2階の見学② 僕に至る勇者パーティー
この話は、短編の『魔王の約束と勇者よしの』の流れを受けて、書いています。良かったら読んでください。
魔法学校二階、『サラダマンダー』『シルフ』と大きな紙に手書きで書かれた、個性にあふれた看板のある、大きな窓の教室の前を通る。
そして食堂と思われる部屋は、外側から見た校舎の規模ではありえない、とても大きな空間が広がっていた。
長机がいくつも列をなし、それに合わせた椅子の数が置かれている。その横に歓談用のソファーのセットまで。
「どうやって、これだけの広さが……」
僕の呟きの答えたのは、フランツ教頭だった。
「魔法建築で、空間がゆがめられているのです。魔法の成せる技ですね」
と、自慢げに答える。
「今月はここでは、2階にはハウスホームのある『サラマンダー』と、3階にホームのある『ウンディーネ』が食事をとります。残りの『シルフ』と『ノーム』は反対の左翼側のランチルームで食事をとっていますな。しかし行事がありますと、給食室に近いこちらで、全ての生徒と教師が食事をとるので、もっと広くなることも可能です。給食室、配膳室、そして大食堂をつなぐ廊下から、寮へ行く事が出来ます」
教頭の話の後に、ぬいぬいの話がつづく。
「毎月、この大食堂と向こうの食堂のホームチームは順番に入れ替わる。組みは合わせが変われば、ランチルームの雰囲気も変わる。その雰囲気によっては、教師も各食堂を移動することになる。だが、だいたいの揉め事はホームのリーダーとホームの5年生が、乗り出す事によって解決する。その後、そのハウス担当教師達によってアドバイスが与えられ生徒は少し成長する、その繰り返しだ。そうすれば毎年度、指導力のある生徒が一人は、生まれるという恐ろしい仕組みになっている」
と、ぬいぬいが締めくくると。
「あぁ、レン君はともかく悪たれだった君が、こんな立派になってるのを見るとその仕組みも、私の教師人生も無駄じゃなかったと思えるよ」
と、フランツ教頭は誇らしげに、後ろに手を組み語たり、元来た道を歩きたした。
ぬいぬいは、口をへの字にして手の平を上に広げるポーズをした。
彼は口には出さなかったが、気持ちはなんとなくわかった。
「言ってろ」彼は、たぶんそう言いたかったんだろう。
それを見たルイスもクスッと笑う。本当に二人は、仲が良いのか、悪いのか……。気の置けない間柄て、やっなんだろうとは思う。
教頭の後をついて三階への階段を登ると、ランチルームの上には、図書館があり広い図書館には、さまざまな書籍が置かれている。
受け付けカウンターの上には、校長室にもあった肖像画が飾られている。
絹の様に美しい栗色の髪の凛としたの王女の横に、寄り添う様に横に立つ、精悍な顔つきであるが、優しさを口元にたたえた王。
僕がその肖像画に目を留めていると……。
「あなたが来られるまでは、最後の勇者パーティーの一員だった。フェイリス王とサラ王妃ですな。王族の血筋で、のちに王となられたフェイリス王と、聖女と言われたサラ王妃がこの学校の発案、そして創立まで手掛けたと言われています」
あのよしのさんとパーティー組んだ王と王妃……。
凄い人格者なのは間違いないだろうが、二人はたぶん無念の思いの中で、この魔法学校を作ったのだろう。
横を見るとルイスも同じ様に、肖像画を見ていた。
「最後の勇者の旅には、ルイスのご先祖様も同行されたの?」
「いえ、同行はしてません。もちろん私のように王からの依頼は、彼にも来たそうです」
「なぜ?」
人は、赴く死に場所を選べるのだから、普通ならそうですか……と答えるべきだが、現在の当事者としては聞かずにはおれなかった。
「何故?…」
少しだが、ルイスに怒りの色が見えた。だが、すぐにいつもの穏やかな表情に戻る。
「実は彼らは、今の魔王と戦う為に集めらた、パーティーではなかったのです。あまり知られている事ではありませんが……。その時代の預言者は、人間界へ多くの魔物の進軍がある事を預言していました。その為、ホイルトツェリオ城では新しい勇者を召喚すべく、その準備が進みました。しかし敵の行動は思ったより早く魔界近くの境界線に魔物の進軍が迫っていると知らせが入った夜、空から大きなまばゆい流星は落ち、それを同じくして勇者は召喚されました」
「りゅうせい……? そんな目印があれば僕が勇者かどうかなんてもうわかっているじゃないんですか?」
「いえ、勇者と流星は無関係です」
僕は、ルイスの言葉を理解出来ず、彼の顔を見つめた。彼はそんな僕の顔を楽しむ様に微かに笑い、話を始めた。
「その時の北部の権力者は、己の死を覚悟し魔物の軍を撃ち取るべく星のふるような夜、彼らは山道を進んだそうです。そこで彼らを待っていたのは、紅蓮の炎に燃える小さな村でした。そこには生きている者は誰もおらず、人間も魔物も折り重なる様に燃えていたそうです」
「魔物も!?」
「はい」
「北部の権力者はそれを各国に知らせ、勇者の出発は急務の様に思われました。しかしそれ以降、魔物の軍は境界線を越えることはなく、緊張状態の平和が続く中、やはり不安は的中し魔物たちは境界線を超える事が増え始めました。しかしそれは軍ではな有象無象の群れと時折、とても邪悪な魔物が魔界から現れ人間界へと入り込みました。そこで預言者は新しい魔王の誕生を予言し、勇者の出発の時を迎えたそうです」
「でも、ルイスの先祖は行かなかった。」
「はい。彼は凄腕の剣士でしでしたが、その時の勇者パーティーには足りないものがありました……」
「魔法使いの存在?」
「そうです。私でもそのジョブ構成なら出発を止めるでしょう。しかし物事はそう簡単ではなく。ここのまま魔界からの流失をほっておけば、最悪な魔物の群れを人間界に根付かせる事にもなる。そして彼は浅はかに考えた。自分が行かねば出発しないだろうと、その目論見は失敗終わり。勇者は出発し、帰らぬ人となってしまった..……。そして彼の名誉と我が家の名は、大きく傷つく事になってしまいました。だから私は……」
僕はそこで、思わずルイスの顔をみた。
しかし僕の不躾な視線に、彼はいつもの調子でにっこり笑った。
「つまらない話を聞かせてしまいました。では、先を急ぎましょうか」
話を聞いていただろう、ぬいぬいもフランツ教頭も彼の話を黙って聞き、彼に言葉を受け止めたが、彼に声をかける者は居なかった。
僕も彼になんて言葉をかけていいのかわからず、彼の心を思い浮かべ泣くことも出来ない。僕は彼が初めて見せた見えない心の傷の大きさをただ推し量ろうする事しか出来なかった……。
続く
見ていただきありがとうございます。
また、どこかで!




