では、その設定を思い浮かべながら、回復を受けてください」
――ルイスも魔法使いという人々については理解しずらい様で、その設定とか言ってしまう。
「ところで、ルイスは回復の復元は出来るのですか?」
「出来ますよ……、私が子供の頃なんとしても、父は覚えさせたかったらしく、私に一週間かけて、催眠術師と復元の出来る魔法使いを、付けて特訓したらしいです。そして記憶にありませんが、出来る様になり催眠が解かれると……、父と母は涙ながらに私に謝り、……そして私の荒らされた机の上のノートには『偉大な大魔法使いになって,世界を征服する るいす!!』ってなんだこりゃ?! な走り書きがありました……」
――黒歴史過ぎる!?
「参考になったよ。ありがとうルイス」
「どういたしまして。ハヤト、貴方なら絶対復元式の回復魔法が使えると、私は確信してます」
「ありがとう気持ちは、複雑だけど頑張るよ」
「では、改めていきます。まず、ベッドの隣にあるサイドテーブルの上の、皿の中の大豆を1つ、手に取ってください」
――わぁ、凄く準備されている……。
彼は、僕の手を握る。
「待ってください! 魔法を使う時、補助にもう一人いるのでは?」
彼は僕の手を握るため、下を向いている。その端正な顔の中で、長いまつ毛に覆われた目だけを動かし、僕を見る。
「貴方は戦場にも、補助の人物を、連れて行く気ですか? ここに貴方の為に命を張る人物がいるのだから、絶対魔法の暴走は起こさない、心構えで魔法を使ってください」
そう言うとルイスは、視線をふたたび僕の手に戻し集中する。ルイスから流れるのは、むせかえる若草の緑の色、匂い、流れる水すべてが清浄であり淀みのないイメージ。
そして僕はフィーナのくれた、あの白百合を思い出した。
「治療完了しました。」彼は、静かに手を放す。「では、お願いします」
ルイスから受け取ったイメージを、そのまま大豆へと通す。だが、急成長し幹をどんどん伸ばすとくるくるとなって成長は止まった。葉も花もない。
「ハヤトの魔力は回復と言うより、魔力の暴力って感じですね」
――そこまで、言う事はないと思う。
「ちょっと今のイメージに、ついて教えてください」
彼は言った。僕は感じとった魔力について説明する。
むせかえる若草の緑の色、匂い、流れる水すべてが清浄であり淀みのないイメージ。そして彼女がくれた白百合。それを上手くつなぎとめるために、生命の賛歌という歌にもに似た気持ちでまとめあげた事を話した。
「木の魔法に関係なく、イメージが多彩だと上手くいきませんよ? うーんどうも私の魔法が、ハヤトのイメージを邪魔しているみたいですね。ぬいぬいから習ったやり方でやってみてください」
僕はぬいぬいの授業を、思い出しおこなってみる。
「うん、いい出来ですよ!」ルイスの声があがった。ふと見ると、大豆から根が出て発芽していた。 とりあえず僕は成功した。もう自分で、火傷は治せるだろうか?
「では、このベットの下に、12鉢分に区切られ苗ポットの箱があります。もう豆は私が蒔きましたので、まずはこの12個の芽を、発芽させてくださいませんか? わたくし朝一番に、魔法学校へ行きまして成果を見て貰うつもりです。その間に協力してくださる農家から、あの畑分の量、これと同じ物が届きますので、それをこなしていただいた後は……」
ルイスは、自分のテーブルの引き出しの中を探る。何が出て来るのか……不安しかない。
「こちら今日、私が使用した、日焼け止めと同じものなのですが……良かったら使ってください。これを使えば大丈夫です。もう酷く日焼けになる事ないでしょう」
「大丈夫ジャナイデス。全て計算されていて引くと言うか……」
僕は、棒読みで言っていた。それにしてもルイス行為は、すべて計算ずくだったようだ。発芽させ、回復魔法の前段階の習得には成功だけど、やり方が、彼の趣味の全振りされていた。
「ハヤト……出来る事はしましょう。それで死ぬことはないです。そしてもし最初にハヤトが、日焼けの危険に気づいたのなら、最初に日焼け止めを差し上げていました。しかし出過ぎた奉仕は、相手を曇らせます。わかっていただけますか?」
「わかりました。頑張ります」
悔しいが、ルイスの言う通りだ。僕はルイスに甘えていたのだ。しかし……。
「ルイス、プランターの前に、僕の火傷を先に治してしまっていいですか? 後、お腹がすいてしまって……」
「あっ! そうですね。まだハヤトの魔法は、不安定なので私が治療いたします。それから晩御飯は鍋で温めるだけの物が用意はしてあります」
そこでホッホー、ホッホー、ホッホーリビングから微かに鳩時計の3時を知らせる音が聞こえた。
ルイスは、余計に慌てた様で、「今日はとりあえず寝てください」と、言い出す。
「ルイス、落ち着いて大丈夫です」
僕は彼の肩に、手を置き言った。
「はぁ…………、それもそうですね……まずは火傷から治します。」
ルイスに、火傷を治して貰った僕は、そのままルイスに寝て貰った。さすがに朝早く起きているルイスを、まだ働かせるのはしのびなかったし……。
僕は本当にルイスが、寝てるところを起こしてしまったらしい。そして仕事に全神経を傾けている彼も睡眠によって、緊張の糸が少し切れてしまったのか悪い事をしてしまった……。
続く
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また、どこかで




