解き放たれた勇者のパーティー
魔法学校の寮の入り口に立つ。
その円柱の建設物は、本校舎のクラシックなイメージとは少しかけ離れていた。
こちらはモダンな雰囲気で、個性と個性のぶつかり合いをしながら2つの建物は共存している。
寮に入ってすぐに広いラウンジには、コンビニより規模の大きな売店もあり、規模の大きなホテルを思わせた。
その広いラウンジで、授業を終えた生徒たちの視線が、こちらに集まった。
考えればわかりそうな事だったが、僕らは先程までフランツ教頭を先頭に学校中を歩き回り、人種の違う僕やぬいぬいもいる。
そしてなにかと目立ちそうなルイスと、王族の血筋のオリエラとくれば仮ではあるが、勇者パーティーと気づかれても仕方なかった……。
「はい、ここがホイルトツェリオ魔法学校の寮になります」
御両親とも高貴な血筋のオリエラは、生徒たちの視線も気にならない様で、教頭に託された仕事を遂行し始めた。
しかしすぐに、誰かをみつけたようで、少し大きな声で彼の名前呼びつつ、彼のもとへと向かう。
「ダニエルさん、勇者様達の寮の見学許可は出ていますか?」
ダニエルさんと呼ばれた彼とオリエラは、一緒にこっちへやって来る。
ぬいぬいも顔見知りの様で「お久しぶりです」と頭を下げた。そして僕たちも、各々が彼に挨拶をする。
長老と言っていい校長より、少し若いくらい。彼の右目の上には、肉食獣の鉤爪によるものだろうか? 決して浅くはない傷が刻まれている。
「皆さんが来ると言う連絡はしっかりと受けています。。男子寮の見学は廊下までに、なっているがオリエラが案内するのかい?」
彼は少し曲がった腰に、手を置きながら穏やかにオリエラに話しかける。
「そうですけど、大丈夫ですよ? 必要ならなら誰かに頼む事も出来るし、師匠もいますしね」
「そうかい……」
「「ありがとうございます、では、少しだけお邪魔します」」
お礼をいい、お別れと思ったがダニエルさんは、僕らを呼び止め、袋を差し出した。
「これを持って行きなさい。防災時用の水なのだけれど、もう少しで保管期限が切れるので、生徒に配った残りだけど……どうぞ」
と、僕達に水を一本ずつくれた。 お礼をいいみんなでいただく、暑い時期に、この気配りはうれしい。
僕達は、ラウンジの空いている席にすわって、水分を取り少し休憩していると、すぐに女性徒が集まってくる。
「異世界から来たのは、本当ですか?」
そう、ある女生徒は僕に声をかけた。
「うん、そうだよ」
「じゃ――魔王を倒しに、行くのですか?」
ここでぬいぬいがこれ以上の質問で、僕からおかしな挙動がでてしまわない様に話しに割って入ろうとするが、ルイスが彼の肩に軽く手をおき彼をふたたび座らせた。
「初めましてお嬢様方、ルイス アルトと申します」
「もしかして勇者様の物語の、あのアルト家ですか?」
「はい、昔話によく登場するアルト家です」
きっと彼の一族は、この話を何度も繰り返しているのだろう……、何度も同じ事を聞かれる事に対して、慣れてしまっている様だ。
「勇者様はまだこちら来て、日が浅いので大勢のみな様に話しかけられますと、やはり会話におぼつかない部分がありますので、交友を築く為にもお茶などいかがですか?」
ここで女生徒達は「キャー」と黄色い声を発し、男性生徒からの腹の底からの「ヲォオー」と言う声を聞いた。
「なんか昔のレンを思い出すな……」ぬいぬいが、ぼそっと言ったのを僕は、聞き逃さなかった。
そしてうちの執事は、食堂からお湯とコーヒーカップを借りて、彼のお気に入りのお茶を振る舞い、代わりに生徒たちからお菓子を頂戴した。
これは多分、普通にやったらめちゃめちゃ怒られるやつだ。しかしルイスは場を整えて、お茶会は盛況の内に終わった。
片付けで、僕らもラウンジ内を客としてではなく、スタッフとして把握出来る様になった頃、一緒にお茶を飲んだ女性徒達とさよならした。
適当な疲労感につつまれながら、オリエラによる案内はふたたび開始された。洗濯スペースとシャワーなどなの水回りのスペースを案内中に、彼女は少しつぶやく。
「アルト家が、ルイスが勇者の物語について話しているのをこの目で見ると、やっぱり本当に冒険への旅立ちが、近いって事を実感するよ……。幼い時は本当にただのむかし話として私は聞いていたから、いろいろ気持ち的に複雑ではあるんですけどね」
「オリエラ、行きたくなかったら、俺が代わりに行ってやる」
ぬいぬいは今まで隠していた気持ちを、打ち明けるようにそう言った。
「ぬいぬいには、あるるさんもアルトルア君もいる。それは出来ないよ……」
「でも、もし……もし行きたくなかったら、正直に俺に言えなんとかしてやる」
ぬいぬいの弟子を思う気持ちは切実な様で、言葉の端々にそれを感じる。
「ぬいぬい、オリエラ、王の血筋だから行かなければいけない気持ちはわかる。でも、僕はぬいぬいやルイスにも話したけど僕は魔王は倒しに行く気はないから。君たちを前にして言うべきではないと思うけど、ギルドを頼ってもいいんだよ」
僕は2人はそう言ったが、内緒では不安だった。
魔界に行く事ではなく、ルイスの気持ち。彼は先祖の行いを悔いている。僕はそんな彼の気持ちを、ぺちゃんこに踏みつけていないだろうか?と。
「今の、ハヤトさんなら同じ人間に、騙されて死ぬのが落ちなので、せめて私は連れて行ってください」
と、ルイスは言った。
僕の言葉は、彼の心を傷つけたかもしれない。
しかしルイスも同じ言葉を使い、僕の心に傷を負わせつつも、一緒に行ってくれるって言ってくれた事に、僕は安堵した。
「そしてオリエラ、君はまだ焦る必要はありませんよ。もしあなたがたの手助けが、必要でしたら縄につないでも、連れて行きますから心配しないでください。ですが……、今はまだその必要を感じておりません。――安心してください」
ルイスはそう優しく言い。正しくはあるが、言い方慈悲に満ち。結果的に駄目な助言をオリエラにする。
……イケメン無罪。
「師匠!? 魔物より、倒さなければいけない人物をみつけてしまったかも?」
「そうかもな」
ぬいぬいは、少し流しぎみだが……オリエラは、結構本気の様だ。王家の血筋は、イケメンに耐性があり、その力はルイスと互角のようだ。
さすが異世界の、かくさんとすけさんの家柄である。
「そんな話より、見学の続きをいたしましょう」
そのルイスの言葉に、僕ら複雑な思いで、ふたたび寮見学に心を切り替える
「後は生徒の居住エリアは、階段を上がると隣あった2つの入り口になってる。男性が右スペース、女性が左スペースで入り口からだいたい人数によって変わるけど、丸い建物の半分の敷地で別れるって考えて。間の壁は、非常時などには、男女からの干渉が、あれば取り払われる仕組みになってます。ホームスペースは2階の本校舎への連絡通路と1階の休日間昼用出入口から学校のランチルームと2階と3階のハウスホームと解放されている自習ルームには出入り出来る仕組み――。で、説明終わり! 念のため2階へ行ってみる? 」
「………………」
沈黙が流れ、「じゃ、終わりだけどどうするの?」と、オリエラが質問する。
「街へ、買いものだオラー!」
「買い物! やったー!」
こうやって何かから、やっとな逃れたような、開放感の中、僕達は街へ行く。
――ぬいぬい、オラー! って……。
しかし僕らは、学校の購買でぶらぶらと買い物をする事になるのだった。
続く
見ていただきありがとうございます!
また、どこかで。




